泣いたのは、悔しさから。
紫陽花をみると、思い出す。
数年前、まだ銀行員だった頃。
突然の辞令を受けた。
私がいた銀行の辞令は、
だいたい金曜日に辞令を受けて、
翌週から2週間くらいで引き継ぎをして
新しい店に着任する。
なんも、変なことはない。
だけど、私はそのお店もお客さんも大好きだったから、まだまだできることがたくさんあった。
突然すぎる人事異動に、気持ちがついていけなかった。
……
それでも、アポの時間はやってくるし、
お客さんのとこに行かないといけない。
その日のアポは、午前中に1件。
60代の女性だった。
話好きなお客さんだった。
月曜日からは引き継ぎが始まる。
異動を、告げなくてはいけない。
「あの~、私、異動になりました」
そう告げた瞬間、涙が溢れてきた。
悔しかった。
これから、まだまだできることがあったから。
結局、このお客さんは、話好きとゆうこともあり、
お昼の14時頃まで滞在した。
途中、心配した副支店長から電話がかかってきたけど、帰るタイミングを逃してしまった。
そのお客さんの家の庭にはきれいな紫陽花が咲いていた。
いつか、自分も紫陽花の咲く庭がほしいなと思った。
つらい1日でも、私にはただ話を聞いてくれたお客さんがいて、そこにはきれいな紫陽花があった。
だから、毎年紫陽花を見ると、
あの日の出来事を思い出す。
……
今思うと、仕事しろよ……って、
つっこめる私はだいぶ大人になった。
あたしが泣くのは、
だいたい悔しいときと相場がきまってる。
でも、泣いたら忘れて、
パワーアップしてる。
紫陽花を見ながら、
「結局その繰り返しだ」と気づいた。
おわり
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