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資本主義と前産業

 18世紀以降に明確に理解される産業が、形をなす前の状態を前産業と呼ぶ。15世紀から18世紀の間のブールジャンによる産業活動の区分を示す。

1. コンストレーション状の無数の零細家内工業

通常一人の親方、2-3人の職人、徒弟、家族で行われる場合もある。

2. 分散配置型マニュファクチャー(manufactures dissemices)

18世紀のル・マン周辺の平織毛織物製造、フィレンツェの羊毛組合など、市内と周辺の50km圏内の領域

3. 集中型工場(fabrique agglomeree)

主に水力を使った織物工場、ビール醸造場、皮なめし工場など

4. 機械化工場(水力・蒸気動力等の動力保有)

製紙場、製材所、ふいごが動力化されている小刀工場など

 しかしながら、これらは発展段階ではなく、各フェーズの産業は同時に存在する。

救いの神として産業

 農業は期間産業だ。農作業の暇な時期に、内職が始まる。その内職が農業よりも実入りが良くなると、新たな産業として定着してくる。つまり、「毛織物やその他の布地の生産を続けた方がより利益になる」ようになるのである。

 もっとも、裕福な農業地域には、副業として始まる農業以外の産業は必要なく、これらの産業はそれが必要なところに出現するわけだ。現在のポーランドの一部のシュレージェン地方の山間部の土地は貧しく、それを補うために麻加工が始まった。イギリスの北部の人たちが家で織った羊脂がついたままの低品質な織物などが市場で売られた。このように農業と産業は持ちつ持たれつの関係で育っていった。

 13世紀に羊毛といえば、ネーデルランドとイタリアだった。14世紀にはイタリア、その後北のスイス、ドイツにその主な産地が移る。そして、イギリス製の上質の毛織物が登場し、この後木綿の時代となる。染料の技術によって進んでいたインド更紗が登場し、爆発的な流行を起こすことになる。

わかったこと

 資本主義とは、起業家としての商人が分業化し、そこに資産が蓄積されたことに発する。貨幣が姿を現し、金融資本が蓄積されることによって、不平等ゲームが始まった。分業によって、資産が蓄積される組織と依然として貧しい人たちが生まれたわけだ。と、同時に、市民に余裕ができ、欲しいものを自ら作らなくても金銭で得ることができる時代になった。そのため、必要なものよりも、多くのものを所有することが常態化し、継続的な購買要求に応えるために流行が生まれた。

 今、資本主義が再考される時代は、私たちの欲を考え直す機会だ。私たちは何を求めるのか?本質的な生きる目的とは何か?を見つめる時代がきている。


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