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電動車の革命児<e12 ノートe-POWER>

 印象に強い車とはなんだろうか。一言で言い表しても、滑らか、よく曲がる、爆発的な加速、高い静粛性、奇抜なデザイン、個性的なインテリアetc....
そんな中でも今回は「革命」という印象を抱いた一台を紹介したい。

HV、EVの革命

何をお大袈裟なと一蹴されてしまいそうだが
この世代のノートの凡庸さに終止符を打ち、日本人に電動の可能性を訴求することに成功したシステムである。それもシンプルなシリーズハイブリッドで、だ。
特にワンペダルという概念が生まれたのは、ノートとリーフあたりの年代ではなかっただろうか。まるでゴーカートのような、それでいて扱いやすい極めて特殊な操作性は登場から5年以上経った今でも新しい感覚である。結果として成功を収め、今やワンペダルドライブは電動車の魅力の一つとして世間に大きく広がった。この車が登場しなければワンペダルという概念は広がることはなかったのではないだろうか。


 以上を踏まえた上でまずはノート(E12)について、
正直に申し上げると
何をとっても平均値以下という車である。
エコスーパーチャージャーを搭載したモデルや1.2L NAモデルなどe-POWERを除いたモデル全てに試乗したがどれに乗ってもこの印象が揺るぐことはなかった。特にNAは慢性的にパワー不足で大人が複数乗るにはスペースの割にしんどい。更にエコを意識した車作りが走りにチラチラと様子を伺いに現れるところが気に入らない。徹底したコストカットを走りや触感、使用感全てに感じ、燃費も良くない。はっきり言って誰がこの車を欲しがるのか全く理解できないししたくない。この車で出かけるくらいなら人力車を引いて走った方がマシなレベルだ。カーシェアやレンタカーに未だ多く稼働している車両が存在するが、はずれくじと言っても過言ではない。E11型の方が走りの質感と満足感どちらをとっても上手だったほどだ。NISMO Sですら改善点が多く、スポーツ走行するには心もとない時もあった。足として使う分には決して悪くないがもはや基本設計そのものに問題があるのではないか。そんな車だが、後期から搭載されたe-POWERに関しては各部のマイナス点がパワトレだけでトータルポイントをプラスまで持っていけるほどの魅力があるのだ。

圧倒的普通の中で際立つ近未来的な走り

ノートがいかに筆者の好みにそぐわない車か事細かに書いたところで一旦この車両に搭載されたe-POWERシステムについておさらいしていこう。

リーフ譲りのエレクトロシフトマチック、セレナやキックス(第一世代)のものの方が扱いやすく筆者はあまり好みではない。


まず、トヨタ式やホンダ式と異なりエンジンは「走行」には関与しない点が特徴だ。あくまで「発電」のみが搭載されたエンジンの役割で走行は大型の駆動用モーターで行うことが、e-POWERの要点だ。
これだけで、もう明確であろう。トヨタ式やホンダ式と比べて単純で割り切られた構造をしている。
また、コスト削減(後述する)のために回生協調ブレーキが搭載されておらず、他社HVと比較すると一歩遅れたシステムなのだが
このシステムに先進性を与えたのがワンペダルである。仕組みとしては、回生ブレーキ(駆動輪の回転エネルギーで発電機を回し、その抵抗でブレーキをかける)のみで最大-0.15Gの強力な制動力を発生させ、アクセルペダルの戻し方で減速度をコントロールすることができるといったものだ。完全停止まで行うことができ、峠道もブレーキの踏み替えなしで走れてしまう新しい走行フィールを得られる。

 とはいえ、車としての動きは至って普通。ガソリンモデルと同じく足回りからロードノイズはそれなりに入ってくるし、発電中は主にベンチレーションダクトからシチュエーション問わず粗い3気筒の雑音が入ってくる。走りに従った回転数の上下もほとんどないためエンジン音にリニアさもなく、人によればCVT車以上の違和感を感じるはずだ。特に長い登り坂はエンジン音がかなりの騒音として耳に届き、ハンドルにも3気筒の振動がモロに伝達されてくる点を考えると、さして静粛性は高められていないのだと思う。高速やバイパス路もE13と比較するとロードノイズや共振が気になり快適性はさほど高くない。会話も少し声が大きくなる程度だ。また、車内の作りも同様で、安い車ゆえにあまり言いたくはないのだが、シートの作りやウインカー、インパネ類の配置含め時代を感じる作りだ。出来としては同時期のアクアの方がバランスが良い。だがそんなことは問題にならないほど電気自動車に匹敵するモーターのトルクは運転者を虜にしてしまう。やぼったい音とは裏腹に当時存在したHVを過去のものにするほどの加速力と滑らかさを持ち合わせていた。

今思えば、いかにガソリン車から違和感なく乗り換えられるか考えられていた市場において、電動車であることを前面に押し出した車種はこのクルマが初めてではないだろうか。

チグハグした走り

記事を書くにあたって改めて実際に神戸市内を一周走らせてみた。三ノ宮駅を出発し、ポートアイランドを一周。その後ハーバーハイウェイ経由で六甲アイランドへ行き、高羽大橋を降りて六甲山を走り最後は神戸駅を経由して戻るルートである。以前記事にしたE13を踏まえて上で話していきたいと思う。
 まず発進から満ち溢れるようなトルクは現行型と比べても荒々しく只者ではなく感じる。
E13のe-POWERは上質さに振った余裕のあるパワトレなのに対し、とにかく暴れ馬を感じさせるほどのグイッと感がある。強めに踏み込むとシャシーとボディに余裕がないようにすら感じれる。先述した通り、ボディと足回りに関しては同価格帯のコンパクトと比較しても並以下だが、このパワー感はどのコンパクトをも凌駕しているようにすら思えた。E13型と比べるとバッテリーからの電力供給自体はそこまで多くなく、残量に余裕がある状態でも早め早めに発電するチューニングになっていた。故に音や振動含め、上質感は皆無だ。ハーバーハイウェイの料金所でフル加速も試したが、エンジンが始動した後の加速は大したものだ。一瞬で速度超過域に達してしまうほどである。車格に対してトルクが鬼とはいえ出力自体は一般的なコンパクトカーと変わらないため、扱いきれないほどのパワー感というわけではない。車格が違うので比較にはならないが、初速はアバルト595やメガーヌrsトロフィーなどと大差なく、一般的に速いと言われる部類だが、両者と異なり恐怖感はない。

 しかしメリットばかりではない。特にデメリットが顕著に現れたのが六甲山のアップヒルである。シリーズハイブリッドの特性上、出力が発電量を上回ってしまう場合エンジンが騒音を撒き散らしながら発電することになる。それだけで走行状況とマッチしない音に違和感満載なのだが、これが車格が上のセレナになると走行に支障をきたすほどなのだ。所謂電欠という状態だ。そして今回乗ったノートも例外ではなかった。ハイペースに走ると徐々にレスポンスが悪化していることがビシビシと伝わってくる。精一杯発電しようと発生する3気筒のガラガラしたノイズとレスポンスの悪化から走りのバランスが崩れていることは一目瞭然だ。
どのハイブリッドシステムにも該当することだが、バッテリー残量次第で燃費や走行性能に大幅に影響する。特にe-POWERは影響を受けやすいシステムで、走りの感触すら変わってしまうのだ。煩くなるだけならまだしも、走行フィールに関わってくる点に関しては如何なものかと考える。現行のc28セレナからやっと改善されたもののオーラやE13ノートでも感じることがある。

意外にも狙い目

以上のデメリットはあれど、走りとしてのクオリティは現代の車種と張り合えるほどのポテンシャルを備えている。しかもこの車の一番のつよみはなんといっても価格だ。なんと中古相場が概ね100万以下で購入することができる程度まで下がっているのだ。普段使いの足としても、ちょっとしたおもちゃとしても楽しめる、変わり物好きにはたまらない一台なのではないか。維持の面でも、オイルが乳化すると言った欠点はあるが基本的にはコンパクトカーと変わらないのでいきなりリーフに乗り換えるよりもハードルは低いはず。

現行にはない魅力を多く兼ね備えたノートe-POWERを気軽に電動の足として履き替えてみるのはどうだろうか?

何より現行型の何倍も楽しく、開発者たちの苦悩や驚かせたいという工夫が少し乗っただけで伝わってくる名車なのだ。

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