金日成が日本軍をやっつけた話にスッキリ!北朝鮮の体制を批判する脱北ラッパーが読んだ物語

――2016年、「金正恩は豚野郎」と批判し、注目を集めた脱北ラッパー・姜春革。12歳まで過ごした北朝鮮で読んだ、“強烈な”物語とは?

 私が生まれ育った北朝鮮では、学校や地域に図書館もなかったし、街に本屋もありませんでした。

 平壌や都市部は別でしょうが、私が育った地域では子どもが普段手に取れる本といえば、学校で与えられた教科書のみ。もし教科書以外の本に触れるとしても、その内容はほぼ100%、金日成と金正日を賞賛するストーリーか米国や資本主義を批判するものでした。なかでも印象に残っているのは『金日成と金正日の幼い頃』という科目で学んだ、金日成が白頭山の霊気を受けて戦ったという話。当時は純粋に感動して、信じていました。

 それから、『りんご』という物語も、強烈に印象に残っています。韓国にやって来たアメリカ人宣教師が自分の家の庭にりんごの木を植えた。やがてりんごの実がなり、塀の外にひとつ落ちた。通りかかった韓国の子どもが落ちたりんごを拾って食べていると、それを見て怒り狂ったアメリカ人宣教師がその子を捕まえて、額に「泥棒」という文字を焼きごてで刻み付けた……。幼心に怒りが湧き起こり、韓国の子どもが可哀想で仕方ありませんでした。当然、アメリカ人に対しては激しい増悪を感じましたよ。

 ほかにも、普天堡戦闘など抗日パルチザンの戦いで金日成が日本軍を何人やっつけた、朝鮮戦争で米軍を全滅させた、なんて話は数え切れないくらいある。当時はそれらを読むたびに朝鮮人として誇らしく、スッキリした気持ちになっていたものです。

 同時に、北朝鮮のこうした姿勢は、韓国に対しても向けられていました。子ども向けの『腐って病んでいる世界』というマンガには、韓国では子どもが飢えていても金持ちは知らんぷりだけど、自分の愛犬は溺愛し、犬に高価な指輪をつけるような贅沢をしているといった内容が描かれていました。資本主義を非難して、アメリカに支配されている韓国の“悲惨”な現状を描いた作品を読んで、韓国の子どもたちに心から同情しました。

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