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『トゥループ・ゼロ〜夜空に恋したガールスカウト〜』(2019)   『がんばれ!ベアーズ』以来の感動コメディの傑作

日本ではキッズ向け映画と誤解されてしまいそうだが、女の子版『スタンド・バイ・ミー』(1986)といったところの、むしろ大人向け映画(お子さまが観ても問題は無いと思うが、理解できるか、楽しめるかは別)。

主演のマッケナ・グレイスは、『gifted/ギフテッド』(2017)の主演、同年の『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』ではトーニャ・ハーディングの子供時代を演じ、今アメリカで一番注目の子役とのこと。 なるほど、凄い演技をする。彼女はテイタム・オニールの再来じゃないかと思う。

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教師役のアリスン・ジャネイは『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』でトーニャの母親を演じていたので、グレイスとは再共演になる。ジャネイも現代アメリカ女優ではトップ・クラスの演技派だ。ヴァイオラ・デイヴィスもアメリカの黒人女優ではトップの演技力だろう。お子様も視聴できるように汚い言葉はギリギリ使わない。
このくらい実力派女優陣でないと、子役たちに食われてしまうし、実際、大人の男優達は子役たちに押され気味だ(ジム・ガフィガンとマイク・エップスはスタンダップ・コメディアン)。

普遍的なテーマのコメディであり、お子さまが観ても大丈夫だとは思うが、どちらかというと大人向けであり、主人公達と同じ1970年前後に生まれた世代が対象なのだろう。喫煙シーンも多い。
雰囲気がジョージアというより、ルイジアナかミシシッピ辺りのように感じたが、やはり撮影はルイジアナだったようだ。発音は南部訛りでなく普通のアメリカ英語だ。また、実際には70年代のジョージアでは酷い人種差別があっただろう。
主人公の父の友人ドウェインはヴェトナム帰還兵と思われる。おそらく、主人公の父もヴェトナム帰還兵で除隊後に進学して弁護士資格を取った苦労人ということなのだろう。ジョージアやお隣のノース・カロライナ辺りは、現在でも軍人や退役軍人が多い土地柄である。
これを、お下品方向に目いっぱい振ればダニー・マクブライド主演の『バイス・プリンシパルズ』『ザ・フット・フィスト・ウェイ』みたいになるのだろう。『バイス・プリンシパルズ』の準レギュだったエディ・パターソンも出演している。また『バイス・プリンシパルズ』も南部であるサウス・カロライナが舞台だ。

シェイク・シュガーリーなどスコア(音楽)も良い。リトル・グリーン・バッグは言うまでもなく『レザボア・ドッグス』のオマージュ。デヴィッド・ボウイは3曲も使われている。

80年代の名作『グーニーズ』も『スタンド・バイ・ミー』も主人公とその友達は白人少年だけだった。『E.T.』と『がんばれ!ベアーズ』は女の子も一人いたが、基本的には白人少年達のお話だった(ベアーズはメキシコ系の少年もいた)。考えてみれば、今まで女の子たちの冒険映画はあまりにも少なかったのではなか?。そんな疑問に対して、イギリス人女性二人組の監督とアメリカ人女性の脚本家が出して答えが本作品とも言えるだろう。

子供たちは最後に自信や勇気や友情を手に入れる、いや自分に欠けてると思っていただけで、本当は最初から持っていたのかもしれない、という『オズの魔法使』的なお話でもあった。
あの場面は「ヴィクトリア女王のフィンガーボウル」のオマージュなのかな?

★★★★★

2020年1月17日に日本でレビュー済み

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