衝撃...!ロベイシ・ラミレス来日決定!
なかなか時間が取れず、随分久々のnoteになってしまった。
4/27、衝撃のニュースが飛び込んできた。WBO世界フェザー級タイトルマッチ、ロベイシ・ラミレス(王者=キューバ) vs 清水聡(同12位=大橋)が決定したというのだ。しかも、7/25のスティーブン・フルトン vs 井上尚弥のセミ。
正直私は、当初発表されていたフルトン vs 井上の前座のラインナップは、そのメインの規模を考えると少々、もとい、かなり物足りないなと感じてしまっていた。セミに予定されていた武居由樹(大橋) vs ロニー・バルドナド(フィリピン)や坂間叶夢(ワールドスポーツ) vs 堀川龍(三迫)のユース王座決定戦なども注目試合なのは間違いないのだが、やはりこの軽量級最大のメガマッチを彩るアペタイザーとしては寂しいと言わざるを得なかったと思う。
そんな中、先日の日本フェザー級1位佐川遼 vs 2位松本圭佑(大橋)の同級王座決定戦の後、4位のリドワン・オイコラ(ナイジェリア=平仲)が、勝者である松本との日本タイトルマッチがフルトン vs 井上のアンダーカードに組み込まれる予定であることを、自身のSNSで表明。(オイコラは5月に調整試合を挟むことが決まっており、それをクリアした後に正式発表があるのではと予想している)
日本王座戦が加わるなら、大満足とまではいかないものの、アンダーカードの物足りなさはかなり薄れるなあ…などと少しばかり嬉しくなっていた私は、そんな自分をまるで嘲笑うかの如く突然飛び込んできたロベイシ・ラミレス vs 清水聡の報にぶったまげてしまった。その後の大歓喜の前に、1度本当に現実なのかを確認してしまったほどだ。
今時どんな試合でも、ほぼ必ず正式発表前に海外メディア等からのリーク情報が目に入ってしまう時代だが、今回のラミレス vs 清水は本当に全くの寝耳に水だったため、衝撃が何倍にも膨れ上がったのだ。世界戦にも関わらず、これほど発表まで何の前触れもなかった試合は、私がTwitterを始めた2019年以来ほとんど記憶にない。Twitterを見て、あれほど絵に描いたような二度見をしたのはいつぶりだろうか…。
ロベイシ・ラミレスというのは、ご存知の方も多いとは思うが、2012年ロンドン五輪、2016年リオデジャネイロ五輪の2大会連続で金メダル(それぞれフライ級とバンタム級)を獲得し、階級は違えど、五輪2連覇の快挙を成し遂げたキューバのスター選手だ。特にリオ五輪に関しては、準決勝でムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)、決勝であのシャクール・スティーブンソン(アメリカ)を連続で破っての金なのだから途轍もない。
そんな彼は、2018年、ホエル・カサマヨール、ユリオルキス・ガンボア、ギレルモ・リゴンドー、エリスランディ・ララといった、トップアマからプロ入りを果たした同胞の先輩たちと同じく、トレーニングキャンプ中にチームを抜け出し、亡命という形でプロを目指す。
そして2019年、無事にトップランクとの契約に至ると、鳴り物入りでプロデビュー。当時、一足先にプロ入りしていたシャクール・スティーブンソンが圧倒的な才能でランキングを駆け上がっていたことや、同じ五輪2連覇を経てプロ入りしたワシル・ロマチェンコ(ウクライナ)が、既にPFP1位に輝くなどプロで大成功を収めていたこともあり、ラミレスのプロデビュー戦は一際大注目となった。
だが、結果は無名の相手にダウンを奪われてのまさかの判定負け。誰しもが予想だにしなかった結末は、当然ながら大きな衝撃を以て受け入れられた。私も含め、ロベイシ・ラミレスはもしやプロでは通用しないのか…?という考えが頭をよぎってしまった方も少なくないのではないか。アマで成功を収めた選手がそのままプロでも結果を残すことは確かに多いが、とはいえアマチュアボクシングとプロボクシングはもはや別競技なのも事実であり、アマでの実績とプロでの実績が比例しないことも決して珍しくはない。
だが、今となっては、結果的にそんな嫌な予感は杞憂に終わったと言って良い。
デビュー戦の敗北を受け、ラミレスは、井岡一翔(志成)や同じキューバのヨルデニス・ウガス、先述のガンボアやララなど多くの一流ボクサーを手掛けてきたキューバ人の名匠、イスマエル・サラスに師事。トップアマを何人もトッププロへと誘ってきたサラス氏と組んだ甲斐もあってか、徐々にプロに適応してきた彼は、プロ2戦目以降は次第に本来の実力を発揮し始め、デビュー戦で敗れた相手にもその後しっかりリベンジを果たすなど、危なげなく白星を重ねた。そして4/2、元Sバンタム級王者のアイザック・ドッベイ(ガーナ)との王座決定戦に勝利し、プロ13戦目にして遂に悲願の世界王座を獲得した。
つまりラミレスは、プロでは現状まだ王者となって1ヶ月も経っていない“新米王者”であり、今回の試合は彼にとって絶対に落とせない初防衛戦である。その大事な一戦で試合間隔も4ヶ月足らずにも関わらず、王者として敵地日本へと乗り込んでくれるラミレスには心から感謝したい。おかげで彼のようなビッグネームの試合を日本で見られるのだから、こんなに喜ばしいことはない。
しかも、相手は同じロンドン五輪メダリストである清水聡。清水の世界戦は恐らく多くの日本人ファンが長らく待ち望んでいたものであり、それがこんな世界的に大注目を集めるメガイベントで、それもロベイシ・ラミレスという大物に挑戦という形で叶うのだ。ますますボクシングファン垂涎の興行になったと言えよう。
森武蔵(志成)との世界ランカー対決を制し、一時期は世界ランクの上位にも名を連ねながらなかなかチャンスに恵まれなかった清水の待望の一戦だけに、是非とも頑張って欲しいが、日本人の為にわざわざ正式発表のツイートを日本語でしてくれたり、リプライ1つ1つに丁寧に返信してくれるラミレスも非常に応援したくなる好漢だ。私としては、どちらが勝っても嬉しいし、どちらが負けても悲しい、そんな試合になる。ファンとして辛い瞬間ではあるが、それこそがボクシングの魅力でもある。
今回ラミレスの参戦が決まった背景には、恐らくだがメインを飾る井上がラミレスと同じトップランク所属だということも関係していると思われる。フルトンがトップランクと敵対するPBCの選手だということもあり、一部では、今回の興行にトップランクは関わっていないのでは…なんてことも密かに囁かれていたが、それを真っ向から否定するこのビッグサプライズには素直に諸手を上げるほかない。ロベイシ・ラミレスを貸し出してくれてありがとう。
また、今回のこのマッチメークには、将来的な井上尚弥 vs ロベイシ・ラミレスの布石を打ちたいというトップランクの思惑もあるのではないかという見立てもある。ラミレスは身長165cmとフェザー級にしては小柄で、年齢も今年で30歳。ここからどんどん階級を上げて複数階級制覇、というのはあまり考えづらい選手だ。加えて、彼が持っている王座はフェザー級のWBO。井上がフルトンに勝てば手に入る王座もWBO。つまり、井上が数年後、Sバンタムを制圧してフェザーに行くようなことになれば、同団体の王者であるラミレスとの対戦は大いにあり得る話だ。無論、その時にラミレスが王者でい続けていればの話だが。
実際、井上尚弥のラスボスになるのがロベイシ・ラミレスなのではないかという、(多少願望込みの)未来予想図を描くファンも少なくない。私自身もその1人だ。たとえそこまでは思っていなくとも、アマチュアボクシングを制したキューバの至宝と日本のモンスターの対戦を見たくない人は多分いないはずだ。あまりにも気が早すぎるが、もし実現すれば、真っ向から世界最高峰のテクニックをぶつけ合う至高の技術戦になるだろう。
だが、そのためにはお互いまずは目の前の一戦だ。
井上の未来のライバル候補がその力を見せつけるのか、それとも変則のハードヒッター清水が遂に掴んだチャンスをモノにするのか。もし3月に37歳となった清水が勝てば、長谷川穂積の持つ日本人男子最年長世界王座奪取記録の35歳9ヶ月を大幅に更新することになる。同じロンドン五輪のメダリストで、アマ時代からの友人である村田諒太には大きく遅れを取ってしまったが、奇しくもその村田が引退を発表した同年にやって来た世界初挑戦。日の目を浴びる同級生を傍目に、コツコツ磨き続けてきたその自慢のダイヤモンドレフトの輝きを見せつける時がとうとうやってきた。
目が離せない激アツの一戦。メインを盛り立てる最高のセミとなること間違いなしだ。
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