7ヶ月間のクラウドワークス体験で見えた問題点と未来
2020年の6月から12月までの7ヶ月間、クラウドワークスでタスク業務をこなしながらデータ採集を行いました。
今回はそのまとめのレポートとなります。
★7ヶ月間の収益結果
■活動条件
・エンジニアではなく一般人
・業務はタスクとネーミングコンペのみ
・時間はできるだけ自然体の夜メイン
■収益
・総額13946円
・月平均1992円
・日平均65円(214日)
★データ採集を始めた理由
近年、副業解禁の流れが加速していますが、地方都市では県都といえども副業を認める企業は少ないのが実情です。
また、仮に許可が出たとしても、副業に合う仕事は簡単には見つかりません。
こういう状況の中、クラウドソーシングが地方の人間の副業として、どの程度の可能性を秘めているのかを知るために始めました。
結論はタスク業務では上記の金額が示す通りまるで稼げません。
より稼ぐのなら、契約を結んでから業務に当たるプロジェクト形式がありますが、「日中連絡が取れる方」という条件が記載されていることも多く、副業としては使い辛いのが実情です。
★クライアントの問題点
クラウドソーシングのクライアントの最大の目的はコストダウンですが、それが社会常識から逸脱したり、法令違反に繋がっているケースがあります。
■著作権に関する問題点
webライターを例に取ると、ほぼ全ての契約条件に著作権をクライアントに譲渡することが明記されています。
ところが報酬には譲渡金額が記されていません。報酬は文字単価で記載されていますが、この中に著作権の譲渡料が含まれているとすると、実際の文字単価は表記よりも低くなるので、虚偽記載にあたります。
この点が改善されないのは、恐らく、ほぼ全てのクライアントが著作権は無償譲渡という形で発注しているからでしょう。
独占禁止法には「優越的地位の濫用」があります。
「自己の取引上の地位が相手方に優越している一方の当事者が,取引の相手方に対し,その地位を利用して,正常な商慣習に照らし不当に不利益を与える行為」を指します。
「著作権の無償譲渡」が一般的な商慣習から外れていることは明白であり、優越的地位の濫用に当たる可能性は極めて高いでしょう。
(※独禁法はフリーランスにも適用されます)
解決策は著作権譲渡料を支払うことだけですが、相場がありません。
ですが、納品物が莫大な富を生む可能性が低いことを考えれば、長文で数百円程度でいいのではないかと思います。
■コストダウン意識の暴走による低単価
クラウドソーシングが登場する以前、広域を対象にコンペディションを行う場合は時に莫大な広告料を払って告知する必要がありました。
15年以上前に見た動物キャラクター制作のコンペを一例にあげますとー
●広告:新聞テレビ欄下で縦10㎝・横最大程度で告知されていた
金額は全国版なら最低でも100万円以上(多分)
●作品:構図が正面のものを1点
●報酬:著作権譲渡料込みで30万円
クラウドソーシングを利用すれば高い広告費をかけなくても、この程度の作品であれば十分な数を集めることができます。
過去に比べて、少なくとも100万円以上のコストダウンが可能な時代です。
問題は報酬の30万円もコストダウンの対象になってしまうことです。
クラウドワークスなら、上記の作品の報酬は著作権譲渡料込みで10万円を切ります(笑)
発注関連費用が数倍高い時代より報酬が低いのでは、コストダウン意識の暴走と言われても仕方ないでしょう。
■クライアントの正体
某媒体である経営者の方がクラウドソーシングについて語っている記事を読んだことがあります。
内容はつまるところ「いかに人間を安く使い倒せるか」といったものです。
本音なんでしょう。ですがメディアで情報発信をする場合、たとえ嘘でも自社と社会の利益を天秤にかけて導き出された「バランスの取れた利益」について語るものです(笑)
例えば「クラウドソーシングはコストダウンに有効だが(本音)、低単価については市場の健全な発展のために考えなければいけない(嘘)」といった具合です。
やはりクライアントの正体は、この程度の配慮もできない人達なのでしょうか?
★クライアントの問題点とSNSの問題点の共通項
近年、SNS上の誹謗中傷が大きな問題となっていますが、これとクライアントの問題点の根っこは同じだと考えています。
それは「面と向かっていたら絶対に言わないことをネット上では言ってしまう」という点です。
実際に対面して仕事の契約を行うとき、著作権を無償で譲渡するように迫り、その上、相場よりも大幅に低い報酬を提示することができるでしょうか?
ほとんどの人ができないでしょう。いささか反社会的組織のニオイを感じる行為ですし。
でもネット上だけのやり取りになるとやってしまう。誹謗中傷も同じです。
自分以外の人間も自尊心を持っていることを忘れないで欲しいですね。
★単価の落としどころ
クラウドソーシングの健全な発展のためには、単価の適正化は避けて通れません。
困難な作業ですが、クライアントにとっては企業に依頼するよりも安く、ワーカーも納得がいく金額を探りながら決めるしかありません。
繰り返しになりますが、クライアントはクラウドソーシングを使えば、報酬は据え置きでも、全体的にはコストダウンやコストパフォーマンス向上に成功していることを忘れないで頂けたらと思います。
★プラットフォーマーの責任
■門戸開放中
低単価の責任はクライアントだけでなく、プラットオーマ―にも責任がありますが、まともな対応をしていません。
これはクラウドソーシングの現状が、まだクライアントに低価格でサービスを利用してもらい、リピーターを増やしていく門戸開放状態だからでしょう。
■低単価への制限と単価適正化のジレンマ
急激に単価を上げることは不可能ですが、低単価案件に機能制限を設けることでワーカー側のコスパを上げることは可能です。
例えば5円アンケートの回答項目は選択式だけで記述式は利用不可とする。
記述式回答は単価20円から利用できるといった形です。
これなら短期間で実行可能ですし、単価適正化にも寄与すると思います。
単価適正化にはジレンマもあります。
単価が上がればプラットフォーマ―への手数料も上がるので、彼らは単価を上げたいのが本音だと思います。
しかし、自社だけが上げるとクライアントが別のプラットッフォームに移動してしまう可能性が高く、それに伴いワーカーも移動してしまうというジレンマが発生してしまいます。
ですから、対策は漸進的に成らざるを得ません。
★クラウドソーシングの未来
現状は問題点が目立ちますが、便利なことは確かであり、良い方向に進む可能性もあると思います。
それにはプラットフォーマ―、クライアント、ワーカーの三者が賢明なる妥協を行う必要性があります。
もし、現状のクライアント有利のままクラウドソーシングが広がっていくと、最低賃金がないので奴隷労働市場になる危険性があり、その兆候はハッキリと表れています。
今、日本のクラウドソーシングの未来が明るいものになるかどうかの正念場を迎えていると見て間違いないでしょう。
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