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変化こそ生き抜く源泉:『地中海世界』フェルナン・ブローデル編 - つなぎ ヨーロッパ学入門 言語

 今回は、ブローデルはおやすみ、ヨーロッパ学入門からヨーロッパの言語についてだ。前回、山本さんから紹介のあった歴史学者のスコットさんの『反穀物の人類史』を含めて考察したい。

はじまりは自由に生きる野蛮人

 そもそも人は野蛮人だった。地球上の動植物を求めて、自由に移動した。スコットは、その採集狩猟民族は定住して作物を作らないか?と言われても、それを選択するわけがないと言う。理由は、採集狩猟生活の方が、生きるために束縛される時間が半分で、しかも栄養価が高いからだと。そのため、これまでなぜ定住生活に移行したかは、大きな疑問だった。

定住生活は細菌・病気との戦い

 過去の気候・環境変化で木の実・動物が極端に減ったことが定住生活を促したのではないかと言われている。また、採集狩猟生活の暮らしのレベルを下げずに定住生活をすることのできる、水のある肥えた土地は定住地の候補となった。

 一方、定住のためには、作物と動物の家畜化が必要だった。実際、一部の作物はすでに狩猟生活の際に種子が集められ、育てやすい種子が選択されていた。定住生活が始まると、人も家畜も作物も細菌・病気との戦いが始まった。

 繁栄していた古代都市が急に消滅する事象は、気候変動や、伝染病が原因であることが多いと言う。その病気が風土病になり、落ち着く場合は、集団は生き残る。

宗教と言語の導入と国家の始まり

 定住生活が始まり、組織化されていく。組織の境界に塀を作り、外の野蛮人が入りにくくした。それだけではなく、定住生活の苦難に耐えられずに野蛮人に戻る人を減らそうとした。スコット曰く、組織化されている状態は、安定的ではなくむしろ不安定だと。

 組織化を保持するための仕組みとして、宗教と言語が組織者から考案された。組織の共通善・目的である宗教、管理、特に税の記録を残し、コミュニケーションのための言語。自由に集まって暮らすためには、言語の種類はなんでもよかった。しかし、規模が大きくなり統治するために標準化された。これらは、人が人を管理するための道具なのだ。

我々は飼い慣らされていないか?

 作物や動物が飼い慣らされ家畜化していき、定住生活を支えている。そこで暮らす私達は、朝から晩までその仕組みを成り立たすために時間を拘束される。組織から保護も受けるが、同時に束縛もされる。この生活が普通だと思っていた。しかし、これは我々が時間をかけ作り出したものなのだ。

 以前荒野で生きていた時に働いた野生の感が消え去り、飼い慣らされているのは私たちではないか?現在の状況は、私たちに次の生き方への変化を促す。この新しい病気を風土病として暮らしていくための知恵が求められている。

変化こそ生き抜く源泉

 幸い、私たちの体には変化を促す仕組みが仕組まれている。つまり、DNAが時折変化するのだ。

 その仕組みを持つ人間も、自ら変化することが必要だし、可能なのだ。私達には、未来を想像し、新しいことを創り出す創造性がある。創造性がこれまでと異なることを思いつくことだとしたら、イノベーションはそれを実装することだ。

 結局、安定と変化の二つがあってこれまで生き抜いてきた。これからも、体に宿る野生の感で、変化を楽しみ生き抜いていくと信じたい。

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