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マルチ商法はなぜ「ダメ」なのか(1)

ほとんど更新していないこのnoteですが、基本的に見た映画とかAVとか、気楽に書こうと思って登録しました。
しかしここで、ちょっと普段使っているTwitterの機能ではまとめきれない、長文になる事が予想される内容について書かなければいけないと思い立ったので、ちょっと真面目なことを書きたいと思います。
テーマはマルチ商法です。

マルチ商法との出会い

まずは思い出話から。
もう20年以上も前になりますが、ある日、大学時代の親友から「来週、新宿の喫茶店で会えないか」との誘いの電話がありました。学校を卒業以来数年間、忘年会と称して年末に集まったり、たまには旅行に行ったりしていた親友が、突然、何のイベントも無いタイミングで「会いたい」という連絡をよこすなど珍しいな・・・と思いつつも、特に警戒することも無く、当日を迎えました。
他愛も無い話をひとしきりしたあと、親友が切り出したのが、ある家電製品(健康器具でもある)を商材にしたマルチ商法の勧誘話でした。なんでも、高校時代の先輩から「凄い人」を紹介され、このビジネスを知ったとのこと。とにかく「これから来る、流行る商品。今のうちから参加しておけば儲かる。」「今度凄い人に会わせてやる。その人に付いていけば間違いない。」などなど、いかにもマルチ商法の勧誘としては常套句ばかり。
「これが噂のマルチ商法か・・・。なんて面倒くさいんだ。」この手の勧誘を受けること自体は初めてでしたが、おかしい、胡散臭いという事はバッチリ分かったので、少し検討させて欲しいと言って別れました。

豹変

検討するも何も、これは、関わらない方がいいな、と思っていたわけですが、親友の頼みですから無碍にするわけにもいかず、その場は凌いだわけです。
検討すると言った以上は、一応返事はしなければならないだろうと思い、数日後、親友に電話をしました。「申し訳ないけど、今回の話にオレは乗れない。今の自分の仕事に集中しなければならないし、幸い、金銭的に困っているわけでもないし。」といった感じの話だったと思います。必死の勧誘だったこともあり、なるべく気分を害さないように、言葉を選んだつもりだったのですが・・・断り文句を口にした瞬間、親友の態度は豹変しました。
「このビジネスの価値が分からないなんて、バカじゃないのか」、「お前は恵まれた家に生まれたから、貧乏人の気持ちが分からない」、「この話に乗らないなら、お前との友人関係もこれまでだ」(全て大意)などなど・・・罵倒に近い言葉を投げつけられました。
ちょっとおかしかったのが「恵まれた家に生まれた」云々の話。親友自身、お坊ちゃんとまでは言わないまでも、相応に広い土地持ちの家の長男に生まれ、大学へも実家から通って車も持っていて。今まで貧乏暮らしなど一度もしたことが無かったんですね。(むしろ学生時代は、オレの方がお金に汲々としていました)
とまあ、自分の事も分からなくなるほどマルチ商法に入れあげて、友人関係を平気でぶち壊せるような人間になってしまった事に、少なからず恐怖を覚えたわけです。一体何なんだ、これは、と。マルチ商法にハマると、人はこれほどまで変わってしまうのか、と。ここまで露骨に人が変わってしまった、人格そのものが壊れてしまったと感じたのは初めてのことでした。

ネット掲示板の世界へ

恐怖を感じたのと同時に、変貌してしまった友人に、なんとか「こちら側」に戻ってきてもらいたい、という思いが強くなりました。その方法を探すために頼ったのが、当時はインターネット上のコミュニケーションツールとして主流だった、ネット掲示板でした。
いわゆる「2ちゃんねる」に代表されるネット掲示板ですが、当時は色々なテーマで独自に掲示板を設けているサイトがあり、中でも悪徳商法・マルチ商法に関する相談に特化した掲示板も複数ありました。その掲示板を渡り歩きながら、親友が関わっているマルチ商法の情報、マルチ商法にハマってしまった人の説得方法を探し、片っ端から読みあさりました。
そして、色々な人の意見や相談事例を見るに付け、極々当たり前の事に気付きました。「マルチ商法にハマってしまった人を説得する有効な方法など、この世には存在しない」という事実です。そりゃ、そうです。ハマってしまった人が簡単に説得に耳を傾け、マルチ商法に従事することを諦めてくれるなら、マルチ商法自体、社会問題化することも無いわけです。親友の変貌を思えば、これは一種の新興宗教、いわゆるカルトに近いものであると。宗教を脱会させるのが困難であるのと同じように、マルチ商法から「足抜け」させることも、相当の困難が伴うという事実を、否応なしに突きつけられた思いでした。

横道に逸れていく

当初、友人を取り戻したい、という思いからネット掲示板にアクセスするようになったオレは、「ROM専」と呼ばれる、単に情報を読むだけの存在でした。ところが、掲示板の情報を読み込んでいくうちに、勧誘を受けて戸惑っている人、オレと同じように家族や友人を足抜けさせたいと思っている人が沢山いて、その人達に掲示板から得た情報や掲示板をきっかけに知った公的(国民生活センターなど)情報、法律の事など、自分が知り得たことを情報提供すべきでは、と考えるようになっていきました。いつの間にか、相談に乗ってもらおうとしていた人間が、相談に乗る立場に。ネット掲示板の常連として、相談に乗ったり、時にはマルチ商法に従事する「信者」(詳しくは後述します)と議論を戦わせる事になっていったのです。
目的を見失って横道に逸れたと言えばそれまでですが、結果的には、これら一連の活動が、ハマってしまった親友との距離感を見いだすヒントとなった上、自分自身の消費者問題に対する視野を広げ、本業にも活かせることになっていったので、決して無駄な時間ではありませんでした。

問題の親友は、オレが勧誘を受けてから数年間は音信不通の状態が続いていましたが、ある日、別の友人から「どうやら上手く行かなくてやめたらしい」という話を聞き、それをきっかけに、なんとか学生時代のような付き合いを取り戻すことが出来た、という次第です。

少し長くなってしまったので、次回に続きます。次回はネット掲示板でどのような知見を得、「信者」とどのように向き合ったのか、という話を書いていきたいと思います。

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