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春画、1世紀半の不幸なる近代史【2016年12月号第3特集】

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【春画の近代史05・平成期~現代】“拒絶”する美術館――いまだ一般展示ならず永青文庫“騒動記”



『春画 EROTIC ART IN JAPAN- 大英博物館所蔵』(平凡社)

 我が国のアカデミズムにおける受容が徐々に開始され、彼の国の世界的美術館で展覧会が成功裏に終わろうとも、この国の美術館は門戸を開かなかった。それはなぜなのか?

 2013年秋から2014年にかけて、イギリス・大英博物館で、3年半にわたる国際研究プロジェクトの集大成として、春画展「Shunga:Sex and Pl

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【春画の近代史04・大正期~昭和期】“芸術”からの排除――昭和・平成の世を迎え“学問”化する春画



江戸中期『すゑつむ花』円山応挙
葛飾北斎や喜多川歌麿だけならまだしも、名だたる寺院の障壁画や国宝「雪松図屏風」を手がけた江戸中期の絵師、円山応挙も春画を描いていると知れば、春画を学究の対象とするのも当然だと誰もが納得するかもしれない。本作は、源氏物語の一巻「末摘花」をモチーフとした組物が明治期に入って1冊にまとめられたもの。(国際日本文化研究センター所蔵)

 近代化が一段落ついたとき、日本人

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【春画の近代史03・明治中期~大正期】“祈り”の対象――日清日露戦を戦う日本兵は春画を携え戦地へ赴く



天明8(1788)年頃『婚礼秘事袋』月岡雪鼎
「火除け」になるとされた月岡雪鼎には墨摺のこんな作品も。江戸中期の人である彼は「パロディの人」として知られ、「結婚指南書」的なものを装いながら、夫婦の交合場面を滑稽に描いている。(国際日本文化研究センター所蔵)

 明治維新の混乱期を切り抜けた日本は、1894(明治27)年の対清戦争、1904(明治37)年の対露戦争へと突入する。そのとき兵士の懐中

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【春画の近代史02・明治初期~中期】官憲の取り締まり――明治が始まり春画は“わいせつ物”へ



文政11(1828)年『仮名手本 夜光玉』歌川国貞
文政期に出版された、いわゆる「忠臣蔵もの」のひとつより。文字だらけである。国貞は1786(天明6)年に生まれ1865(元治元)年に没した浮世絵師で、作品数1万点を超えるともされる多作の人。(国際日本文化研究センター所蔵)

 西洋的な「風俗取り締まり」を企図する明治新政府は、矢継ぎ早に法令を発布していく。その流れのなかで春画も取り締まりの対象

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【春画の近代史01・幕末~明治初期】“最後”の春画――江戸が終わり、春画衰退せり



文久年間(1861~64年)頃『浮世源氏五十四帖』恋川笑山
幕末に活躍した浮世絵師、恋川笑山は、同時期に活躍した戯作者、柳水亭種清であろうとされている。幕末の文久年間頃の作品とされる本作は、『源氏物語』をモチーフとし3巻より成る『浮世源氏五十四帖』中巻のなかの1枚。この『浮世源氏五十四帖』は、多くの絵師によって描かれたモチーフである。(国際日本文化研究センター所蔵)

 時代は幕末。ビジネス規

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