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太陽と空気から再生可能な飲料水を生み出す――米国先住民ナバホ族を支援するマイクロソフトとSOURCEの取り組み

今回は、マイクロソフトとSOURCE Global(以下、SORCE)が共同イニシアチブとして、米国先住民ナバホ族に、清潔で安全な飲料水を提供するための取り組みについて紹介する。

米国先住民ナバホ族、住民の30%が安全な飲料水にアクセスできない現状

水資源に恵まれた日本では飲料として、あるいは手洗いのための清潔な水を得ることの大変さを意識せずに日々の生活を送っている。しかし、地球上には、水は貴重な資源でありそれが容易に手に入らない国や地域がある。2022年のWHOらの報告書※によれば、世界人口の4分の1が安全な飲料水にアクセスできない現状がある。

ナバホ・ネーションは、アリゾナ、ユタ、ニューメキシコの3州にまたがり位置する
(出所:SOURCE Global)

米国先住民最大の居留地であるナバホ・ネーション(Navajo Nation)も、そうした地域の一つだ。SOURCEのプレスリリースによれば、推定でナバホ・ネーションの住民の30%となる約7万人が清潔で安全な飲料水を手に入れることができない状況だという。一部の住人たちは、ボトル入り飲料水を購入するために長距離を移動せねばならず、燃料費や時間を換算すると年間2000ドルもの経済的な負担となっている。また、長年の大干ばつがこの問題をさらに悪化させ、長期化させているそうだ。

こうした状況を踏まえて、SOURCEのハイドロパネルを使った飲料水システムがナバホ族の100家庭に提供されることとなった。マイクロソフトは資金提供を行っている。

日光と空気からミネラル飲料水を作るハイドロパネル技術

SOURCEは「すべての人、すべての場所で完璧な水を」という目標を掲げる非営利団体で、アリゾナ州スコッツデールに本社を置く。創設者でCEOのCody Friesen氏は、2023年に、米誌ニューズウィークの「地球を救う13人のテックイノベーター」に選出された一人だ。

ハイドロパネルの仕組みは、太陽光発電により水蒸気から結露を作り、それをオゾン処理して清潔な飲料水を抽出するというもの。SOURCE公式サイトの説明によれば、特許取得済みの独自技術を組み合わせることで実現しており、電気や水道などのインフラなしにほぼどこでも清潔で安全な飲料水を生成できることが特徴となっている。

ハイドロパネルの機能を示すイメージアニメーション

SOURCE Hydropanels(ハイドロパネル)は、1パネル当たり1日平均4~10リットルの水を生成する。
(出所:SOURCE Global)

また、ハイドロパネルには無線通信機能が搭載されており、SOURCEのネットワーク・オペレーション・センターで、水質監視や遠隔操作によるサポートも行う。専用アプリでは、貯水量やフィルターの交換時期、異常時の通知受信などが可能である。

ナバホ族以外にも、オーストラリアの先住民地域やアフリカの学校、ドバイの砂漠、ケンタッキー州の貧困層が住むコミュニティなど、40か国以上ですでにハイドロパネルを使った水供給のシステムが導入されている。一方で、リゾートホテルなどでのビジネス使用や、個人ベースでの利用が可能な商業用製品としても提供されている。

ウオーターポジティブ達成に向けたマイクロソフトの取り組み

マイクロソフトによる今回の資金支援は、水へのアクセスなどの気候関連の課題に対処するために、2022年に設立した「気候イノベーション基金」によるものだ。

同社では、2030 年までにカーボンネガティブを達成し、2050年までに“1975年の創業以来に排出した全炭素量に相当する量を環境から取り除く”ことを目標としている。その目標に向けて、現在、4つのカテゴリー「カーボン」「廃棄物」「水」「生態系」に分けて、サステナビリティに関するコミットメントを公表している。

この「水」のコミットメントでは、2030年までに同社の事業で消費する量を上回るきれいな水を創出する「ウオーターポジティブ」の達成を掲げている。データセンターの冷却用水の浪費削減、マイクロソフトキャンパスにおける水の使用量削減と再生水の利用促進の他、敷地内にきれいな水を作り出す施設設置の計画も上げている。

マイクロソフトがアリゾナ州で2021年に立ち上げた「West US 3 Azureリージョン」は、「持続可能なデータセンター」と称され、太陽光発電による再生可能エネルギーの使用や、水の代わりに外気を使って冷却する「adiabatic cooling(断熱冷却)」の採用を行っている。(出所:マイクロソフト)

マイクロソフトとSOURCEの取り組みは、SDGsの目標6「安全な水とトイレを世界中に」に貢献するものだ。日本に住む私たちにとっては、普段は意識することのない「安心で清潔な水」へのアクセスが、地球全体の資源としては当たり前ではないのだと考えさせられる事例である。

文:遠竹智寿子
フリーランスライター/インプレス・サステナブルラボ 研究員

トップ画像:SOURCE Global
編集:タテグミ

※WHO、世界銀行、ユニセフ、の共同報告書
世界の飲料水の現状(State of the world’s drinking water)
プレスリリース
SOURCE Global,  March 22, 2024

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