noteてんちゃん3

娘が生まれました。びっくりしました。

日記

8月7日、娘が産まれた。立ち会い出産で産まれた。

分娩室でボクは、腹がぱんぱんになって苦しんでいる妻をみて、ドラゴンボールのセルが自爆する時のことを思いだしたりしつつ、

いやいや、マジメに立ち会いせねばと思い、叫ぶ妻と必死の助産師さんを前に、 激戦区に送り込まれた新兵のように、何も出来ず立ち尽くしていた。

しかしその、たぎった静観を見かねてか助産師さんがテニスボールをみせてきた。邪魔な犬を追い払う要領で、ボールで遊んでてくれと、いうわけでもなさそうなので、助産師さんに尋ねると、テニスボールで腰あたりを押すと妊婦の負担が軽減するというのだ。なるほど。
さっそく言われたとおり妻の腰あたりを懸命にボールで押した。

妻はとても苦しんでいた。

テニスボールがめり込んでいた。叫んでいた。

逆にダメージを与えている気もした。

しかしテニスボールをぐいぐいすることをやめられる雰囲気もなく、かといって、
ぐいぐいしてるだけじゃ、適当にやってると思われそうな気もして、

時々、

 ぐいーん ぐいぐいっ とか、

ぐいっ、ぐぐいっ、 サッ、、とか色々変化をつけたりもした。

しかし、そのかいも虚しく妻はずっと苦しんでいて、見るのも辛く。

ボクシングの試合ならボクは、とうにタオルを投げていたが、これは赤ちゃんが生まれるまで終わらない戦いなので、
せめてタオルで汗を拭ってやることにしが、
ポッケにハンカチはなく、はなまるうどんの割引券とかポンタカードが入っているだけで、ますます自分の無力さを感じ、手に持ったボールを龍かっ!?ってくらい強く握りしめ、妻の奮闘を見守っていた。

どうやら赤ちゃんは、ずっと頭がつかえているらしく、
助産師さんが時々言う「頭が出かかっている。」というフレーズが非日常的すぎて少し怖いなと思っていると、
赤ちゃんがヌププッと出てきそうになったので、
すぐに持ってきたビデオカメラを妻にむけ、苦しみつづける妻の顔を枕元で撮影していると、自分がそういうタイプのサイコパスみたいな気がしてきたが、赤ちゃんが出る股のほうからは、撮影禁止と助産師さんに強く言われているし、もし禁を破り股付近にカメラを向けたら、この切迫した状況的に
ガチンコファイトクラブみたいな強い感じで止められることを恐れて、
苦しみ叫ぶ妻の顔だけを撮っていた。

なかなかの難産だったが、しばらくすると、
何やら、いよいよ赤ちゃんが出てきそうな
気配を感じたので、妻の頭の方から控え目に股を映していると、
ついに赤ちゃんがにゅるっと出てきた。
その瞬間、オギャーと、テンプレみたいな声で赤ちゃんが泣いたので、慌てて助産師さんが取り上げた赤ちゃんにカメラの焦点を合わせた。
ボクは産まれてきた赤ちゃんに
カメラをむけながら、ただ、「すごい!!」と言いまくっていた。

感動で泣いたりするかなとも思ったが、あまりそういうエモさはなく、
妻への、ねぎらいの言葉や、感動的な言葉も何もなく、
ただ妻から人間が、にゅるっと出てきたことにたいして、すごい!すごい!っと
手品を見た子供みたく連呼していた。

赤ちゃんは、長時間 頭がつっかえていたこともあって、
愛川欽也を圧縮したような顔だったが、
手足をパタパタさせて元気そうだったので、
安心した。

助産師さんが、
「せっかくなので、赤ちゃんと妻と3人で、スリーショットを撮りますよ〜 」

とツアーガイドみたいなことを言ってくれたので、
カメラを渡そうとしたら、その助産師さんはいなくなっていた。
しばらくして、赤ちゃんも別室に連れていかれ、そのまま助産師さんも赤ちゃんも戻ってこなかった。

その後、妻も別室に連れて行かれ、ボクは普通に帰った。

帰りにローソンで、少し高いデザートを買った。

いやしかし、改めて自分が
父親になったなんて考えると、、、
とても恥ずかしい。

普通に生きていくのがツライ状況です。 少しでも作った作品を、評価して頂ければ 嬉しいです。