やうやう使いにくくなりゆくDiscogs

Discogsとは、現物主義極まるウェブサイトだ。幾人もの有志によって、世界中の歌手やミュージシャンが発表したアルバムやシングルの類を網羅している。少しでも気になる名前があれば、Discogsで調べると間違いなく出てくる。アメリカで運営されているウェブサイトだから、日本の歌手のディスコグラフィーは完璧ではない場合が多いが、明日寿命を迎えるサイトでもないから今後もっと充実してゆくのだろう。私はDiscogsの世話になり続けている。これがあるから私の盤集め(CDやレコード蒐集)は捗っているのだ。

なかでも凄いと思うのは、一つのアルバムでも世界各国から発売された盤の情報が揃っていることだ。アジア、アフリカ、南アメリカなど、普通に生きていたら出会わないはずのレコードですら簡単に見ることができる。情報だけでなく、写真まで掲載されているのだから証拠として確実だ。つまりそのレコードを持っていて投稿した人が居たというころであり、世界のレコード蒐集家はまともではない。

そんなDiscogsにも欠点はある。どこのウェブサイトでも同じだが、いきなりリニューアルというものだ。アマゾンでもYouTubeでも大胆な変化があり、私などは前の方が良かったのにと不満をぶつけながらも、だったら使ってやらないと決め込むほどの意志もないから、結局のところ恩恵に与っている。最初は慣れなくても使い続ければ気にならなくなるのが常だから、ウェブサイトにとってはユーザーからのクレームは覚悟の上であって、じきに鎮火するものと思っているのだろう。だからDiscogsも良かれと思って刷新しているのだろう。こうして私は最初は使いづらいと騒ぎつつも次第に収まるかというと、そうではない。Discogsは2012年辺りが一番使いやすかったと未だに思う。

便利なようで不便なサムネイル

例えば、先にも書いた一つのアルバムの世界各国から発売された情報欄だ。かつてのDiscogsでは、以下のように表示されていた。

2014年時点のビートルズ「Please Please Me」のページ(Internet Archiveより)
https://web.archive.org/web/20141018135842/https://www.discogs.com/master/45362

当然ながらアルバムの題名が左にあり、それがレコード(LP)なのかCDなのかといった情報がある。続いてレーベル、品番、国、年の情報が揃っている。このような情報が下へ下へと続いてゆく(種類が多ければおおいほどページは長くなる)。我々は気になる盤を手あたり次第に見ることができる。私は何か欲しいCDがある時、Discogsから品番やバーコードを集めて、それらをAmazonで検索してどれが一番安価で売られているかといった比較をしていた。

さて、今のDiscogsでは以下のように表示される

https://www.discogs.com/ja/master/45362-The-Beatles-Please-Please-Me

見ての通り、それぞれの盤の画像が表示されるようになった。これは便利になったと言えるのではないか。私は最初そう思ったが、すぐにこれが使いづらいものであることに気づく。私は先程、「種類が多ければおおいほどページは長くなる」と書いた。ビートルズのように人気があるバンドとなれば、一枚のアルバムが各国で何度も発売されている。仮に一つの国に限定しても再発は多い。今のDiscogsで何百もの種類を網羅しようとなると、いくらスクロールしても終ることのない長大なページができあがる。
一応Discogsは、ページが長くなりすぎることの対処をしている。

このように途中までしか表示せず、見たければ「Show all 789 versions」をクリックして展開させたまえというのだ。それならとクリックすると、ロードする時間が必要だ。パソコンの調子が悪ければ大変なことになる。ちなみに今、ビートルズのPlease Please Meのページで「Show all 789 versions」をクリックして待ち続けているのだが、未だに表示されていない。

私は可能な限りCDで入手したいと思うから、リストを古い順ではなく新しい順にしている。ご存知の通り、レコードよりもCDの方が後に登場した媒体だからだ。Discogsは新しい順に表示することについては迅速な対応をしてくれるので助かっている。ということは、今やDiscogsでは最も古い部類と最も新しい部類の盤が表示されやすいだけで、真ん中あたりの盤は隠されているも同然の状態になっている。挟み撃ちだ。

そもそも見えない

もはや去年のいつだったか思い出せないのだが、下半期のいつかのことだ。アーティストのページを閲覧しても、肝心のディスコグラフィーが表示されなくなった。

待てど暮らせど

常にぐるぐるとロードをしているだけで、いくら待っても解決しない。これは使いづらいとかいう話ではない。最初はちょっと調子が悪いだけだと思って、明日には元通りになっているだろうと思っていたのだが、今年の三月になっても事態は変っていない。では今日までどうしてきたのかというと、例えば「the beatles please please me discogs」という語句をGoogleで検索することで何とかしてきた。ディスコグラフィーのページが永久に眠っているだけで、アルバムのページそのものが消えた訳ではないのだ。しかしこれはすべてを解決したことにはならない。世の中には、私の知らない歌手やグループが無数にあるのであって、知らないアルバムを調べることなど不可能だ。他の手段を使えば手掛りは掴める。しかしDiscogsという、効率よく情報が得られた場所の使用が制限されることの損失は大きい。

先ほど、Discogsでは各アルバムの写真まで掲載されていると書いた。「More images」をクリックすることで、詳細なイメージが大きく表示される。

More imagesをクリックすると……
普通はこのようになる

しかし最近のDiscogsは、「More images」をクリックしても何も出てこない。正確には一瞬だけ表示されただけであとは何事も起らない。F5キーを押すと「さっきも表示してましたが?」といった様子で表示してくる。どうもDiscogsは「やってる」感を出すのが上手いだけの無能サイトになっている可能性がある。これもかなりの末期症状だ。という訳で私はとにかく困惑していた。

解決篇

Firefoxで閲覧したら普通に見ることができた。あまりにあっけない。

Firefoxで閲覧した場合

実は今の今までChromeで閲覧していたのだ。Firefoxなら見ることができる説は以前から知っていることではあった。まず知り合いのパソコンでインストールされていたFirefoxでDiscogsを閲覧すると、何事もなく使えたという経験があった。また、Twitterでも私と同様の状況になっている人がいた。

私が今日までFirefoxを導入しなかったのは一応理由がある。五年前に使っていたパソコンでは最初Firefoxを選んでいたのだが、ある時信じられないほど固まって何の操作もできなくなるという事態が起り、それからFirefoxに不信感を抱いてしまったのだ。FirefoxからChromeに乗り替えたところ普通に使えるようになったので、その後パソコンを替えてもブラウザは同じだった。今回ようやくFirefoxに戻れたことで、古巣に帰った気分になっている。前にTwitterで若干交流のある人が「みんなはどのブラウザを使っているのか」というアンケートをとっており、結果はChromeの圧倒的勝利だった。私はいつも狭い道を選びたがる人間だから、Chromeが王道であることを知って今すぐブラウザを替えたくなった。しかし今日までChromeを使い続けていたのは、それだけ馴染んでいたからに他ならない。色んなところにログインしているのだし、ブックマークに入れているウェブサイトも多数あるしで、今更引っ越しができるかと思っていたのだ。こうしてFirefoxに乗り移って思うのは、人はどうしようもない状況にならない限りいつまでも行動しないという結論だ。私は反省している。前にFirefoxからChromeに乗り替えた時もそうだ。今回のFirefox凱旋も、Discogsが使えなくなったからだ。

犯人はChrome?

欄干公式見解は四週連続の投稿だ。今日まで文章を書くには相当の苦労があった。それは構想をまとめることの困難でもあるのだが、もっと根本的な話で、とにかく入力が上手くいかないのだ。書いている途中で、「あの部分をこう直したいな」と思ってカーソルを当てても言うことをきかない。いったん下書き保存して、もう一度書こうと思っても、キャレット(点滅する縦棒)が書き出しのところから動かない。矢印キーを押し続けると激しい抵抗を見せながら少しずつ動いてゆく、という乱闘をしなければならない。これがあまりにも面倒だから、私はあらかじめメモ帳に書いてから、コピー&ペーストする作業をしていた。これも面倒だ。

さらなる問題はURLが埋め込めないことだ。特定の文字をドラッグすると色々なメニューが表示されて、その中に埋め込み機能があるのだが、それをクリックしてもどうにもならないのだ。

問題解決のために少し調べたが、「ブラウザを替えると良い」というほとんど見放されているも同然の手段を勧められるだけだった。しかしこれは事実だった。今では自由あちこち埋め込むことができる。これまたFirefoxに乗り替えたからだ。あまりに話が簡単すぎないか。
(ちなみに私はnoteにログインするためのパスワードをど忘れして、そろそろログイン不可になるのではないかというくらい試行錯誤したが、真相はnoteとTwitterを連携していただけだったのでパスワードは不要だった。ちょっとした馬鹿だった。)

「note 書けない」と検索しても、自己啓発じみた記事しかヒットしなかったので、これはnoteによる陰謀ではないかと疑っていたが、こんなことで「真実」に目覚める必要はなかった。

今のところネタには困ってない

ブラウザを替えただけでDiscogsとnoteというこれからも利用するウェブサイトの使いやすさが表れるとなると、いよいよ私はChromeを使う理由がなくなる。これも私にとっては重大な変化だ。それにしてもChromeはそんなに使えないブラウザだったのだろうか。そもそも私のパソコンが終っている可能性も捨てきれない。この検証をする日はまだ遠い。

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