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使わないパソコンを寄贈して高校生のITスキルアップを支援できる「Pass the Baton」

「Pass the Baton(パス・ザ・バトン)」は、企業から使わなくなったパソコンを寄贈してもらい、高校生のプログラミング学習で利用するプロジェクトだ。企業は気軽に廃棄できないパソコンを処分でき、高校生は無料でプログラミング学習を受けられるという社会貢献にもなっている。

高校生に無料で機会を提供

NPO法人CLACK(クラック)が中心となって取り組むプロジェクト「Pass the Baton」では、企業で使わなくなったパソコンを無料で回収し、高校生のプログラミング教育のために利用している。

このプログラミング学習は、特に経済的な理由でパソコンを買うことができない高校生を対象としており、授業料やパソコンは無料で、交通費も往復800円まで支給される。また、将来を考えるためのキャリア教育もカリキュラムに含まれている。困難な環境に置かれた高校生に、ITスキルを身に付け活躍できる機会を与える社会貢献活動になっている。

寄贈元の企業にもメリット

パソコンはデジタル分野の仕事道具として欠かせないが、製品進化のスピードが速くて陳腐化しやすい。原価消却を終えると、それなりの頻度で買い替えが必要となる。指定再資源化製品であるパソコンの処分方法は、リサイクル法(資源の有効な利用の促進に関する法律)で定められており、必要な手続きを踏む必要がある。

企業としては、使わなくなったパソコンをPass the Batonに寄贈することで、無料回収してもらえて社会貢献にもなる。さらに、寄贈元企業としてCLACKのウェブサイトやSNS、プレスリリースで紹介されるのでイメージ向上にもつながる。これまで、グッドパッチ、レノボ・ジャパン、メルカリなどが寄贈を行っている。

寄贈する際に企業側ですることは、パソコンの台数、時期、パソコンを寄贈したことをどのように紹介するかを伝えるだけだ。

実際の回収作業はCLACKとともにPass the Batonに参加しているパシフィックネットが無料で行う(自ら送付する場合は送料がかかる)。特にパソコンを梱包しておく必要はなく、必要であればデータ消去も行うので、手間はほとんどかからない。

条件は「まだ使える」こと

「使わなくなったパソコン」とは言うものの、プログラミング学習に使う前提なので「使えないパソコン」でよいわけではない。CLACKでは、寄贈として受け付けるパソコンに必要なスペックを次のように示している(2022年7月21日時点)。

  • Mac

    • MacBook(2016年モデル以降)

    • MacBook Air(2017年モデル以降)

    • MacBook Pro(2016年モデル以降)

  • Windows

    • CPU:Core i3(第6世代)以上

    • メモリ:8GB以上

    • ストレージ:SSD搭載

    • その他:カメラ搭載、無線内蔵

Windowsの「Core i3 第6世代以上」とはインテル製チップのことだが、これは2015~2016年以降に発売された機種が該当する。この条件は今後変わる可能性はあるが、だいたい過去5~6年以内に購入したものであれば寄贈できるだろう。

高校生のプログラミング学習用途としてはノートパソコンが対象だが、デスクトップパソコンも回収しており、CLACK自身や連携しているNPOで若者支援活動に活用するという。

減価償却を終えて、業務で使うには性能不足となったパソコンの処分方法はいろいろ考えられるが、Pass the Batonも選択肢の一つとしてぜひ検討してみてほしい。


文:仲里 淳
インプレス・サステナブルラボ 研究員。フリーランスのライター/編集者として『インターネット白書』『SDGs白書』にも参加。

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