見出し画像

JTACとはー III 準備

この記事は第III章です。前回の 近接航空支援を支える統合末端攻撃統制官とはー II 続・計画と要請” をご覧になっていない方は、先にそちらを読むことをお勧めします。

 前回は JTAC の役割を理解する上で必要な近接航空支援の基本的な理論と方法を中心とした Planning Phase (計画) について解説しました。今回はそれに続く Preparation Phase (準備) について解説していこうと思います。

III.1  Preparation Phase

 近接航空支援の準備には前段の Planning Phase (計画) で決定された内容に沿った検証、予行、準備、通信、移動、観測が含まれます。この準備段階には計画と同様、様々な役職の任務が含まれています。今回はその中でも JTACに関する部分を中心に取り上げていくことにします。

画像1

 地上部隊指揮官によって近接航空支援の要請が承認されたら、AO や ALO を中心に実行する上での敵脅威、利用できる航空機とその兵装などを助言し、指揮官の要求を達成できるように計画を練っていきます。そして、「誰が」支援を要請し、それは「いつ」実行され、指揮官の要求は「何」なのかを明確に把握し、さらにどの部隊が標的を捕捉し、どの部隊が航空機を誘導するのかということも精査し、実行に備えます。

 この準備段階において航空機の攻撃に必要なIP (攻撃進入地点) や CP (チェックポイント) 、SEAD (敵防空網制圧) 任務や地上部隊との調整、ROE (交戦規定) の設定、標的のマーキングの方法や優先順位、使用するレーザーコード、観測地点の設定など、近接航空支援に必要な様々な要素を一つ一つ決定していきます。これらの要素全てを決定した後に、実際の作戦行動に移っていきます。

 戦闘の前段階に入ると、JTAC は作戦に必要な装備や機器のチェックを行います。JTAC の推奨装備品には次のようなものがあります。

・NVD (ナイトビジョンデバイス)
・IR レーザーポインター
・LRF (レーザーレンジファインダー)
・LTD (レーザーターゲットデジグネーター)
・IR ストロボライト
・ケミカルライト
・GLINT テープ
・VS-17 パネル
・スポッティングスコープ
・マルチバンド無線機
・レーダービーコン
・発煙/照明装置
・40mm発煙弾/照明弾
・方位磁石
・鏡
・戦術タブレット
・GPS

 JTAC はこれらの装置に精通し、また使用可能であるか確認します。

Movement and Positioning

 JTAC を含む TACP は AO/ALO からの計画に基づいた観測位置まで移動を開始します。ほとんどの場合、部隊の合流地点や観測所、または BP (バトルポイント、回転翼機の攻撃発起地点) よりも前に展開することになります。観測位置の決定には次の3つの側面が考慮されます。

Security (安全)
TACP は自力で部隊を維持するほどの交戦能力が無いので、必ず他の地上部隊の領域内に配置されます。この位置決めには METT-T が考慮されます。
Observation (観測)
標的を効果的に観測できる位置が選定されますが、ランドマークや特徴的な地形は敵の目標になりやすいため、避ける必要があります。
Communication (通信)
TACP の主な通信手段である戦術無線によって、地上部隊及び上級部隊、そして航空機と通信できる環境下であることが求められます。

 配置後に時間と戦術的状況に余裕があれば、実際の攻撃誘導を行うまでの間に偵察を行います。現在の観測位置から交戦地域及び敵の接近経路の可視性を確認し、視界が通らない地域についても把握しておきます。また、通信感度も併せて確認します。

第IV章は以下からアクセスできます。

近接航空支援を支える統合末端攻撃統制官 (JTAC) とはー IV 実行

サポートありがとうございます。支援いただいたものはこれからの記事の参考となる関連書籍の購入代金に充てさせていただこうと思っています。