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『SDGs白書2022』全記事リード文公開

2022年8月26日発行の『SDGs白書2022 人新世の脅威に立ち向かう!』では、35人の専門家による寄稿を収録。脱炭素、生物多様性、ジェンダー主流化まで世界が求めるSDGsアクションを一冊にまとめている。今回は内容紹介として第1部と第2部の各記事のタイトルとリード文を紹介する。

第1部 世界の潮流

1-1 総括

GSDR 2023に向けた世界の潮流と日本におけるSDGs推進の鍵

蟹江 憲史●慶応義塾大学大学院 教授

2030年までのSDGs達成は大きな危機に瀕しており、持続可能な社会へ移行するために「変革」をいかに起こしていくかが肝要である。日本も、社会の課題とSDGsの関係を再認識し次の段階を目指すときだ。

1-2 HLPF 2022重点項目より

ジェンダー平等における日本の実情と課題

大崎 麻子●特定非営利活動法人Gender Action Platform 理事

目標5で後れを取る日本は、世界標準の取り組みを理解し国際標準の枠組みを活用することで、ジェンダーギャップ解消を目指す時。SDGsでは、ジェンダー視点の主流化が重要になる。

生物多様性をめぐる変革への課題

道家 哲平●国際自然保護連合(IUCN)日本委員会 事務局長

目標14と15の更新ともいうべきポスト2020枠組みが難航する中、ネイチャーベースド・ソリューションやTNFDなど、生物多様性を切り口とする、変革に向けたイニシアティブが多数立ち上がる。

第2部 変革のアクション

2-1 国際機関・中央省庁の動向

世界の新たな脅威と国連機関によるSDGsへの取り組み

近藤 哲生●国連開発計画(UNDP)駐日代表

紛争や不平等に加えてコロナ禍やデジタル化の脅威が人々に不安を与えている。人新世における人間の安全保障には、人々の相互依存や地球と人間社会の観点から「連帯」を重視した取り組みが必要とされる。

中央省庁によるSDGsへの取り組み

河原 一貴●外務省 国際協力局 地球規模課題総括課 課長

COVID-19の拡大等がSDGsに深刻な影響を与えている中、団結してより具体的な取り組みを加速させねばならない。ここでは、アクションプラン2022などに盛り込まれた今後の目標や進捗状況を解説する。

地方創生SDGsの推進について

北廣 雅之●内閣府地方創生推進事務局 参事官

地方においても人口減少は大きな懸念である。この問題を克服し、活力を維持していくため、SDGs未来都市や官民連携などの施策を通じ、地方創生SDGsの普及展開を図り、持続可能なまちづくりにつなげる。

2-2 地域動向

先進事例に学ぶ自治体SDGsの実践と課題

高木 超●慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任助教

SDGsに地域全体で取り組む必要があるとの認識が全国の自治体に浸透してきた。試行錯誤にある自治体も多い中、多様な視点を取り入れ、パートナーシップのもとSDGsの取り組みを推進する事例を紹介する。

【地域アクション①】広域自治体による社会課題解決のためのSDGsアクション

窪田 智也、上坂 崇人、中野 真太郎、知念 久美子●ジャパンSDGsアクション推進協議会事務局

貧困対策をはじめとする社会課題解決、全国初のエシカル条例の制定、行政と民間をつなぐ参加型の地域エコシステム作り、市町村と連携した環境価値創出など広域自治体ならではの取り組みを紹介する。

【地域アクション②】「地域再生大賞」の取り組みから見えてくる地域SDGsの現在

池原 沙都実●株式会社日本経済研究所 地域・産業本部 地域振興部

地方新聞46紙と共同通信社による「地域再生大賞」の受賞プロジェクト600事例をSDGsの観点から分析すると、目標8への取り組みが多く、目標17は上昇傾向にあった。観光振興との関係も明らかに。

自治体による自発的なSDGs進捗レビュー「VLR」の動向

片岡 八束●公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES) 都市タスクフォースプログラムディレクター

地方自治体が自発的にSDGsの進捗をレビューし発表する「VLR」が世界で広がっている。SDGsのより統合的な取り組みにつながるとともに、地域のステークホルダーの参加を高めるきっかけにもなっている。

2-3 産業動向

SDGs達成に向けた日本企業の取り組み

有馬 利男●一般社団法人グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ) 代表理事
小野田 真二●GCNJ SDGsタスクフォースメンバー、公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES) リサーチ・マネージャー

企業のSDGsの取り組みは広がっているが、求められている大変革には程遠い。今後は強靭な体質と体制の下、「企業の使命感」に経営者と従業員が心から共鳴しSDGsに取り組む経営の実践が必要だ。

【企業アクション①】航空輸送における2050年CO2排出実質ゼロへの取り組み

乾 元英●全日本空輸株式会社(ANA) 経営戦略室 エアライン事業部 GXチーム
吉田 秀彦●日本航空株式会社(JAL) 経営企画本部 経営戦略部

航空輸送におけるCO2排出実質ゼロの実現には、持続可能な航空燃料(SAF)が不可欠。日本国内でのSAFの生産・安定供給体制の構築は、日本の産業全体の競争力や経済安全保障に直結する喫緊の課題である。

【企業アクション②】損保業界におけるSDGsの取り組み

田中 絢子●損害保険ジャパン株式会社 サステナビリティ推進部 リーダー

SOMPOグループの源流は「火災から人々を守る」という使命感から誕生した日本初の火災保険会社。環境が大きく変化した今、災害に強い地域づくりへの貢献は損害保険会社の重要な使命の一つである。

【企業アクション③】SMBCグループの気候変動問題に対する取り組み

竹田 達哉●三井住友フィナンシャルグループ サステナビリティ企画部 部長

SMBCグループは、サステナビリティに向けた取り組みを強化している。本稿では特に、金融機関への期待が高まる気候変動問題の分野における自社での取り組みや、お客さまへの取り組みを紹介する。

【企業アクション④】小売業界におけるSDGsの取り組み

野村 亜矢香●株式会社セブン&アイ・ホールディングス 経営推進本部 サステナビリティ推進部/Ph.D.

食料システムの中間に位置し、食糧の安心・安全な供給という社会的役割を担う小売事業者。ステークホルダーとの連携から各種開示ルール作りまで、より効果的な協働や業界の取り組みを進める。

民間資金の流れを拡大するSDGsインパクト基準と日本への期待

渋澤 健●シブサワ・アンド・カンパニー株式会社 代表取締役CEO

投資家や企業を支援するための基準やツールの整備が進んだこの1年。一方で企業を取り巻く環境は厳しい。日本企業は世界のニーズやSDGsの原点に立ち戻り、足元の取り組みを見直すことが重要になる。

2-4 市民、その他のセクター動向

市民社会からみたSDGsの現状と提案

井川 定一●開発人道支援コンサルタント

「SDGsスポットライトレポート2021」では市民社会の立場からSDGsの課題と提言が発表された。一方で、各NGO・NPOの活動は依然としてコロナ禍の制約を受けており、国際協力などの面で厳しい状況にある。

2-4 市民、その他のセクター動向

若者(ユース)のSDGsへの取り組み

清水 瞳、大貫 萌子、和田 恵●SDGs-SWY

若者の価値観は、SDGsの目的である「世界を変革」するために不可欠である。2030年に向けた変革を加速するためにも、社会(企業や自治体など)には、若者が活躍できる仕組みづくりが求められるだろう。

子どもたちと未来をつくる──SDGs for Schoolの実践

上田 壮一●一般社団法人シンク・ジ・アース 理事、多摩美術大学 情報デザイン学科 客員教授

知識を得るだけではサステナビリティ・トランジションを実践できる人材は育たない。本質を教育現場に届け、未来に向けた学びの場を広げる「SDGs for School」の活動から、成果と課題を振り返る。

セクターを超えた「SDGsアクション」への取り組み

湊 治子●ジャパンSDGsアクション推進協議会、神奈川県政策局いのち・未来戦略本部室SDGs推進担当課長

「世界が求めるSDGsと日本発のSDGs~変革に向けたSDGsアクション」をテーマにジャパンSDGsアクションフォーラムを開催。グローバルとローカルの視点で産官学のステークホルダーが議論。

2-5 課題別動向と話題

IPCC第6次報告書から読み解く脱炭素と気候変動の現状

江守 正多●東京大学 未来ビジョン研究センター 教授、国立環境研究所 地球システム領域 上級主席研究員

2021年公開の「IPCC第6次評価報告書」では、「人間活動による温暖化に疑う余地がない」と初めて断言された。気候変動対策に一刻の猶予も許されない状況の中、脱炭素の実現には、社会の大変革が求められる。

脱炭素社会に向けたエネルギー対策の動向と課題

小西 雅子●公益財団法人世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン) 専門ディレクター(環境・エネルギー)、昭和女子大学 グローバルビジネス学部 特命教授

温室効果ガスの約85%がエネルギー起源CO2の日本では、エネルギー対策がメインになるといっても過言ではない。国際公約の2050年カーボンニュートラル、2030年温室効果ガス46%に向けた課題とは何か。

JEIエシカル基準の役割と概要

中原 秀樹●一般社団法人日本エシカル推進協議会(JEI)会長、公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)シニアフェロー

JEIエシカル基準とは何か。その特徴、作られた背景と目的、SDGsとの関連や活用法も含めて解説する。またエシカル購入における課題、エシカル・コンシューマーとしての社会的責任などについても述べる。

プラスチックごみ問題と資源循環対策の動向

塚原 沙智子 ●慶応義塾大学 環境情報学部 准教授

2022年4月1日にプラスチック資源循環法が施行された。新たな規制のもと、製品の設計から回収方法、リサイクルまで、新たな循環のかたちを創出する取り組みが始まっている。現状と課題を含めて紹介する。

ビジネスと人権の動向と課題

横田 浩一●株式会社横田アソシエイツ 代表取締役、慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授

ESG投資のS(社会)において注目を集める人権問題。日本政府は行動計画を発表し、上場企業の人権デューデリジェンスの実施も進んだが、サプライチェーン全体での取り組みはこれからである。

東京2020オリンピック・パラリンピック大会に関する持続可能性評価

佐々木 剛二●慶應義塾大学SFC研究所 上席所員

環境・社会・経済の面から多様なレガシーの実現をうたった東京2020大会。SDGsに基づきその持続可能性を評価する学生主体の調査から、現在の達成状況と今後の課題を明らかにする。

3-1 指標研究

GISを活用した指標の見える化および日本版SDGs Todayの展開

鈴木 秀人●ESRIジャパン株式会社 新事業開発統括 部長
土田 雅代●ESRIジャパン株式会社 新事業開発グループ 課長

SDGsの取り組みでは、その国や地域ごとの問題意識や背景が重要となる。地理的情報を可視化するGISを活用することで、地域に密接な情報や課題を分かりやすく示し、人々のSDGsへの理解を促進できる。

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インプレスホールディングスの研究組織であるインプレス・サステナブルラボでは「D for Good!」や「インターネット白書ARCHIVES」の共同運営のほか、年鑑書籍『SDGs白書』と『インターネット白書』の企画編集を行っています。ど