最後のマスカラ【毎週ショートショートnote】

きっとこれが最後になる。
わたしは、鏡に向かい、片目をつぶりながら
丁寧にマスカラを塗っていく。

もともと、22歳までと決めていた。
ここまで頑張っても芽が出なかった
この後どんなに頑張っても先が長そうだ。

もう、田舎に帰ろう。

わたしは短大卒だけれど、22歳なら大学卒と同い歳。
職種を選ばなければ、どこかに就職も出来るだろう。

夏、家に帰った時、近所のおばちゃんが
「いやぁーよく帰ってきたね。大学で勉強しているの。本当に偉いねぇ。」と、やたらめったらに褒めてくれた。
もう卒業して2年目のフリーターなのに。
近所と言っても、この集落は、ぽつん、ぽつんと
隣家が建っている淋しい故郷。

だけど、水も空気も綺麗だ。
わたしは膝を抱え、揺れる稲を眺めていた。

小さい劇団に席をおいて、チケット売りには苦労はしたが、
地下劇場で舞台に立てたのは嬉しかった。

さぁ、スポットライトの光に負けないように
わたしの心と共に、最後のマスカラを丁寧に塗っていこう。

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たらはかに様の企画に参加させて頂いております。

皆様の作品に触れる機会をいただき、とても勉強になります。
初めて参加させていただきました。ありがとうございます。

たらはかに様に感謝の気持ちでいっぱいです。