見出し画像

ザワザワと揺れる木々の音。

「昔の彼氏に似ているの」
僕の瞳を真っ直ぐに見つめながら、頬を両手でそっと包み込む。
「面倒はことは嫌いでしょ。」わたしもそうなのと言って、
キスしそうな唇をとがらせて笑ってみせた。

「お願い、ただ温もりを感じていたいだけだから…」
僕の背中に手を回す肩は思っていた以上に華奢で、
凛とした立ち姿に強さえ感じていたのに
あなたはこんなにもかよわい人。

俯いたままのあなたは、何を考え黙っているの?
いつもそうやって、ひとりで気持ちの整理をしているの。

頑張って、笑って、悩んで、泣いて、
転んで、傷ついて、痛くてまた泣いて
悲しくて、淋しくても、起きあがろうとして

僕も少しだけそっと彼女を抱く。
決して壊すことがないように。

辺りが少しづつ暗くなる。
行き交う車のライトが明るくなり
もう帰るねとあなたは言う。

「最後に手を握らせて、大好きだったの彼のこと。」
優しく強く握る細い指、愛おしそうに眺める瞳。
キュッと噤む口元、ザワザワと揺れる木々の音。
あなたの笑顔が震えていて、涙を我慢しているように見えました。

さよならを言う言葉が「もう会わないから安心して」と
言われているような気がして。僕は、

我慢ばかりは辛いから、
面倒だなんて思ってないからでもなく、
喉元でつっかえていた言葉は、
「また会えませんか」の一言が精一杯だった。

僕はあなたをひとりにはさせたくなかった、
人はひとりでは決して生きてはいけないから。








最後までお読みいただきありがとうございました。
感謝の気持ちでいっぱいです。





最後まで読んでくださりありがとうございます。 もしよろしければ、サポートして頂けると嬉しいです。 記事を書くための書籍購入に使わせていただきます。