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夜更けの思索宮

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時には哲学を、古代ギリシャを、あるいは皮肉やのイタリアの彼氏のような、ちょっといつもの場所をはなれて遊ぶ
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#幸福

きっと『政治学』を読まないとわからない『アリストテレスの世界観』

 前回はアリストテレスの「二コマコス倫理学」第9巻 愛(フィリア)について続き を読みました。最後の第10巻は幸福論の結論です。幸福に焦点を当て、人間にとって最高の善とは何かというアリストテレスの哲学的探究を深く掘り下げます。幸福に関するアリストテレスの言説は、徳、魂、人間生活における理性的活動の役割に関する彼の見解とニュアンスが深く絡み合っており、『ニコマコス倫理学』第10巻は、幸福の本質とその達成方法に関するアリストテレスの考えを集約しています。 最高善としての幸福 ア

構造化することが大好きな楽天家の倫理学:幸福な人は生涯を通じて幸福

 2023年最初の読書会は、アリストテレスの「二コマコス倫理学」だ。アリストテレスは、「事柄の本性が許す程度に厳密性を求める」という基本理念のもと、善、幸福、人生の目的といった難題に臨む。今回読むのは、第1巻人生の目的である。以下では、アリストテレスの主張を「A章の数字ーシリアルNo.」で示すことで、話の流れを追うことにしよう。 主張1:目的は階層構造で、最上位の目的は善であるA1-1:善 → あらゆる人の目的  A1-2:目的は技術(行為、技術、知識など)・能力によって達