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アメ村のヴィレヴァンが潰れていた

6月にアメ村のヴィレヴァンが閉店したらしい。
先日ツイッターで知った。

アメ村といえばヴィレヴァン!というイメージがあり、絶対に潰れない店だと思っていたのでショックだった。

アメ村のヴィレヴァンは学生時代に死ぬほど行った。まぁ、恥ずかしい言い方だけど、
青春時代の象徴的な場所だった気がする。

友達がバイトしてたり、クソつまらないアングラ漫画を買ってしまって、どうにか返品できないか頭を悩ませたり、
iPodで、少し悪っぽいヒップホップを聴きながら、凶悪犯罪や大麻の本を立ち読みしてみたり、
店内で良くかかっている、
体育見学してそうな元気のない声で歌う女性の曲や、センスのいい婆さんのカバンの中みたいな店の匂い
(ロフトとかにあるヴィレヴァンはあの匂いがしない気がする)
そのどれもが過剰で胸焼けするほど個性的で、今のボクの生活に1ミリも役に立っていない素敵な場所だった。
そのアメ村にある秘密基地のような
ヴィレヴァンは
近所のフリーターのお兄さんや、遊びすぎて留年した先輩、バイトすぐ辞めるオモロい友達みたいな、ある時期にだけ儚くも何故か輝いて見えた人々をボクにイメージさせた。

そういう意味でもヴィレヴァンは若い子用の店なんだなと勝手に思っていた。

そしてボクはもう、その空気を纏えるほど
若くはない。

古着を着れば、ただのボロ着に見えてしまう程度には歳をとったのだ。

まだヴィレヴァンが閉店する前の
5月の始めに数年ぶりにアメ村に行ったのだが、アメ村の様子が少し変わっていた。
何となくキレイになっていて、
空というか空気がスコンと抜けるような感じがした。
今までアメ村を想像する時の
うだるような暑さや、
雨上がりのアスファルトと誰かのタバコのにおい。そういう早朝にカラオケ店から駅に向かう時のような、気だるい輝きのようなものが
スッポリと抜け落ちていた。

中学の頃、始めてアメ村に行った時のあの
ダーティーな雰囲気は微塵も感じない
クリーンな街になっていた。

昔デカイ黒人の客引きにTシャツを買わされそうになった店や、なんかサングラスかけたオッサンにジーパンを買わされそうになった店や、ラッパーみたいなオッサンに帽子を買わされた店は、
全てなくなっていたように思う。
あるいはそのオッサン達も街と共に洗浄されクリーンなオッサンとしてアメ村のどこかで働いているのか?
(そんなマネーロンダリングのオッサン版みたいなことが起こっているなら恐ろしいことだ、、)
まぁ、どちらにせよ
アメ村はだいぶ変わっていた。というよりも
ボクには別の街のように感じた。
そんな中、ヴィレヴァンは変わっていなくて安心した。相変わらずゴチャゴチャで
楽しそうな若者が溢れ、不思議なにおいがした。けれど自分が変わったのか、
ヴィレヴァンに入って、すーっと、
一周して何も買わずに店を出てしまった。
当時の自分からすれば、こんな面白い店で何も買わず出ていく人間いるのかっ!?
ミニマリストの、こんまりですら何か買うだろっ!?というくらいヴィレヴァンにあるものは魅力的に思えたのだが、
今の自分はその個性的な商品を少し冷めた目線で見ていることに気づいた。

知らぬまにヴィレヴァン的なものに心が躍らなくなっていたのだ。

学生時代のボクはまだ幾分若くて、例えば新しい服を着れば何か新しい自分になれるような錯覚をする程度に、真っ白なキャンバスというほどでないにしろ、自分の中に少しの余白を持っていたように思う。

けれど今のボクはギッチリと日常に塗り潰され
ヴィレヴァン的なものが入り込む隙間が、
一切ないことに気づいてしまった。

ボクにとっての
青春の象徴であった、アメ村の
ヴィレヴァンは6月に閉店したのだけれど、
自分のなかでは、とうに閉店していたことに気づかされた。

気づかないうちに
ボクもつまらない大人になっていたのだ。

良くも悪くも。


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