イエス生誕教会

【旅の製図法/28】『ONE PIECE』44〜52巻(スリラーバーク編)感想文

小説や漫画を読み終わった後しばらく、その物語の文体やノリがうつってしまう現象は、だれでも一度は経験したことがあるはずである。夢野久作を読んだ後は(心の中で)「……イヤ。お笑いになっては困ります」とか「エッ……」とかいってしまうし、村上春樹を読んだ後は(心の中で)「完璧な洗剤などというものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」とかいってしまう。そして『ONE PIECE』を読んだ後は、なんだか自分がメチャクチャ強くなったような気がして、そのあたりでたむろしてるチンピラ10人くらいなら5秒で殺せるんじゃないかと思えてくるから不思議だ。

というわけで、『ONE PIECE』をまた読んだので、そろそろ恒例となってきた感想文も3回目である。といっても、前回前々回を未読の方でも特に問題はない。なお、この〈『ONE PIECE』の感想シリーズ〉はネタバレ上等で書き進められていくので、苦手な方は注意されたい。

今回私が読んだのは44〜52巻、俗にいう「スリラーバーク編」である。ちなみに、私はいつも『ONE PIECE』を近所の漫喫の8時間パック(オープン席:1004円〔税込〕)で読んでいるのだけど、8時間で読む冊数が毎回きっちり同じなので、「自分、このペースでしか読めないんだな……」と思った。8時間で私が読むのはいつもきっかり「10冊」だ。

しかし、今回は44〜52巻。9冊しか読めてないじゃないか、と気付いた人がいるかもしれない。これには理由があって、それは途中で「1巻」を再読したからである。1巻は中学生のときに読んだことがあるけれど、何しろ15年くらい昔の話なので、細部をすっかり忘れていた。なぜこのタイミングで1巻を再読しようと思ったのかについては、後述する。というわけなので正確にいうと、今回は1巻+44〜52巻の感想文だ。

さて、44〜52巻でメインとなるのは「スリラーバーク編」だが、前回の「ウォーターセブン編」の完結部分もここに含まれている。世界政府の諜報機関であるCP9によって、エニエス・ロビー島に連行されてしまったニコ・ロビン。ルフィたちによる救出が失敗すれば、彼女は罪人として、世界一の大監獄・インペルダウンに幽閉されてしまう。時間が刻一刻と迫る中、はたしてルフィはCP9最強の男、ロブ・ルッチを倒すことができるのか!? という話の展開である。

結論からいうと、あくまで少年漫画である『ONE PIECE』、主人公が負けるわけないので、ルフィは当然ロブ・ルッチに勝利する。そして、ロビンの救出に成功した麦わらの一味はエニエス・ロビー島を脱出しようとするのだが、この島は戦闘の途中で、政府の大型軍艦10隻と本部中将5人を召集し敵対組織の全滅をはかる「バスターコール」がかけられている。とりあえずボスは倒したものの、脱出用に用意した船も木っ端微塵になってしまっている状況で、絶体絶命の危機に陥る麦わらの一味。

もはや脱出不可能かと思われたその瞬間、ふと一味の足元から聞き慣れない声が響いてくる。その声の正体とは……あー書きたい、ネタバレ上等で書きたい、だけどこれはいくらネタバレ上等でも書いちゃダメな気がするので書きません。とりあえずその声の主のおかげで、ルフィ船長率いる海賊一団は無事、エニエス・ロビー島の脱出に成功したのであった。めでたしめでたし。

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