ソフトウェアエンジニアとして働きつつ、日本にビジネスを作る挑戦

このブログでは私が現職Launchableで挑戦していることについて書きます。

現状と課題

私が現職Launchableに転職したのは2021年12月でした。Launchableは数年前に米国で創業したテックスタートアップで、機械学習を使ってソフトウェアテストの実行効率化を実現する会社です。根幹にしている技術はPredictive Test Selectionという機械学習です。Predictive Test Selectionはソフトウェアテストの実行ログやレポジトリの変更履歴から各テストの成否を学習し、PRで実行されるテストの成否を推論する仕組みです。Predictive Test Selectionの詳細は以下ブログをご覧ください。

私がLaunchableにソフトウェアエンジニアとして採用されています。私のこれまでのキャリアをご存知の方なら、私のポジションは機械学習エンジニアやMLOpsエンジニアが適切と思うかもしれません。しかし私自身は敢えて機械学習やMLOpsを専門に働くつもりはなく(これまでも、これからも)、あくまでソフトウェア技術によって課題を解決するエンジニアのつもりです。機械学習っぽい仕事をしている理由は、ここ数年たまたま機械学習がブームで、機械学習の領域で発生する新しく大きな課題を解くことが面白いからです。実際に機械学習の領域で課題解決とエンジニアリングに注力していたおかげで、様々なイベントで登壇させていただいたり、書籍を2冊出版することができました。関係者の皆様、ありがとうございます。

そういうスタンスなので、次に新しく大きな技術課題が発生するのがARならARをやるし、LLMならLLMをやるつもりです。

いずれにしても私はLaunchableにソフトウェアエンジニアとして雇われています。Launchableは米国のスタートアップでエンジニアも5, 6名くらいしかおらず、人員が足りていない状況です。

Launchableではエンジニア募集中です!

私はバックエンド(Java)、CLI(Python)、データ基盤(BQ)、機械学習基盤(Spark)、機械学習、データ分析、インフラ(Kubernetes)あたりを主に開発、運用しています。これだけだと一般的な人数不足なスタートアップのエンジニアにありがちな、いろいろとチャレンジングな状況に見えるかもしれません。

このまま単なるソフトウェアエンジニアとして働き続けるだけで本当に面白いのかというと、そうは思えないのが現状です。もちろんエンジニアリングは好きですし、新しい技術も課題も多々あります。しかし機械学習やインフラ、バックエンドを主軸に働いたとしても自分のキャリアに新しみや広がりがありません。加えてLLMの登場によってプログラミングが徐々にAIに代替されていく可能性を考えると、エンジニア一筋はリスキーなように思えます(無論LLM含めてAIは万能ではないのですが)。さらには、自社の課題解決もエンジニアリングで完結するものではない、という思いがあります。言わずもがな、ソフトウェアエンジニアがプロフェッショナルとしてエンジニアリングするのは当然です。しかしそれ以前に、会社に所属する以上、その会社のビジネスの成功に貢献しないとエンジニアリングもへったくれもありません。そのためにはまずはマーケットを作り、顧客を知り、プロダクトを世の中に広めるほうが優先度が高い気がしています。こうした仕事は営業やマーケティングの主戦場でしょうが、エンジニアは立入禁止というわけでもないでしょう。

一歩を踏み出す

そこで私は、Launchableで日本のマーケット向けにマーケティングと営業とCSMを(勝手に)担当することにしました。

10年以上前からAWSやGCPのようなクラウドが日本に広まるにあたり、エバンジェリスト(最近だとアドボケイト)やソリューションアーキテクトという、エンジニアをベースにした顧客対面ポジションが活躍しているのは公の事実です。Launchableもエンジニア向けプロダクトを提供するテックカンパニーですし、ビジネスを広げるためにエンジニアがその役割を担うのは合理的でしょう。Launchableはエンジニアも日本人のみで構成しており、海外のテックスタートアップにしては日本のエンジニアマーケットに近いポジションにいると言えます。特にLaunchableの創業者の一人は日本人最近シリコンバレーバンクの件でバズってた方です)で、日本のエンジニアとして相応に有名な方です。しかし日本でLaunchableが広まっているかというとまだまだユーザは少なく、日本語の情報も多くありません。まずは日本でLaunchableを広めて、ビジネスをスケールさせて、自分のキャリアにビジネスサイドに広がりを持たせたい、という考えです。

私自身は「営業」という肩書で働いたことはありませんが、営業的な仕事をやるのは初めてではありません。機械学習をやり始める前に、国内や海外のIT企業でクラウドを作る仕事をしていたときは、作ったクラウドを拡販する仕事もしていました。お客様のオフィスに出向いて説明したり、使い方をデモしたり、システム構成を提案したり、社内の営業向けに説明会を実施したり、等々。その後は機械学習のためのDevOpsやプロダクト開発に重きを置いていたため、売る仕事には携わっていません。今回のLaunchableで営業的な仕事に挑戦するのはクラウド時代の延長です。当時よりも技術力やビジネス経験ともに成長した自分がLaunchableの日本マーケットを作る挑戦です。

営業する、と言っていきなりお客様を見つけられるなら営業という専門職は存在しないでしょう。お客様を見つけるにせよ、売り込むにせよ、簡単なものではありません。技術的なプロダクトを売れるようにするのは、多くのスタートアップ(そして多くの企業)が直面する課題だと思います。知名度のない企業にアプローチしてくるお客様はいません。潜在ユーザがプロダクトを知っていても、そのプロダクトを調べて、自社の課題解決に役立つと判断できることは稀です。導入しようとしても、使い方がわからなかったり、適切でないことで効果を得られないこともあります。ソフトウェアは作って終わりではない、というのはDevOpsの世界でよく言われる金言ですが、作って運用しても終わりではなく、お客様に使われて課題を解決してお金を払っていただいて、ようやくビジネスが回ります。

自分で作っているプロダクトがユーザに使われるところまで届けられるのが、ソフトウェアエンジニアをやりつつ営業をする醍醐味です。Launchableというプロダクトをお客様に導入してもらうだけでも課題は多々あります。お客様ごとに異なる条件と構成が必要だったり、技術的に解決しなければならない課題や、新たな機能追加が必要だったりします。Launchableはソフトウェアテストの効率化を目指すため、ユーザのテストシステムにインストールする必要があります。ユーザやシステムによってテストシステムは千差万別で、毎回違う構成やワークフローを知ることができます。そして個々のテストシステムで異なる課題が存在します。お客様の課題に直面するからこそ、得られる知見には多大な価値があります。特にプロダクト開発を行っているエンジニアの立場からすると、機能追加で解決できる課題であれば、その工数と手順含めて暗算して、自分で機能を追加して解決することができます。その機能を特定ユースケースに限らないように抽象化して設計すれば、他のお客様への営業活動や導入でそのまま使える機能になります。ビジネスサイドに片足突っ込むことは、ただプロダクトを作るだけに留まらない難しさと面白さがあるのです。

1年間の成果

こうしたスタンスで、Launchableでソフトウェアエンジニアとして働きつつ、営業的な振る舞いもする変な人として1年ほど働いています。最初は知名度を上げつつ日本のQAエンジニアマーケットを知ることから始めました。ブログを書いたりテック系イベントのLTに登壇したりしてLaunchableを紹介しつつ、QAエンジニアと会うためYouTrustやMeetyを駆使しました。おそらく50人くらいとオンライン面談したと思います(その節はありがとうございました)。その中からソフトウェアテストの課題がLaunchableで解決しようとしている課題とマッチする方と改めてミーティングし、商談につなげていきます。もちろん成功もあれば失敗もあります。相手は同じソフトウェアエンジニアなので困りごとやペルソナはある程度わかりますが、それでもコミュニケーションがうまくいかないことは多々あります。そうした中でもLaunchableに興味を持っていただき、PoCで試していただいたお客様からフィードバックを得て、それを新機能にする・・・エンジニアリングとビジネスを橋渡しするからこそ得られる面白さです。

この活動をしていく中で、成果が出たときのランドマークにしたかったことが、お客様とLaunchable初の共同イベントの開催です。目的は会社として知名度を得ることはもちろんですが、世の中に知られるイベントとして自分の思い出に残すこともあります。

そしてこの度、私が営業として初めてLaunchableを売ったお客様であるLINE様と共同イベントを開催することになりました。
開催は3月30日(木)の12:00-13:00(JST)です。
登壇者は私のカウンターパートになっていただいたLINE SETチームの皆様と、Launchable創業者の川口CEOです。
Connpassでイベントを公開しています。ぜひご参加ください。

これを橋頭堡にソフトウェアテスト実行効率化で日本に新たなマーケットを開拓していきたいと思っています。ソフトウェアテストの待ち時間や不安定さにお困りの方がいましたら、ぜひお声がけください。

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