考古学博物館のもの

【旅の製図法/27】『ONE PIECE』34〜43巻(ウォーターセブン編)感想文

『ONE PIECE』の続きを読んだので、簡単なメモ程度ではあるが、またも感想文を書き留めておこうと思う。24〜33巻の感想文である前回分も、未読の方はぜひ読んでみてほしい。なお、この感想文は前回も今回もネタバレ前提で書いているため、ネタバレを嫌う方は注意されたし。

さて、今回の34〜43巻は、俗にいう「ウォーターセブン編」である。といっても、ウィキペディア情報によるとウォーターセブン編の完結は46巻なので、なんとも中途半端なところで今回の感想文は終わる。なぜこんな中途半端なのかというと、漫喫の8時間パックで読んでいたら時間切れになっちゃったからである。ドリンクバーで烏龍茶を飲みまくっていたらお腹がたっぷんたっぷんになってしまった。

『ONE PIECE』ウォーターセブン編は、長い旅の損傷が蓄積し崩壊寸前となったゴーイングメリー号を修繕するため、ルフィたち麦わらの一味がウォーターセブンという水上都市を訪れるところから話が始まる。このウォーターセブン、モデルとなっているのはもちろんあの水の都・ヴェネチアだろう。水上都市であるウォーターセブンには、年に一度、「アクア・ラグナ」と呼ばれる高潮が押し寄せることになっている。一方、モデルであると推測されるヴェネチアも、「アクア・アルタ」と呼ばれる高潮に悩まされているらしい。こんなところからもわかるように、おそらく尾田っちの手元には、ヴェネチアの資料がたくさん転がっているはずである。

前回の感想文で、私は『ONE PIECE』とはつまるところ麦わらの一味という沢木耕太郎集団の〈旅行記〉である、という結論を出したのだけど、今回のウォーターセブン編でこの感をさらに強くした。ルフィたちはゴーイングメリー号という船に乗り込み、海賊王に俺はなるという夢を抱きながら、カイロを訪れたりシェムリアップを訪れたりヴェネチアを訪れたりしている。そして現地の人々と、コミュニケーションなんてもんじゃない、現地の政治経済に思いっきり介入してはその場所を去っていく。これを〈旅行記〉といわずしてなんというか、ルフィとはすなわち沢木耕太郎であったのだ。『ONE PIECE』とは、『深夜特急』だったのである。

さて、このヴェネチア……じゃなかった、ウォーターセブンでのルフィたちの目的は、損傷したゴーイングメリー号を修繕することである。ウォーターセブンには、造船で有名なガレーラ・カンパニーという会社があり、ルフィたちはこの会社に船の修理を依頼する。ところが、見積もりを行なった社員に、ゴーイングメリー号はもはや修復不可能である、いくらお金を積んでも直せない、新しく船を買わないと次の島へは行けないという、絶望的な結果を通達されてしまう。この結果にルフィ船長は頭を抱えるが、修理のプロ集団であるガレーラ・カンパニーにそういわれたのでは仕方ない。長い旅をともにしてきた、クルーの1人であるといっても過言ではないゴーイングメリー号をこの地で乗り捨て、新しい船を買って次の島を目指す決断をする。

これはルフィにとっても苦渋の決断ではあったが、この決断に納得がいかないのが、そう、クルーの1人であるウソップだ。ゴーイングメリー号はもともと、ウソップの親友であるカヤから貰い受けたものであり、ウソップはこの船に他の船員たちを上回る思い入れがある。新しい船を買うと主張するルフィと、なんとかして船を修繕すると主張するウソップは対立する。そしてついに、ルフィはウソップに、「文句があるなら船を降りろ」と宣告してしまうのだ。同時に、街を散策していたニコ・ロビンがどういうわけか姿を消し、麦わらの一味は一時バラバラになってしまう。

そんなとき、ガレーラ・カンパニーの社長でありウォーターセブンの市長でもあるアイスバーグ氏が、何者かによって暗殺されかけてしまう。アイスバーグはなんとか一命をとりとめたものの、暗殺者のなかにニコ・ロビンがいたことを証言し、ルフィたち麦わらの一味は市長暗殺の疑いをかけられてしまうのだ。街の人々全員を敵にまわし、市長暗殺未遂の謎とニコ・ロビンの行方について、なんとか真相を突き止めようとする麦わらの一味。そこで浮かび上がってきたのが、世界政府の諜報機関であるCP9(シーピーナイン)だ。ロビンはこのCP9に脅迫され、ルフィたちのもとを離れて市長暗殺の計画に手を貸していたのである。

CP9は、ロビンを暗殺計画に加担させただけでなく、世界政府の司法の島「エニエス・ロビー島」へ連行し、そのまま永遠に身柄を拘束しようとしている。はたしてルフィたちはロビンを取り戻すことができるのか!? ロビンの過去には何があったのか!? ウソップは麦わらの一味に復帰できるのか!? というところで、あらすじ解説はこのあたりで終わりにしよう。

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