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賢治先生の北海道修学旅行 5月22日から23日 室蘭から青森へ

宮沢賢治の花巻農学校教師時代の北海道修学旅行復命書を読み解いています。
復命書はこちらです。
https://plaza.rakuten.co.jp/kenjitonou/diary/202102150000/

一行31名は、1924(大正13)年5月18日夜に花巻を出発。鉄道と青函連絡船を使い、途中函館、小樽を見学しながら、車中泊2日の強行軍で5月20日午後、札幌に到着。札幌では20日と21日に、北大植物園、北海道帝国大学などを見学し、21日夜に苫小牧に到着。22日は苫小牧の製紙工場、白老のアイヌ集落を見学、室蘭から青森行きの客船に乗りました。

賢治先生の北海道修学旅行 34 苫小牧製紙工場、白老アイヌ集落
2021.03.22
https://plaza.rakuten.co.jp/kenjitonou/diary/202103220000/

一行は、1924(大正13)年5月22日午後5時室蘭港発、青森行きの客船に乗りました。青森着は午前4時すぎの船中泊でした。

賢治は、客船で「船首マストの上に来て」という詩を書いています。

(本文開始)

船首マストの上に来て
あるひはくらくひるがへる
煙とつはきれいなかげらふを吐き
そのへりにはあかつきの星もゆすれる
 ……船員たちはいきなり飛んできて
   足で鶏の籠をころがす
   鶏はむちゃくちゃに鳴き
   一人は籠に手を入れて
   奇術のやうに卵をひとつとりだした……
さあいまけむりはにはかに黒くなり
ウヰンチは湯気を吐き
馬はせはしく動揺する
うすくなった月はまた煙のなかにつゝまれ
水は鴇いろの絹になる
東は燃え出し
その灼けた鋼粉の雲の中から
きよめられてあたらしいねがひが湧く
それはある形をした巻層雲だ
 ……島は鶏頭の花に変り
   水は朝の審判を受ける……
港は近く水は鉛になってゐる
わたくしはあたらしく marriage を終へた海に
いまいちどわたくしのたましひを投げ
わたくしのまことをちかひ
三十名のわたくしの生徒たちと
けさはやく汽車に乗らうとする
水があんな朱金の波をたゝむのは
海がそれを受けとった証拠だ
 ……かもめの黒と白との縞……
空もすっかり爽かな苹果青になり
旧教主の月はしらじらかゝる
かもめは針のやうに啼いてすぎ
発動機の音や青い朝の火や
 ……みんながはしけでわたるとき
   馬はちがった方向から
   べつべつに陸にうつされる……

(本文終了)

詩は創作ですから、どのくらい現実を反映しているか、わかりませんが、馬やニワトリも乗った、にぎやかな船だったようです。
青森室蘭航路は、当時、北日本汽船株式会社が運航していました。
北日本汽船は、大阪商船の関連会社で、青森、北海道、樺太(現 サハリン)を結んでいました。画像は航路の絵はがきです。

画像1


一行がどの船に乗ったかわかりませんが、画像は北日本汽船の三国丸の絵はがきです。


画像2


絵はがきの画像は、下記からダウンロードしました。
函館市中央図書館デジタル資料館
http://archives.c.fun.ac.jp/

次回は、ようやく花巻に帰ります。

賢治先生の北海道修学旅行 36 青森から花巻に帰着
https://plaza.rakuten.co.jp/kenjitonou/diary/202103240000/


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