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澤田大樹記者×武田砂鉄「森喜朗会見について」 TBSラジオ『アシタノカレッジ』文字起こし

2021年2月5日(金)放送の『アシタノカレッジ』で、森喜朗さんの件について武田砂鉄さんが澤田大樹さんに深堀りして聞いています。

1.まずは森発言を振り返る

武田砂鉄さん(以下、砂鉄):会見での澤田さんへの対応というのは非常にここまで注目されたわけですけども、どういうことだったのかというところからですね、しっかりと振り返って行きたいと思います。
澤田大樹記者(以下、澤田):そうですね。しっかりイチから行きましょうということなんですけども。森さんが今週水曜日ですけれども、日本オリンピック委員会の臨時評議員会というのがあって、そこであいさつしたと。その中で発言したのが、テレビがあるからやりにくいが女性理事4割は文科省がうるさく言うんでねと。女性理事を4割以上にしましょうという目標について言及したんですね。
砂鉄:臨時評議会というのはそこにカメラとか記者たちも入ってるということですか。
澤田:オンラインだったというふうに聞いてます。
砂鉄:それをライブで見ているメディアの人たちが言ったということですね。
澤田:なのでその時の音声とか映像とか実は各社どこも報じてないと思うんですね。
砂鉄:そうかそうか。音は無いけれど全文は載ってるという状況ですよね。
澤田:そういうタイプの取材だったということですね。で、その後に
「女性がたくさん入ってる理事会は時間がかかります。ラグビー協会は今までの倍ぐらい時間がかかる。女性が10人位いるのか、今は5人か。女性は優れており競争意識が強い。誰か一人が手を挙げて言われると自分も言わないといけないと思うんでしょうね。それで皆さん発言されてる」
と語りました。さらに
「あまり新聞に漏れると大変だなと。悪口を言ったと書かれると。女性を増やしていくのは発言の時間をある程度規制を促しておかないと中々終わらないので困ると。言っておられると。誰が言ったかは言わないけれど」
と発言して
「私どもの組織委員にも女性は何人いる、7人かな。みんなわきまえておられる」
などと発言しました。
この、わきまえてるというのは誰から見てなのかなとか、発言するなということなのかなとか、色んな疑問が今話した中からもたくさん出てくるんですけども。
砂鉄:これね、言葉が #わきまえない女 っていう結構トレンド入りしてたりするわけですけどもね。このわきまえるっていう言葉は要するに上の者に忖度をしてくれている、そういう組織なんだと。そういう人たちがいるということをご自分でおっしゃっているということですね。
澤田:これ切り取っているとかよく言われるんですね。メディアが。
砂鉄:必ず言われますからね。
澤田:これ全文起し色んなところに載ってるので見て欲しいんですけど、見出しに立っている以上にひどいんです。見出し以上にひどいんでぜひ読んで下さいという話ですね。
私、質問した時「ちゃんと読んでから聞け」って言われたんですけど、もちろん全部読んでから聞いてますんで。全部読んで問題だと思ったんで聞いてるんです。
その結果ですね。これネットだけじゃなく、ネットでものすごく記事が出て拡散されて、ニューヨークタイムズとか海外メディアでもこれ問題視するような記事が広がって、それに焦ったのが官邸だったんですね。
砂鉄:やっぱり海外メディアに広がって行ったことに対する危機感、警戒感というのがあったと。
澤田:あともちろんオリンピックの組織委員会も危機感があって翌日の午前中だったと思いますけれども、急遽会見がセッティングされて事態の収束を図ったと。
武田:じゃあ海外メディアまで広がらなければ、森さんの会見は無くてもいいんじゃないかっていうくらいの頭があったかもしれない。だけどもここまで広がってしまうとこれは直接出て来てもらって、火消ししてもらうしかないとなったわけですね。
澤田:これはある意味早い対応ではあったかなと思いますね。
武田:だけどまあ、こういうしゃべり方をするってみなさんもう知ってるわけですよね。思い付きでポロポロ喋る。そしてそれが色んな火種を生んで来たっていう人に、翌日ライブで会見させるってこれリスクしかねえぞって、みな思ったと思うんですけどね。まあそれでもやらなくちゃならなかった。
澤田:やらないリスクの方が大きかったという判断したんでしょうね。で、私、会見あると昼くらいのニュースで分かったので場所を突き止めまして、というか組織委員会の建物に行ってですね。ちゃんと取材申請を出して行ったら、机とかイスが無くて。会見場とされる場所に。あ、これ会見じゃないなと。これ、ぶら下り取材っていういわゆる周りに記者たちが立って、立った人に対して質問していくというタイプの会見。大体1時間とかやらないわけですよ。森さん高齢なので、中央にイスも無かったので、これは本当に早めに切り上げたいんだなって分かった。

武田:
ちなみにこれまでに例えばね。さんざん首相の会見この1年ずっと見てますけども、誰それが入れる入れないっていうことを何となくみなさん知ってると思うんですが、今回のぶら下がりに対してはどういう条件で参加できる出来ないってあったんですか。
澤田:1社1人っていう制限があって、会場がそんなに広いスペースではなかったので、ちょっとした多目的室ぐらいの大きさだったので、そこに入れない社についてはオンラインで質問できますと。オンライン会見として見れますというしきりとなってました。
冒頭2時からだったんですけど、森さん
「昨日のJOC評議会での発言につきましてはオリンピックパラリンピックの精神に反する不適切な表現だったとこのように認識いたしております。そのためにまず深く反省しております。そして発言を致しました件につきましては撤回をしたい。それから不愉快をされた皆様にはお詫びを申し上げたい」と冒頭述べたと。
武田:ここはまあバッチリ用意されたペーパーを読んでる感が。
澤田:はいもちろん手元にペーパーがあってそれを読んだということですね。

2.質疑応答が始まる

澤田:この後、質疑応答になります。この後ネットとかニュース番組で色々あるんですけども、私の質問も取り上げられることも多くて、ちょっと言っておきたいのが、会見ていうのは記者と取材対象とのやり取りで成り立っていますよね。で、私以外の記者の皆さんの質問があって、私も質問しているんですね。
武田:澤田さんは最後の方の質問でしたけれども、それまでに何社かが質問して積み上げて行ってそこで触れられてない所とかプラスアルファで聞きたいっていうことを、澤田さんが絞ってそれを投げてるわけですよね。
澤田:質問って連なってるので、そこで出てきた答えなので、誰の質問がいいとか悪いとかけっこうネットで書かれてるんですけど、そんなことは全然ないと思うんです。文字起こしも見ていただけると分かるんですけど、みなさんちゃんと追及してるんですよ。なのでいい悪いはないっていう。
武田:その場で積み上げていった空気感とか、その場で発生したことによって何聞くか、まったく変わって来るわけですね。
澤田:実は私は最初にあまり当たりたくなくて。
砂鉄:なぜですか。
澤田:最初に聞きたいことってみんな聞いていくと思うんですね。その中からこぼれてくるところが多分あって、そこを聞きたいなっていうのがちょっとあって。森さんがどういう話し方をして来るのかなっていうのを見たかったというのもあって。
砂鉄:最初当たらない方法はあるんですか。下向くとか。
澤田:最初は幹事社が当たるので。オリンピック委員会の取材って基本的に都庁記者クラブの担当の人たちがいて、やってることが多くて、都庁記者クラブの人たちから大体当たっていくんですね。司会の人、組織委員会の人だったと思うんですけど。

澤田:日テレの記者がまず冒頭、女性記者でしたけれど、辞任する気はないのかと聞くと
「辞任する気はありません」と。
「みなさんが邪魔だというのであればおっしゃる通り老害が粗大ごみになったかもしれませんから。そしたら掃いてもらえばいいんじゃないですか」と答えた。
これを聞いて辞める気はないんだなとよく分かります。で続いて同じ記者からジェンダーバランスについて問われる中でどう説明して行くんですかと聞かれると
「私は組織委員会の理事会に出たわけじゃない。組織委員会の理事会と一緒にしておられる方。とくに外国はそれを一緒にされるかもしれないが、それはみなさんの報道の仕方だと思います」と報道を批判したと。
組織委員会じゃないからいいってことじゃないんですけど。
砂鉄:そのお立場としてこういう発言をするのはどうかと思ってるわけで、会議の性質を問うてる人はいないですよね。

澤田:
日刊ゲンダイの記者が矢継ぎ早に何問か聞いた後に、TBSテレビの女性記者が
「文科省がうるさいから女性登用の規定が定められているという認識なんですか」と。
つまりこれやらされてると思ってるんですかと遠回しに聞いてるんですよね。それについて森さんは
「数字にこだわって何名までにしなければならないというのは、ひとつの標準でしょうけれど、それにあんまりこだわって無理なことをなさらない方がいいなということを言いたかった」と。
これ何が自分が問題とされてるかということがまったく分かってないということが、この質問で分るんです。
砂鉄:そうね。そうね。

澤田:その後に私と同じ記者クラブ、国会のラジオとか地方局の記者クラブの民放クラブというのがあるんですけど、MBSの三澤記者が
「女性が話が長いと思っているんですか、森さん」って聞いたんですね。
そしたら
「女性の話は最近聞かないから分かりません」って言ったんですよ。
砂鉄:これもすごい発言ですね。
澤田:これすごい答えなんですよね。これ要するにこれ言った瞬間に私は、森さんは会見は謝っとけばいいんでしょって思ってるんだなって思ったんですよね。
砂鉄:謝ったっていう場を作って中身はどうでもいいから、こなしたっていうことだけを、つまり終わらせられればいいと。
澤田:という感じなのかなと思ったんです。

3.数ヶ月前の安倍元首相の取材

澤田:その後は私の質問になるんですけど、その前にどういう心構えでこの会見に臨んだかっていう話をちょっとしたいと思います。『アシタノカレッジ』、この番組をお聴きになってる方は分かると思うんですけど数か月前に別の元総理に一回怒られてるんですよ。
砂鉄:安倍さん!
澤田:安倍さんです。安倍さんに国会内で怒られたんですけど、ぶら下り取材の時に幹事社が質問した後にフリーが質問できる時間があるんですけど、すごい人が集まってた状態だったんで音がちょっと聞こえにくくて、幹事社が「各社さんひと言どうぞ」って言うと周りの他の社は質問していいという暗黙のルールがあって、各社さんどうぞって言って2秒ぐらいで安倍さん立ち去っちゃって。
砂鉄:例の俊敏な動きで後ろ振り返るやつね。
澤田:はい。あーやばい行かれちゃうと思って「質問は」って投げかけたら、体を向こうに向いたら質問はするなっていうようなこと言われて。
砂鉄:つまりその2秒の間に幹事社以外の人は質問が無かったから、もう質問ないと思って後ろ振り返ったのにまた記者は質問して来るんだと。
澤田:その時に準備してなかったんですね。自分の中でも質問を3問くらいしか準備してなくて、2の矢3の矢くらいまでしか準備してなくて。そこから5個6個調べておいて幹事社が質問した後で答えなかったところを質問しなければいけなかったのに準備してなくて十分な質問ができなかったという後悔が自分の中にあって。
砂鉄:なるほど。今回の澤田さんていうのは数か月前の安倍晋三さんからの怒られたということから来てるわけですね。
澤田:だから今回事前にたくさん準備しようと思ってですね。そこで頼ったのがTBSラジオの『Session』のパーソナリティの荻上チキさんなんですね。荻上さんと事前にやり取りをして、この発言ここが問題だよねっていう共有をいくつかしていて、2問位。さらに自分で考えた質問を2問位。あと会見で他の記者が質問している中で、あれ、これ答えてない、これ疑問だっていうところを継ぎ足して大体5、6問用意して質問したんですね。
砂鉄:まあこれ2時からの会見でしたから『Session』に合わせてるのかっていうくらい丁度いい時間に会見が開かれて。これが3時半、4時だったら話が変わってたなと。まあそれでチキさんと相談をして質問に臨んだと。

4.そして澤田記者の質疑応答

澤田:まず聞きたかったのは何で謝ってるのかっていうことを、ちゃんと冒頭言ってないので、何が問題だと思ってるんですかって。そしたら
「男女を区別したことです」って。
そうじゃないけどなと思いつつ。じゃ、オリンピック憲章に反してたことを問題だと冒頭で言ってたので、そういう人がトップで適任なんですかって聞いたりとか。
後はさっきの中で組織委員会の会長として理事会で発言したわけじゃないんだからっていうような発言をしてて、それっていいのっていう発言とか。それも他の社が質問したから思い付いた質問ですよね。
それから元々のわきまえるっていうのは、女性は発言を控える立場だと。それはわきまえろっていうことなのかということ。これチキさんと考えて当てた質問です。
それからもう一問当てたい、これもチキさんと考えたやつを当てたかったんですけど、司会者に止められた。
砂鉄:例の「面白おかしく言いたいだけだろ」というようなのが森さんから続いたっていうシーンですね。

5.この会見で森さんは何も言っていない

澤田:その後ハフポストの濵田さんが更問(さらとい)という重ねるように聞いていて。
「女性が多いと時間が長くなるという発言を誤解と表現したけど、これは誤った認識だったとうことなのか」と聞いたんですね。
そういう話を他の団体から聞いたのかと。出たのかと。いうふうなことを質問したところで囲みの取材が終わった。大体20分。
砂鉄:この20分間で森さんは何も言ってないというか。なぜ自分が謝っているのかというのも言っていないし、この憲章に反することを言っているということなのに、なぜ今の仕事を続けられるのかと言うそこら辺の整合性とか言い訳すらある意味出てないという感じではありましたけどねえ。
澤田:はい。でさっき冒頭言ったんですけど、これオンラインと現場。オンラインからも質問しますと言ったんですけど、森さん怒っちゃったんでオンラインの質問受けずに帰っちゃった。オンラインで質問したかった社は多分あると思うんです。
砂鉄:本当は幹事社、それ以外、オンラインという流れの予定だったかもしれないところが、もうそこで怒っちゃったから澤田さんの次のハフポストの方が最後の質問になって終わっちゃったと。20分ていうのはスタッフの方も想定しているより短かったのかもしれない。

6.会見で色々見えて来たもの

澤田:この会見で色々見えて来たなって思ってて、まず最初に女性記者たちが質問したんですね、都庁クラブの。彼女たちに対していきなりマスクを外させるっていう。
しかも名前を名乗った時に「よく分かっています」と。
あなたの顔は分かっているよ?それでも聞くんだね?というふうに取れる、圧をかけた感じにその場にいて感じたんです。
これ何かマンスプレイニングっぽいな、典型例だなっていう話をその後してたんですけど。男性が女性に上から目線で解説してあげるみたいな。
砂鉄:『説教したがる男たち』というね。レベッカ・ソルニットさんという方の本がありましたけれど。まさにあれの典型例という感じでしたね。
澤田:それでもう記者たちがどんどん食い下がって行ったんで、質問の途中で遮ったりとかして打ち切りになったなというのが今回の流れだったんですね。

砂鉄:澤田さんが会見を見てて、徐々に森さんの機嫌というのかイライラ度が高くなってるな、ある意味相手がイライラしてることを察知したらチャンスと言えばチャンスじゃないですか。本音だったり、誘発じゃなかったことを言ってもらうっていうのはチャンスだと思うんですけど、その感じは最初始まって10分15分位で感じてたっていうことですか。
澤田:そうですね。ただこれ割と全社の質問が割と追求型というか本当に問題点についてちゃんと聞いててだからこそ不満になって来て、たまたま私の質問の時に逆ギレ会見て書かれましたけど。
砂鉄:質問するタイミングがあったというか。やっぱり今の菅さんの会見だったり、安倍さんの会見なんかを見ていると更問も出来ないし、質問が1問、1問、1問で点と点と点でなるから、あまりそこでグルーブと言ったらいいのかな。記者たちと政府みたいな形で対峙できないという感覚ありますけど。今回は澤田さんが振り返って分かるのは、もちろん澤田さんすごかったけれど、その前の質問の絵巻って言うんですかね。ひとつひとつの質問が追及に繋がって行く。もうノックダウンの時に目の前に澤田大樹がいたということなんですね。
澤田:すごいとかよく聞いたとか質問したと言われるんですけど全然そんなことなくて、その前のがあってのあれだったということなんですね。
砂鉄:まあでも適任なのかって言われて「どう思うあなたは」って言われてちょっとビビりません?
澤田:聞かれたので適任じゃないって言っただけなんですけど。最初から適任じゃないって言ってたらそれは怒らせたって思うんですけど、聞かれたんで答えたってだけなんですね。まあ答えられると思ってなかった顔をされてましたね。そう言われるとはまさか思ってなかったんだと思うんです。

砂鉄:それも、今回の会見もそうだけど、あちら側のリスク管理というのも、リスク管理というかきちんと誠実に説明しなくちゃいけないものなんだけど、こうなること分からなかった?っていう感じはしましたけどねえ。
澤田:終わった後に森さん、BSフジの『プライムニュース』という番組に1時間くらい出てたんですけど、まあけっこうご機嫌にお話になられてて、「女性がいると話が長くなるというのは根拠がないわけではないが、細かく外国へ行って説明するわけにはいかないので、私が撤回した方が早い」と。「オリンピックも近づいて話題がそっちに行ってはいけないんでお詫びして撤回すると申し上げた」と言ったということで。まあ謝らされたっていうことを話しちゃってるっていう。
砂鉄:つまり、俺は謝りたくないけど撤回しねえとやばいからしてみたよっていうことを、この直後に漏らしちゃったというね。
澤田:何だかすごいコントみたいなことが起こってるんですけど。IOCもIOCで各メディアの取材に対して「この問題は終わった」とコメントしている。
砂鉄:終わったじゃねえよ、と思うけどなあ。
澤田:IOCの品位が問われていると思いますよね、そう言ってしまうことに対して。

7.森さんだけの問題なのか

澤田:この問題って森さんだけでいいのっていう話をしたいんですね。時間もないので、もしかしたらアフタートーク(番組終了後のYoutube配信)まで行っちゃうかもしれないんですけども。
森さん、冒頭の会議に出た時に40分喋ってるんですよ。女性いると話は長いと言いながら、あなたが長いよっていう。それはご本人も認められてたんですけど。
最初の報じた朝日新聞の記事だと出席者から発言があった時に笑い声が出たと。あれ、これどっかで聞いたことあるなあと思ったんですよ。この記事最初に読んだ時に。
思い出したのは杉田水脈議員が去年9月に自民党の部会の中で「女はいくらでも嘘をつく」って言った時に出席者から笑いが出たっていう記事を思い出しました。政界で起こっていることとまったく同じことがJOCの評議会の中で行われたと。
森さんの会見から見えてくる問題点っていうのもあって。それは私の後に質問したハフポストの濱田記者に対する答えなんですけど、その中で
「山下さんの時は、JOCの理事会の理事をかなり削って女性の枠を増やさないといけないと大変苦労したという話が合って、理事の中でも反対があったり大変だったのを、やっとここまで漕ぎ着けましたという苦労話を聞きました」と。
女性を入れることに対する文句ですよね。他団体でも聞いたのかという話をした時に
「そういう話はよく聞きます。理事をたくさん女性を入れるので選んだけど結果でいろんなことがあったからそんな話を私が聞いたことを思い出して言っているんです」と言ってるんです。
ということは他のスポーツ団体でも大なり小なりこんなことが起こってますよということを暗に言ってて、それに対して文句言ってる人たちがいる。それは誰なのかは分からないですけど。それがかなりの数あると森さんは言ってる。
森さん自身は、元の発言で私の恥を話すと言った前振りをした上で、ラグビー協会の会議が伸びる例として女性が発言することを挙げてるんですね。これ日本スポーツ界の問題なのだと。森さんだけの話じゃないよって。そういう意味では、実態を明らかにしたっていう意味では「功績」というのはありかもしれませんね。皮肉な結果ですけど。

砂鉄:
もちろん森さんは責任を取らなくちゃいけないけど、森辞めろっていうことだけじゃなくて何でこういうことが平気で起きてるのか。他団体でもスポーツ団体でもこういうことってたくさん起きてるよね。2013年にね、柔道の暴力事件ていうのがあって全柔連、非常に大きな問題になったことありましたけれども。あの時とどう変わってるのっていうことを問いただした時に、いろんなスポーツ団体が考えなくちゃいけない問題をたくさん抱えているということですよね。
澤田:じゃあこれはさっき言った政界とかスポーツ界だけの問題かっていう話にもなると思うんですね。そうじゃないよね。日本社会全体じゃないのっていうふうに思って来るわけです。

8.メディアの報道

澤田:これもちろんメディアも例外じゃないなって思ったのは、今回の森発言を報じた時間なんです。それを見てちょっと自分の中で疑問があって。これ電子版のアップ時間から主要メディアの動きを見て行きたいんですけど。まず実際に報じられた時間というと必ずイコールとも限らない。例えばテレビだと放送した時間ではなくてアップされた時間にはなるので。一応アップの時間と言うことで目安でお話ししたいんですけど。
一番この記事を最初に報じたのはどこかというと、朝日新聞なんですね。水曜日の午後6時にはもうアップしてると。
2番目になったのは日経新聞と共同通信が午後9時20分。3時間あります。
砂鉄:結構間が空いてますね。
澤田:その後、産経新聞が9時46分。読売が10時17分。毎日が10時41分。
砂鉄:なんか西村京太郎の小説みたいになって来ましたね。
澤田:朝日新聞と毎日新聞の間には5時間の差がある。これみんな取材してたんですよ。
朝日がめっちゃ早くて、「何で朝日はこんなに早いんですか」って朝日の人に聞いたら、これJOCの会議なんですね。オリンピック委員会の担当って社会部とかじゃなくてスポーツ担当なんです。そのため森さんの発言をどう扱っていいか分かんなかったんじゃないかっていう話をしてて。朝日新聞は「やっぱり問題だよね」っていうことで夕方に一気に早くやった。
砂鉄:新聞記者にとってこの3時間ていうのはとてつもなく長い時間ですもんね。
澤田:だから夜9時くらいだったんですけど、自分のツイッターのタイムラインで全部朝日新聞の森さんの記事がずーっと縦から並んでいる状態だったんですよ。みんなこのことについて話題にしてたんですよ。
砂鉄:そこ以外にリンク貼る記事がまだ出てなかったということですね。そういうの結構珍しいですよね。スポーツ担当の記者であればもちろんオリンピックの担当でもあるだろうし、日頃すごく密接に接しているあまりに、これを記事にしちゃっていいのかなという、どこかに判断を促したりとかという社内のやりとりがあったのではないかと想像されますね。
澤田:想像でされますね。じゃあテレビはどうか。
フジテレビが1番早かったんですけど深夜の0時9分。2番目がTBSテレビです。朝の9時半です。アップされたのは11時半。日テレも11時半、アップされたのは。テレ朝が11時台のニュースでやっててアップされたのは12時。お昼の。もう、日またいでるんですよね。
NHKが一番早くて5時半なんですけど、これは森さんのニュースを直で伝えてるんじゃなくて、海外の波紋が先に来たんですよ。
砂鉄:波紋先に行っちゃった。海外の波紋が起きてますっていうことが取り上げる最初のニュースだったと。

澤田:
これ何が起こってたのかなというのを考えると、ニューヨークタイムズを初め海外メディアっていうのは夜、この件についてバンバン報じてたんですよね。でも日本のテレビとかはスタートが全然遅かったんですよ。夜のニュースには入って行ってないんですよね。その日の午後に起こったことなのに。ある放送局の海外特派員に話を聞けたんですけど、「ニューヨークタイムズが記事を上げたんでこれやばいと思ってニュースの記事にしてたら日本自体が書いてなかったというので驚いてた」と。
砂鉄:えっ何でこれを記事にしてないのと思ったわけですよね。
澤田:「おかしいでしょって。海外からしたらこれ大問題だよって思ったのに日本はやってない」と。

澤田:じゃあ我々はどうか。TBSラジオです。朝5時台のニュースで入れました。TBSラジオ、記者が2人でほとんどの記事はTBSテレビの記事とか共同通信の記事を元にして書いてます。なので共同通信の記事が来たのはさっき言ったのは9時位なので『アシタノカレッジ』に入れることが出来なかった。
これ私自身の後悔なんですけど、ニキさん(『アシタノカレッジ』月~木パーソナリティ)だったらこの記事絶対反応してくれてたと思うんです。リスナーにも届けられたと思うんですね、その反応も含めて。その機会をちょっと失ってしまったんですね。それがすごく悔しくて。
私、その時間、丁度朝日新聞の記事見てて、これ明日から予算委員会で問題になるなって話をしてたところで、こんなことあったからニキさんのところに入れてあげてってひとこと言えればよかったなって思ってて。このニュースが重要だって言う意識が自分の中で無かったなって、すごい後悔があった上での昨日の会見だったんです。
砂鉄:そうか、その鬱憤を溜めた上での「ハッシュタグ澤田記者」がここでやっぱりこうじゃないのかっていうね、割と強く行けたっていう色んな蓄積があったわけですね。

9.「○○節」を面白がって来た

澤田:やっぱりメディアってこれまで森さんとか麻生さんとか石原さんとかこの手の発言繰り返し言ってて、○○節ってずっと言い続けてたじゃないですか。これ面白がって来たんだなと。
砂鉄:そうなんだよ。
澤田:で、そういうことがまたあの人言ってるよってことで初動の遅さにつながってるんだと思うんですね。その罪ってすごく重くて。でも我々の生きてる社会ってどんどんアップデートされて来てるじゃないですか。でもメディアも変わんなきゃいけないなっていうことを思ったと、いうことですね。
砂鉄:森さんがまた言ってるなっていうことだけで済ましちゃいけないと思うんですよね。澤田さん本日もありがとうございました。
澤田:失礼しました。

『アシタノカレッジ』2021年2月5日(金)放送
TBSラジオ公式Youtubeアーカイブ

https://www.youtube.com/watch?v=7uWvTKysAA8&t=24s&ab_channel=TBS%E3%83%A9%E3%82%B8%E3%82%AA%E5%85%AC%E5%BC%8F

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