刑務所内で上映されるドキュメンタリー映画も! 再犯者率は48.8%――正解なき更生プログラムの今

――本特集では、“犯罪”をめぐるさまざまな問題や最新事情を取り上げてきた。では、実際に犯罪を犯した人物は、どのような更生プログラムを経てシャバに戻るのだろうか? そもそも更生プログラムに効果はあるのか? その現在進行形を見ていきたい。

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日本の刑務所に初めてカメラを入れ、話題となった映画『プリズン・サークル』。

 明るいホールの中で椅子に座って円座になる若者たち。ひとりが過去に行った犯罪を告白すると、別のひとりはその事件の被害者役になりきって、「どうしてそんなことをしたのか」と、告白した青年を責め始める。ほかの参加者からも厳しい言葉が投げかけられるうち、告白した青年の顔には涙がこぼれ始めた……。

 これは、昨年公開されたドキュメンタリー映画『プリズン・サークル』の一場面。登場する青年たちの顔にはモザイクがかけられているものの、ぼんやりと浮かび上がる苦悩の表情は生々しい。この作品は、初めて日本の刑務所内を撮影したドキュメンタリー映画として、大きな反響を呼んだ。

 監督の坂上香氏は、高校卒業と同時に渡米・留学。帰国後TVドキュメンタリー制作を経て、ドキュメンタリー映画を作るようになった。坂上氏は中学時代に集団リンチという暴力を受けたこと、虐待とも言えるしつけに苦しめられてきたこと、そして立場の弱い弟に対しては自分が加害者になってしまった経験から、「暴力の連鎖をどうしたら止められるか」を自分のライフワークとして考えるようになったという。そんな彼女は2004年にアメリカの刑務所を撮影した『ライファーズ 終身刑を超えて』という作品を手がけている。こちらの舞台は、カリフォルニア州・サンディエゴ郊外のR・J・ドノバン刑務所。そこでは「ライファーズ」と呼ばれる終身刑、もしくは無期刑受刑者たちが、「アミティ」という民間団体が行う更生プログラムを受けている。

「アミティ」とは、1981年にアリゾナ州で創設された団体で、薬物やアルコールなどの依存症者や、終身刑受刑者たちを対象に、徹底した語り合いによって、問題行動に頼らなくても生きていける方法を学ばせている。

 この「アミティ」が行っているような受刑者や依存症者を対象とした治療共同体を「TC(セラピューティック・コミュニティ=回復共同体)」と呼ぶ。『ライファーズ』では、カリフォルニア州の刑務所内で「アミティ」が運営する「TC」を撮影。受刑者たちのミーティングのようすをまざまざと映し出している。

 そして、この作品に映し出された受刑者たちによる「TC」の模様を参考に、島根にある官民共働の最新式の刑務所「島根あさひ社会復帰促進センター」で導入された「TCユニット」という更生プログラムを撮影したのが、冒頭に紹介した『プリズン・サークル』なのだ。

 坂上氏は当初、管理色の強い日本の刑務所ではTCの導入は無理だろうと思ったが、実際に見学したところ、受刑者が率直に告白し合うTCのプログラムが機能していることに驚き、これは映像で残すべきだと撮影交渉を始めたという。

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