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『トランス・ワールド』(2011)    金庫はnowhere(実在しない場所、どこか分からない所)への入り口?

(物語の核心と結末に関する記述あり)
いろいろな映画やTVドラマの影響が感じられるが、全体としては『素晴らしき哉、人生!』や『天使のくれた時間』の逆ヴァージョンといったところだろう。サマンサが娘を出産して命を落とすというのは『スウィッチ/素敵な彼女?』の影響が伺える。終盤で感じたのはドナルド・P・ベリサリオ製作の 『タイムマシーンにお願い 』のオマージュ。
『ドニー・ダーコ』の主人公は、ガールフレンドが殺されない世界に戻すために自らは事故で死ぬことを選ぶし、『素晴らしき哉、人生!』では、主人公が「生まれていなかった」場合の世界を天使に見せられる。本作品では、トムが子供時代に虐待され最後は自殺という悲劇を回避できたが、生まれこない?という皮肉な結末となっている(トムの誕生日は1985年12月12日、エンディングの花束を包んでいた新聞が1985年10月10日発行なのだが、妊娠後期には見えないので)。
アメリカでは製作費200万ドル以下が低予算映画、40万ドル以下はマイクロ予算と言うそうで、本作品は製作費50万ドル、かろうじてマイクロではないが、超低予算映画と言ってもいいくらいなのだろうが、脚本が手堅く、よくあるスティーヴン・キングものみたいに、広げるだけ広げて…とならずにすんでいる。温度計が ℉でなく℃(最初カナダなのか?と思ってしまった)、マッチ、車、服装など、伏線もちゃんと張ってあるから、裏切られた感じがしない。序盤でトムが持っていた新聞は2011年11月21日発行だが、すぐ火種にされるのでサマンサは気が付かない。クルクル回るメリーゴーラウンドのおもちゃは『インセプション』、ダウン・ヴェストはバック・トゥ・ザ・フューチャーのオマージュだろうか?
キャサリン・ウォーターストンは『ロー&オーダー』で知られるサム・ウォーターストンの娘で、確かに顔が似ている。

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キャサリン・ウォーターストン、こうみえて身長が180 cmあり、スコット・イーストウッド(クリント・イーストウッドの息子)とほぼ同じ背丈である。

サラ・パクストンは、HBOドラマ『ビッグ・ラブ』のビル・パクストンの遠戚(親子と勘違いしている人がいるが、親子ではないので、べつに似ていない)。

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〈金庫の意味〉
金庫のダイアル、メリーゴーラウンドのおもちゃ、 周波数表示が円いラジオなどは「ぐるぐる回る、循環する、回帰する」といった意味の象徴だろう。最初も最後も、金庫を開ける前に発砲しているようなので(金庫を開けた時の衝撃音?とも取れなくはないが)、金庫の中身は意味が無いようにも思える。店員が、『天使がくれた時間』の黒人青年キャッシュ(実は天使?)の役回りなのだろう。また、誰かの人生を変えるのが目的ではなく、店員が殺されると、殺されない世界に戻す作用が働くとも考えれれる。いずれにせよ、金庫を開けろと言うジョディに店員が"you don't even care that you're going nowhere."(行き場が無いのに気にもしてないんだろ)と言うのは興味深い(本作品の原題はEnter Nowhere)。やはり金庫がnowhere(実在しない場所、どこか分からない所)への入り口なのだろうか?

2019年5月24日に日本でレビュー済み

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