鎌倉で家、建てます

今回鎌倉に家を建てることになった。

 おそらく今後の人生でもう一度家を建てるチャンスはないと思うが、この機会にいろいろなことを勉強し経験したので、せっかくなのでその経緯をここに書き残しておこうと思う。

1、はじめに

 僕が最初「家を買う」、ということを考え始めたのは2020年3月のことだった。よく言われる議論だが、トータルコストで賃貸と持ち家とどちらが得か、ということを考えて、家を買う方が得だから、と考えて決めたわけではない。むしろ今後日本の人口がどんどん減っていくと言われる中で、鎌倉といえど20−30年に渡って土地の価値が保たれるかどうかは微妙ではないかと思っている(とはいえ鎌倉の中でも場所は慎重に選んだので、さすがにいわゆる負動産になる可能性は低いと思うが)。1番の理由は、鎌倉に2年間住んでみて、ずっとここに住み続けたいと思ったからだ。僕は研究者なので、将来どこか地方で良いポジションが出てくる可能性はあり、それを考えると家を買ってしまうことで人生の選択肢が狭まるという側面は否定できず、実際に妻からは何度も「本当に大丈夫なの?」と訊かれたが、でもまあ逆に家を買ってしまえば地方への異動とかは積極的に考えたくなくなるだろう。僕としてはこうやって梯子を外してしまうことで「よし、これでずっと鎌倉にいられるぞ」という様な安心感もあるというのが正直なところだ。

2、新築建売、中古戸建、土地+注文住宅

 さて、我々は最初深く考えず新築建売を探すところから家探しを始めた。それが最も安易な選択肢に思われたからだ。

 なお鎌倉に住む、ということの性質上、マンションは考えなかった。鎌倉の地価は高いとは言っても、少なくとも住居専用の地域では最も高い場所で100万/坪くらいまで、多くは50-70万/坪くらいだ。都内だとこれが数倍に跳ね上がるので、我々のレベルでは検討できたとして鉛筆みたいな戸建て住宅かマンションか、という選択肢になるだろうが、鎌倉なら同じ値段で40−50坪以上の土地に30−35坪以上の戸建てが建てられるケースが殆どになる。修繕積立金や管理費、駐車場代まで払って、狭いマンションをわざわざ選ぶ理由はない。

 さてまず僕たちはSuumoや地元の不動産会社のホームページを見て連絡し、新築戸建をいくつか回ってみた。しかし多くの物件が気に入らなかった。それもそのはず、今ならわかるが新築建売の建物の殆どがいわゆる「ローコスト住宅」というものに相当し、具体的には坪単価30万円程度で建物が作られている。必然的にいろいろな部材の価格は低めに抑えられており、グレードの高いものは使われていない。また問題は建物のグレードにとどまらず、(不動産業者も言っていたが)間取りが土地の向きや採光などを一切考慮しない一律のデザインになっている場合が多いことで、結果として「何でこの向きにこの窓を」という様な作りになったりする。一方建売でも稀にデザイナーズ物件というのがある。その場合は建築家がデザインするので間取りがある程度考えられており、また大抵採用している壁材や床材その他のグレードも高い。ちなみに私も一度素晴らしい作りの建売を見たことがあるが、訊いてみたらその物件は坪単価100万円前後で建物が作られていたそうだ。結局立地に難ありでその物件は諦めてしまったが、偶然良い物件に当たれば新築建売もありかなあと実は今でも思っている。

 僕たちは新築住宅は早々に諦め、次に中古住宅を探し始めた。ただまあ当たり前のことだが、中古住宅というのは、多くの場合もともと誰かの注文住宅なわけで、その施主の好みが強く反映されている場合が多い。結果として新築建売以上に「何でこの向きにこの窓を」的な問題に遭遇することが多かった。また住宅の寿命を考えると、いま築15年以上の中古住宅をリフォームして住んでも、結局20年後には全面建て替え(さもなければか更地にして売るか)、ということを考えなければならなくなり、コストが余計にかかってしまう。築浅物件もあるにはあるが、当然ながらそういう物件は価格が高く、その値段払うなら土地を買って注文住宅を建てた方が、と考えたくなる。

 というか、実際にその様に考えて、僕たちは土地+注文住宅と言う選択に行き着いた。

3、土地・建築業者選び

 さて土地選びに当たっての僕たちの最低条件は、いま住んでいる賃貸住宅と同じ大きさの建物が建てられること、通勤時間が大幅に伸びないこと(今でも鎌倉から都内に出るため片道1時間45分くらいかかる)で、最終的に僕が決めたのは、東に隣地通路のある南向きの土地(実質的に東南角地)と、古典的な意味でいわゆる「良い」土地になった。しかしここは人それぞれ重要視するポイントも違うだろうし、極端な話方角とか日当たりとか好みはあるだろう。また以前の記事にも書いたが、鎌倉は場所によって雰囲気が大分違うので、どこを選ぶかも難しい問題になる。ただどんな場合でも土地探しに際し重要なポイントとして挙げたいのが、

建築業者を決めてから土地を一緒に探す方が良い

ということだ。これはよく言われていることだが、僕も実際その方が良いと思った。なかなか素人が土地だけ見ても分かることには限界があって、良いなあと思う土地でも建築士の人と話すと色々と問題点が出てきたり、望みの間取りが取れなかったり、予算オーバーになったり、ということがあるからだ(僕も実際そういう経験をして、とても気に入っていた土地を諦めた)。

 そうは言ってもどこの建築業社にするかを最初から完璧に絞り込むのは中々難しいし、複数の業者で土地探しを全部並行してやってもらうのは大変だ。そこで僕のおすすめの手順としては、

① まず最初に、websiteや雑誌などを見て、好みの建築会社を3つくらいに絞り込む。このときにもちろん鉄骨とか、ZEHとか、自然素材とか、色々と好みや条件があると思うので、それに沿って選ぶのだが、ハウスメーカー1社、工務店1社、建築事務所1社、とかにしておくと「なるほど、それぞれコストとか哲学とか、こんなに違うのか」というのがよく分かって選択しやすいかもしれない。ちなみに大まかなコストとして、30坪前半程度の家を建てる場合のトータルコスト(外構込み)の目安をざっくり言うと、

 ハウスメーカー(三井ホーム、住友林業など) 4000万円+α

 パワービルダー(ダイワハウスなど) 3500万円+α

 工務店 3000万円+α

 ローコスト ( 実際に見積もってないので不明だが2000-2500万円か)

くらいだと思って良い。もちろん注文住宅なのでいくらでもお金はかけられるわけだが。ちなみに住宅ローンの申込金額なんかにも関わってくるので、最初高めの見積もりが出され、その後お値引きや不要な費用が徐々に差し引かれていくパターンもある様だが、結局施主としてはオプションを色々つけたくなってくるので、差し引き0くらいになるのではないだろうか。

② 次に自力で土地を大まかに探していく。Suumoのサイトとか僕は毎日見ていた。そこで良いなあという土地があった時点で、各社にプラン・見積もりを作ってもらう(大体2週間かかり、この辺りは全て無料)。この時に実際面談して説明を受けると良い。そうすると、それぞれの建築業者との相性(実はここが一番重要と言われている、長い付き合いになるので)とか、どこが信頼できるか、などが分かってくる。実際僕たちは、はじめ第一候補にしていた工務店の対応が杜撰に思えた一方、この時点で第3候補だった建築事務所の建築士さんがとても信頼できると感じたので、結局そこに依頼することに決めた。

③ 最初の土地ですんなり決まれば良いのだが、やっぱりもう少し探してみたいと思うこともあるだろうし、先述の様に建築士から色々と問題点を指摘されたり、予算の範囲で建てられなかったり(例えば前面道路の幅が狭い高低差のある土地、とかだとざっと200万円くらい余計に工事費用がかかる)、というケースも多いだろう。僕の場合もそうだった。だが既にどこの建築業者で建てるか、ということはこの段階で決まっているわけで、ここからはその建築会社と一緒に土地を探していけば良い(もちろんここでも費用は一切かからない)。

ということで、「建築業者を決めてから土地を一緒に探す」というところにたどり着く。

4、住宅ローン

土地と建築業者が決まると、住宅ローンの審査に進める。ここでは僕同様、土地と建物両方を住宅ローンで賄う場合を考える。住宅ローンの審査には①個人の書類(住民票や確定申告書の控え、納税証明書など)、②土地の書類(契約書や求積図など)、③建物の書類(見積書や図面。この段階では建物の請負契約書は必須ではない)が必要になる。逆に言うと、少なくとも土地を契約してからでないと住宅ローンを申し込むことはできない。

 さてこれを書いている2020年時点ではネット住宅ローンがしのぎを削っており、大手銀行と比べても0.15-0.2%程度安い金利で住宅ローンが組める。保証料+事務手数料はどこも似た様な額になるので(どちらに重きが置かれているかは会社により異なる)、基本は金利が安いところを選ぶのが重要で、後は保険の内容とかの違いで、その辺りは色々な情報が氾濫しているのでここに書く必要はないだろう。ただ一点だけ、土地と建物を両方ローンで支払おうとした場合、どうしても土地の融資を先に受ける必要が出てくる。これには2種類の方法がある。土地+建物で最終的なローンを組むのは同じだが、背景の考え方が違い、結果として支払額が変わってくるので注意が必要だ。

①全融資額を分割して受け取る場合。土地の支払いの時に土地の金額を融資、建物の支払いの時に建物の金額を融資してもらう(分割融資)。元金据置支払いを選択すれば、土地のローンについては金利分だけを建物完成まで毎月払えばよい。

②別金融機関で土地のローンをまず組み、建物の完成までは土地のローンの金利分だけ支払い(つなぎ融資)、建物の完成時の一括融資で全てを一括精算する。

実は①の場合も②の場合も、支払いの流れとしては全く同じだ。だが、①の場合と②の場合とでは、建物の完成までに支払うべき金利が異なる。一般に①の場合は金利は一定であり、言ってみれば住宅ローンの優遇金利が土地の金利支払いにも適応される。一方②の場合は、土地のみのローン金利は住宅ローンの優遇金利よりも高く設定されていることが多い。

さて重要なことに、①の分割融資は実はメガバンクでしか対応していない(細かく言うと、メガバンクによっても何回まで支払いを分割できるかの回数は異なる)。多くのネット銀行やフラット35では一括融資しか行っていないのだ。特にネット銀行の場合、ローン金利はメガバンクより安いのだが、このつなぎ融資の期間に払う金利が結構高く、結果支払いがかさんでしまう場合も多いので、どちらが得かはよく計算する必要がある(また、何らかの理由で工期が半年とか伸びてしまうと悪夢である)。

もう一点、②のつなぎ融資を利用する場合、ローン審査としてはまず最終的な総支払い額で銀行の審査を受け、それが承認されてから初めて土地のみのローンを別金融機関で審査してもらう流れになる。そしてこれは純粋に不動産業者側の都合なのだが、大抵の場合は土地の契約日から土地の引き渡し日(つまり土地代金を支払う日)まで1ヶ月くらいの猶予しかもらえないことが多い。なので、この1ヶ月の間に住宅ローン審査とつなぎ融資の審査の両方を終了しなければならない。

 結果として、僕の場合はネット銀行+つなぎ融資を申し込むのは期日の都合上難く、メガバンクでローンを組むことにした。


とりあえず現時点ではここまで。今月中に住宅ローン契約を結び、年末に土地の決済、並行して家の間取りなんかを決めていき、来年初春に着工、来年夏に家の引き渡し予定になる。この後のアジェンダは家の仕様が中心になると思われ、また気づいたことがまとまったら改めて別記事を書いてみたい。

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