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『ザ・レポート』(2019)   『大統領の陰謀』以来のポリティカル・スリラーの傑作

事実に基づいたポリティカル・スリラー。主人公のダニエル・J・ジョーンズは実在の人物。
THE TORTURE REPORTのTORTURE(拷問)の部分を塗りつぶしたTHE REPORTがタイトル。上院情報問題特別調査委員会のCIAの拷問に関する報告という、CIAによる「拘留」と「尋問」についての調査報告書からきている。

主演はスター・ウォーズ・シリーズ新3部で知られるアダム・ドライヴァー。助演に来年公開予定の映画『ナイル殺人事件』に出演のアネット・ベニング、『マッドメン』のジョン・ハム、HBOのコメディ『バリー』のセイラ・ゴールドバーグ、今年公開された『ジョーカー』に出演しているダグラス・ホッジなど。超大物クラスの出演こそないものの、今が旬の実力派英米俳優達で固めている。またリンダ・パウエルは、湾岸戦争時に制服組トップである統合参謀本部議長で、ブッシュ政権で国務長官を務めたコリン・パウエルの実の娘(顔もよく似ている)。

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監督/脚本のスコット・Z・バーンズは、演出より脚本家として知られており、来年公開予定の『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』の脚本も担当している。また、『インフォーマント!』や『コンテイジョン』などスティーヴン・ソダーバーグ監督作品の脚本を担当することも多く、本作品の製作にもソダーバーグが名を連ねている。

『ゼロ・ダーク・サーティ』のようなフィクション娯楽作品ではないので、アクションも無ければ主人公が命の危機にさらされるわけでもない。言ってみれば、公僕としての務めを果たそうとする、ある男の物語である。

感謝祭翌日に配信開始ということからも、amazonがかなり力を入れていることが伺える。映画祭でワールド・プレミア上映されてすぐに、アマゾン・ストゥディオスが配給権を獲得したが、プライム・ヴィデオでの配信に先立ち、わざわざ米国内で劇場公開しており、これはアカデミー賞のノミネート条件を満たすためだと思われる。アカデミー作品賞にノミネートされる可能性は高いだろう。

(2020/01/13追記)
残念ながらアカデミー賞のノミネートは無かったようです。作品賞以外でも脚本賞のノミネートもあるかと予想していましたが。第85回アカデミー賞に『ゼロ・ダーク・サーティ』が5部門でノミネートされた際(受賞したのは音響編集賞のみ)、オバマ再選支援だとか、いやCIAのプロパガンダ映画だとか、政治的論争に巻き込まれた苦い記憶から、本作品は最初からアカデミー賞にシャットアウトされたのではないかという見方があるようです。


★★★★★

2019年11月29日に日本でレビュー済み

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