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戦争と平和【2019年9月号第1特集】

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記事一覧

中国共産党が抗議!――サイバー戦争を描いた“リアル”なSF小説



『中国軍を駆逐せよ! ゴースト・フリート出撃す』(二見文庫)

 サイバーセキュリティ業界では、テロリストによる電力送電線への攻撃でヨーロッパがパニックに陥る様子を描いたドイツの小説『ブラックアウト』(角川文庫)など、実際に起こり得るかもしれない非常事態を描いた小説作品が時折話題になる。サイバーセキュリティの専門家としても知られるアメリカの国際政治学者、P・W・シンガーらが2015年に著した『

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政府の諜報機関、サイバー軍、民間企業の連携……サイバーセキュリティという国防

――昨年、東京五輪担当大臣と政府のサイバーセキュリティ戦略本部の担当大臣を兼務していた桜田義孝氏が「自分でパソコンを打つことはない」などと発言し、世界から失笑を買うことがあった。一方、先進国では“国防”の観点からサイバーセキュリティは非常に重要視されている。その最前戦とは、いかなるものなのか?

2016年に新設されたイギリスのナショナルサイバーセキュリティセンター(NCSC)。

 陸、海、空、

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卍とハーケンクロイツはなぜ似てる?――チベットから仏像を持ち帰る!? ナチス・ドイツと仏教の関連性

――第二次世界大戦を引き起こしたナチスのシンボルであるハーケンクロイツは、欧米社会ではタブー視されており、同時にそれに類似する卍もその被害を受けている。なぜ、ナチスは卍に類似したシンボルを採用したのか? 調べてみると、そこには仏教との怪しい結びつきがあった。

2012年、シュツットガルト大学のエルマール・ブーフナー博士は「宇宙から来たブッダ」というタイトルで、ナチスがチベットから持ち帰ったとされ

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戦禍の島から行楽地へ――ハワイ、沖縄はなぜリゾート地に? 激戦地島の“異文化と気候”の地政学

――夏といえばリゾートである。沖縄、ハワイ、グアム、サイパン。これらのビーチリゾートには、夏を謳歌する行楽客が大勢訪れる。しかし夏は、まだ74年前の戦争の記憶ともまた、密接に結びついている――。

沖縄では魔除けの意味を持つシーサーの像が、いたるところで目につく。

 言うまでもなく、沖縄、ハワイ、グアム、サイパンなどの島々は、いずれも多くの命が奪われた激戦地でもあった。そして今、ハワイ、沖縄、グ

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アイドルがリアルを歌う本当の理由――逃げ道を作らねば発売できず! 平成以降のアイドルと反戦歌

――「無駄な血を流す必要はない」「悲しみは未来永劫、連鎖する」「戦争をやめよう」――こうした反戦を歌った曲を耳にしてきた読者は多いだろう。しかし、そのような反戦歌は、令和を迎えた現在でも、絶対数こそ少ないものの存在する。本稿では平成以降に「アイドルが歌ってきた反戦歌」の内情を探ってみた。

取材に協力してくれた制服向上委員会の橋本美香氏(現在はグループ名誉会長)。反戦を歌い、東日本大震災後には「ダ

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国家に狙われたストリート・ギャング――ニプシー・ハッスルの死去から見る米ヒップホップの司法戦争

――ストリートから誕生したヒップホップは、時代と共に成長し、エンタメに特化したパーティチューンから、真っ向から社会を批判するプロテストソングまで、形態は多種多様だ。本稿では、アメリカのひとりのラッパーの死去を軸に、ヒップホップとラップ、ひいては黒人が自国と向き合ってきた闘争史を振り返っていきたい。

ニプシー・ハッスルが銃弾に倒れたショップ「マラソン・クロージング」前には、地元民やファンからたくさ

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戦争を弄ぶ悪魔か?――「国を消滅させる」はブラフ!? トランプ的【金】戦争活用術

――相変わらず強気の外交を見せているアメリカのドナルド・トランプ大統領。時に核ミサイルや派兵をちらつかせ、時に各国に罵詈雑言を浴びせて牽制している。一方でトランプは、実際に戦闘行為に至るケースはごくわずか。世界中に喧嘩をふっかけまくりながら、我田引水で自国利益を叫びまくるトランプ外交の正体とは?

『現代アメリカ政治とメディア』(東洋経済新報社)

 歴史上類を見ない破天荒な大統領として、就任当初

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米軍では入隊制限への反発も!――「自衛隊とLGBT」の現状と問題

――米軍では今年4月からトランスジェンダーの入隊制限を開始。このトランプ政権の政策には大きな反発が起きている。一方で隣国の韓国では兵士の同性愛が禁止され、こちらも人権団体の非難の対象だ。一方で日本の自衛隊では、LGBTへの対応に関する目立った報道はなし。その存在は緩やかに容認されているように見えるが、本稿における取材でさまざまな問題が見えてきた。

『はじめて学ぶLGBT 基礎からトレンドまで (

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タクシー運転手の狂気は戦争のせい? 米兵のPTSDに迫ったアメリカ映画

前記事では日本兵のPTSDに焦点を当てたが、さまざまなアメリカ映画で心の傷を負った米軍兵士の姿が描かれてきた。その中でも名作と呼び得るのが、以下である。戦争の体験は、このように兵士の精神を破壊していく。
(文/編集部)

単なる“中二病”映画ではない!
【1】タクシードライバー

DVD『タクシードライバー コレクターズ・エディション』
監督:マーティン・スコセッシ/公開:1976年/価格:141

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なぜ“復員”できなかったのか? 戦中も戦後も精神科病院に隔離――PTSDになった日本兵の末路

――戦中、多数の日本兵が「戦争神経症」を発症し、軍の病院に“収容”されていた――。昨年、NHKのドキュメンタリー番組がその実態に迫り、大きな話題となったが、なぜこの事実は長らく明るみに出なかったのか? 精神を病んだ兵士が戦中・戦後に置かれた境遇を見ていくと、背後に巨大な問題があった。

2018年8月に放送されたNHKのETV特集『隠されたトラウマ~精神障害兵士8000人の記録~』は視聴者に大き

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「原爆カクテル」に「ミス原爆」まで開催!――ラスベガスで核実験が観光に! 米国のアトミック・カルチャー

――戦争とは正義のぶつかり合いであり、当事者同士の価値観や歴史観はまったく異なる。日本人がそれをもっとも実感するのは、原爆に対する米国の視点に触れたときではないだろうか? そんな米国は今でも「原爆投下によって戦争は終結した」という見方が強いため、大衆文化にも「核/原爆」の影響が及んでいるという。

アメリカの高校に留学していた日本人学生による、キノコ雲をモチーフにした学校のロゴに異を唱えた動画は

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ハリウッド巨匠とアメリカ――根底にはいつも人種差別がある!スピルバーグが訴える戦争の元凶

――巨匠、スティーブン・スピルバーグ監督は、多作であることを差し置いても、多くの戦争をテーマに取り扱ってきた。近年でも『ブリッジ・オブ・スパイ』や『戦火の馬』など精力的に表している。スピルバーグの戦争映画を追いながら、ハリウッドと戦争の一面を見ていこう。

(絵/沖 真秀)

 ドナルド・トランプが大統領に就任してからというもの、多くの国へ戦闘姿勢を見せているかのようなアメリカ。だが考えてみれば同

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日本的“アイドル”を創造したイビツなアイデンティティ……ジャニー喜多川と戦後民主主義

――今年7月、日本のエンターテインメントの礎を築いた稀代のプロデューサー・ジャニー喜多川が死去した。彼が体験した戦争、そして戦後の日本芸能界で作り上げた“アイドル”という文化、さらに舞台演出に込めた平和への思いを紐解く。

〈ジャニー喜多川平和年表〉

 巨星墜つ。7月9日、日本を代表する芸能プロダクション・ジャニーズ事務所創設者のジャニー喜多川氏がくも膜下出血で逝去した。多くのメディアがその訃報

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【藤本高之】内戦にさらされた子どもたちがスマホで……中東紛争の現実に肉薄する、現代史の悲劇を学ぶ作品

藤本高之(イスラーム映画祭主宰)

1972年生まれ。アップリンク映画配給サポート・ワークショップ受講を経て、10年、北欧映画祭「トーキョーノーザンライツフェスティバル」に参加。15年、「イスラーム映画祭」を個人で立ち上げる。共著に『映画で旅するイスラーム』(論創社)がある。

 まずは『戦場でワルツを』(08年)。これは、戦争の当事者に取材した内容を、アニメーションで再現した、つまりドキュメンタ

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