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『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)   『オズの魔法使』以来のファンタジー・アドヴェンチャー大作

アクション・シーンは『駅馬車』だし、『七人の侍』の明らかなオマージュ(マックスがブレット・ファーマーを倒して奪った銃を持ち帰るシーンや、シャーリーズ・セロンの丸刈りと決戦の前に額を黒く塗る、など)もあるが、監督/脚本のジョージ・ミラー本人がジョン・フォードや黒澤明の影響を認めているので、今更指摘するほどのことでもないだろう。また、中盤まではスタインベックの『怒りの葡萄』でもある。
しかし私は『オズの魔法使』の影響を感じずにはいられない。いや、翻案と言っても過言ではないのだ。


【以下結末に関する記述あり】
・フュリオサがめざす「緑の地」は言うまでもなく「エメラルドの都」だ。しかし行き着いたそこには、もはや彼女の望むものは存在しなかったのは『オズの魔法使』と全く同じだ。
・ニュークスは、心がほしい「ブリキ男」。なぜ、口に銀色のスプレーを吹き付けられて喜ぶのか不思議に思う人は『オズの魔法使』を観てほしい。口に油を差してもらって喜ぶブリキ男のオマージュだからだ。

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・ワイヴス(妻たち)は勇気が欲しい「ライオン」。
・ジョーは言うまでもなく「西の悪い魔女」である。
・砂嵐は当然、竜巻のオマージュ。
・モーターサイクルの女性たちの中にKeeper of the Seedsという女性がいるのだが、これを「タネを持つ者」と訳したのではピンとこない。しかし、「タネを守る者」と訳せば、scarecrow(カカシ)のことだとわかる。
・モータサイクルで塩湖を渡った先は、「虹の彼方の何処か」。ドロシーは「虹の彼方」にある、心配事などない場所を夢見ながらも、そこに行くことはできないのは分っている。フュリオサも本当は160日間も走り続けられるとは思っていないだろう。
・エンディングの、ジョーが死んだと喜ぶ民衆は、東の悪い魔女が死んだと喜ぶマンチキンたち。フュリオサを新しい指導者として迎える砦のジョーの手下たちは、独裁者だった西の魔女を殺したドロシーを称える、魔女の城の兵士たち。

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