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鎌倉で家、建てます 〜その3〜鎌倉に必要な住宅性能について

注文住宅建設について、前回の更新から随分日が経ってしまったが、結局僕らの家は順調に完成し、11月中旬に引っ越すことができた。今、こちらで過ごす初めての年末年始を迎えている。


元々同じ鎌倉の海側に住んでいたのが、(津波を懸念して)いくぶん山側の土地を買って家を建てた。鎌倉の土地と言うのは、少し歩くと全然雰囲気が違ってしまうもので、やはり今の土地も前とはだいぶ違った雰囲気だ。以前にも書いたが、海沿いはヨーロッパで言うと地中海の雰囲気で、山側はドイツっぽくしっとりしたイメージだ。僕も明るい方が好みではあるので、たまに海沿いを車で通ったりするとその明るさが懐かしくなるが、今の土地もいわゆる谷筋でない明るい土地ではある。海沿いではそもそも坪単価も高くなるので僕らには予算的にも難しかったわけだが、津波の危険だけでなく塩害や飛砂という問題もある。確かに今はそこら中が砂でジャじゃりしていることもないし、車の汚れも随分少なくなった。海近くの潮風は洗濯物がべとつくように感じることもあったが、冬場ということもあってか今の土地はカラッとしている。意外に身体的にはこちらの方が健康的なのかもしれない。


そのほか住んでみて分かったのは、神奈川県の様な温暖な場所であれば住宅性能はそこそこで十分快適だ、ということだ。


僕らは家の性能にはあまりこだわらず建ててもらったので、断熱気密性能は一般的といったところだ。断熱としては樹脂アルミの複合サッシに断熱ペアガラス、家は外張り断熱500mm、気密は注意はされているが、引き違いの掃き出し窓もあるので、全体として高断熱とは言えないし気密性もまあまあだ。


ただ断熱気密性というのは、ある程度以上あれば、あとはいかに省エネ・省コストに暮らせるか、という問題に過ぎない(もちろん省エネルギーは大事、とはいえ、まあ工場なんかに比べると民家の消費エネルギーなんて知れているわけだが)。例えば断熱気密性が非常に高い家の場合、真冬の夜に暖房を切っても朝の室温が2度しか下がっていない、なんていう話も聞く。一方で僕らの家では、外が寒いとき暖房を切って実験してみたら、室温は1時間に1度ずつくらい普通に下がっていってしまった(それをみた時はずいぶんがっかりした)。だから冬場は時間を調整しながら暖房を使い続ける必要がある。とは言え、エアコン1台とオイルヒーター1台程度を適宜使って、2階建(正確には吹き抜けがあるので3階建て)の家の中ををほぼ均一な20-23度程度にすることができることが分かった。実は快適性には温度そのものよりも温度差が重要で、家の中が均一な温度であれば快適に暮らせるのだ。もちろん結露もなければコールドドラフトを感じることもない。暖房を使い続けるためある程度の光熱費にはなるだろうが、それでもエアコン5台とかを使って全ての居室を温めていたような一昔前の住宅と比べれば、はるかに安い光熱費で済むはずで、こうして住んでみて、鎌倉あたりでは普通の断熱気密性が確保できていれば十分快適なのだということがよくわかった。もし追加するなら内外断熱の併用、トリプルペアガラスの窓(窓はとにかく面積が大きいので、サッシを樹脂サッシや木製サッシにするよりもはるかに効果は高いと思う)を考えたいところだが、そういうのはそれこそドイツとか、日本なら信州や東北以北の、もっと寒い地域で考えるようなことかな、と実感した。


あと暖房効率ということで言えば、南側に窓をできるだけ大きくとって、少しでも冬場の日射の取得を増やすことは重要だと思う。僕らの家では2階リビングで、冬を念頭に南側に大きな窓を2つ切っており、1階の寝室も南側からしっかり日が入る立地なので、晴れた日の日中は家中が暖かい。おそらく夏場の日射取得も相当なものだとは思うが(本来はひさしなどで南中高度の高い夏の日射を遮るのが理想なのだが、見栄えの問題で我が家ではつけなかった)、冷房は外気温30度に対して室温を5-6度も下げれば足りるが、暖房は外気温2度に対して室温を20度以上暖かくしないといけないので、光熱費は一般に夏場より冬場の方が高くなる。夏の日差しより冬場の日射取得の最適化を優先して窓を計画したほうが良いと思う。


最後に報告だが、僕らの家の建設にあたっては、地盤改良に伴う埋蔵物調査が大きな問題になった。僕らの頼んだ建築会社さんが柔軟に地盤改良法を変えてくださって、埋蔵物調査を回避できたのは非常にありがたく幸運だった。周りの家では埋蔵物調査を待っていてまだ建築が始まっていない土地があり、そうこうしているうちに住宅ローン控除のルールが改変されてしまいそうだ。うちはジオクロス工法というやり方で地盤改良し、住んで1ヶ月半程度の間には何度か地震も起きているはずだけれど、今のところ不同沈下は起きていない。

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