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【ライブレポ】TOKYO IDOL FESTIVAL 2022 (8/5初日)#2

2022年8月5~7日に開催された「TOKYO IDOL FESTIVAL2022(TIF)」の、初日8/5開催分のライブレポです。
この記事はvol.2で、vol.1は下のリンクになります。

13時前。
お昼を食べ、TIFのシンボル的存在である「SMILE GARDEN」に移動しました。
フジテレビ湾岸スタジオの真下にあり、普段は芝生が広がる普通の公園ですが、TIFでは聖地に変貌します。
最後に自分が行った6年前から名前も形も変わらず「SMILE GARDEN」としてあり続け、何かが起こるステージとして注目度はメインステージ以上です(サイリウムが降ってきたのはまぎれもなくこのステージです)。
メインステージを天空アイドルが占めるようになってからはここがメインステージみたいなところがあるのかもしれません。
コロナの影響で他ステージと同様入場が面倒臭くなりましたが、入ってしまえばあの頃と変わらない景色です。
違うのはモッシュや多動が起きず砂埃が舞わないこと、ここでこそ本領を発揮するBONDSが何もすることがなく所在なさげにうろうろしていたことくらいでした。

続いてのグループは2曲目くらいからの滑り込みで観ました。

「誰よりも大きいブレス」タイトル未定

ここもまた、コロナ禍の真っ只中にデビューしたグループです。
2020年4月にデビューしました。
TIF当時は5人組でしたが、8月13日に卒業した七瀬のぞみさんが4月の頭より学業の関係でライブを欠席していたため、実質4人での活動となっていました。
この日のステージに出演するのも、七瀬さん以外の4人です。

東京への一極集中が顕著なライブアイドル界で、ロコドルという道ではなくメインストリートで都内のグループと対抗しようという意気込みのもと、立地では圧倒的に不利な北の地からやってきました。
タイトル未定にとってこのTIFは、楽しむだけでなく戦いの場でもありました。
メインステージ争奪戦です。
北海道から、歴史を変えよう」を旗印に、ノミネートが発表されてから広告や争奪戦ツアーなど様々な施策を打ち出し、時にパフォーマンスで、時に言葉でファンとの気持ちをまとめあげて予選を勝ち上がり、TIF当日の決勝の舞台にたどりつきました。
勢いのまま、この日の夜に開催された決勝戦でもぶっちぎりの優勝、なんとメインステージ出演権を獲得してしまいました。
また、カラオケバトルでは冨樫優花さんが優勝し、ゲーム対戦ではマリカー世界7位の川本空さんがダントツで優勝。
あらゆる一位をさらっていきました。
「三冠」を獲得したグループなど、10年あまりの歴史に他にいたでしょうか。
2022年TIFは、タイトル未定のためにありました。
この3日間でタイトル未定が手にしたのは、抱えきれないくらいのお土産でした。

デビューから2年程度ですが、タイトル未定はポッと出のグループではありませんでした。
ファン有志で毎年末に企画される「アイドル楽曲大賞」の2021年分では「アルバム部門」「推し箱(グループ)部門」でともに1位を獲得しており、そのころから優勝への土台は出来上がっていました。
確かに聴いてみれば曲も本当によく、メンバーのステージには魂がこもっています。
未完成な部分も含め、大きくなっていくことは間違いないとされていたグループでした。

ただ、そうだとしても...考えることがあります。
どうしてここまで躍進できたのでしょうか。
曲がおしなべて良質でパフォーマンスに気持ちが乗っているグループだというのは疑いようのないところですが、しかしそうしたグループは都内にだっていくつもあります。
差別化するところがあるとすれば、北海道というハンデが逆に応援欲を掻き立てるのでしょうか。
様々考えられそうな要因については、フォロワーさんのこちらの記事で徹底的に分析されています。
反響の多さからしても内容からしても、恐らくここにあるのが全てなのだろうなと思います。

ただ、ひねくれている自分はあえて邪道を行って少し別のことを書いてみたいと思います。
それは、語りたいオタクの多さが人気の理由なのではないかということです。

オタクはアイドルに言葉を求めます。
それは例えばSUPER BEAVERの渋谷さんが一対多を越えられないことを分かっていながらステージの上から「あなた」という二人称を使って送るメッセージではなく、もっと親密な、手と手が触れあえるほどの距離感から生まれる、一対一のやり取りです。
アイドルから自分のためだけのメッセージが届くONLY FIVEなどのサービスが引きもきらないのはこのためなのでしょう。
「語彙力がないけど」と彼女らは言いますが、実際文法がどうだとか国語的にどうかということはどうでもよく、とにかく体温が伝わってくる言葉が欲しい。
キラキラとした照明で照らされることのない、オフステージの言葉です。
それを欲しているのがオタクだと思っています。

その一方で、オタクは言葉を欲しがるだけでなく使いたがる生き物でもあるようにも思います。
いまライブレポを書いている自分がまさにそうですが、こうしてnoteとかブログのアカウントを作るまでしなくとも、言葉を媒介に何かを発信したがる人が多い。
何かを取り入れたらどこかで排出もしないと、入れているだけでは持ちません。
排出の一つの方法であったはずのライブ中の声出しに制限がかかり、終演後の「やっぱ●●だなー」「だなー」とフロア内のエール交換みたいなものも出来ない。
コロナ禍となってからは、現場でのコミュニケーションが減った分、そうした機会がSNSにすっかり取って代わられたような気がします。
語彙力がなくてとエクスキューズをつけながら何かを語りたい人はアイドルだけではありません。
オタクもなのです。
そして、オタクに潜む発信したい欲求を引き出してくれるグループこそが、今のSNS隆盛の時代に一番受けるのではと思うわけです。

その点で、タイトル未定はファンから言葉を上手に引き出しているグループだなと感じます。
タイトル未定関連で流れてくるファンの方のツイートには、熱い文章が他と比べてきわめて多いです。
単なる体感ではありますし、フォロワーさんで凄く熱心なファンの方がいたり(実際います)、その中で関心のある方が多かったりするだけなのかもしれませんが、他とくらべて圧倒的に流れ込んできますし質量ともにすごく充実しています。
恐らく阿部葉菜さんを筆頭に未定メンバーが積極的に「心を言葉に」しており、それに触発された人が発信し、互いに言葉を求め、求められるという関係性が生まれているからなのかなという気がします。
TIF争奪戦を前に阿部さんが書いた文章を下に貼ります。

そんなことを言いだしたらアイドル楽曲大賞だって、「自分はこういうグループ/曲が好きなんだ」と他の人に発信したい欲に駆られた、何かものを言いたい人が積極的に票を入れ、投票コメントを打つ傾向にあるはずです。
コメント欄は全てではないですが、発信する人が多ければ総意になってしまいます。
そうしたツイートなりを見ると、このグループ、ひいてはスタッフやファンを含めた「チーム未定」までもが良く思えてしまうから不思議なものです。
それを見て足を運んだ人がライブに心を打たれ、溢れて止まらない言葉を発信してそれをまた別の初見の人が見て...と、ツイッターという最大の口コミサイトを拠点にファンの輪を順調に広げていったような感じを、自分が知ってからのタイトル未定には受けました。
かくいう自分も、初めて観たときはすでに楽曲大賞などで良さが語りつくされたあとだったので「確認作業」みたいなところがありました。
聞きしに勝って良いグループだと、生で見てその思いを強くした一人です。

仕切り

さて、ライブの話に入っていこうかと思います。
DOLL FACTORYでのメインステージ争奪戦を夜に控え、その前最後の舞台がここSMILE GARDENでした。

途中から入ったので前のほうにも行くのも気が引けて、PA席があるセンター最後方からライブを観ていました。
気が引けて、と書きましたが、ここからの眺めはステージとフロアを広角に見渡せてかなりよく、俯瞰で一体感が見られます。
かなりの人がここに集まるであろうことはわかり切っていたので、その様子を見てみたかったというのもありました。
後方エリアは人もまばらです。
空いたスペースではファンの方がそれぞれのやり方でライブに浸っていました。
ただフリコピをするのではなく、曲によって生まれてきた感情を二次創作みたいな形で全身で表現している人もいます。
そうして楽しんでいる人達をみて、自分もなにか心が解放された気がしました。
何せ後ろはPA席なので、後ろにいる人を気にする必要がありません。
いつも以上に身体を揺らし、耳にすっと馴染んでいく歌声を浴びていました。
思い思いの姿で楽しんでいる人達とも、なんとなく一緒になれた感じがあります。
途中参加だったのでほんの15分くらいの時間でしたが、見ず知らずのオタクの人と(向こうがどう思っているかは知りませんが)言葉を交わさずとも繋がれたような感覚は久々でした。

圧巻は「溺れる」。

自分の大好きな鍵盤(しかも限りなくピアノにちかい音です)が響く曲で、サビラストのフレーズ「何も出来ない 出来ないまま」の「まま」のリズム感とそれに続く鍵盤の落ちていくようなメロディーが素晴らしいです。
阿部葉菜さんが叫ぶようにここを歌ったとき、鳥の群れがステージのほうから上空に飛んでいくのが見えました。
まるで阿部さんの声を号令として飛び立ったかのようでした。
もともと歌は上手いと思っていましたが、自分が以前観た1月のライブより全員の歌が上手くなっています。
4月に加入した川本空さんもです。

ラストの曲は「鼓動
届けたい歌があるから」歌いだす前の阿部さんが息を大きく吸ったとき、その音がマイクにしっかり乗っていました。
これほど息継ぎが大きく聴こえるなんて、過去これまで経験がありません。
吸った以上の息は吐けません。
それを分かって、阿部さんはこう考えたのかもしれません。
野外のスマイルガーデンに響かせるにはマイクに乗っけるくらいまで息を思い切り吸わなければと。
歴史が変わる直前のステージ。
しかしそれは結果論であり、自分はまだタイトル未定優勢の流れを読めていませんでした。
確かにタイトル未定は良い。けれども争奪戦の他の3組だって良いはずだ。
そう思っていましたが、どこかでもしかしてこれは...という思いも顔を出してきていました。

◆タイトル未定 SMILE GARDEN セットリスト
M1. 夏のオレンジ
M2. 黎明
M3. 溺れる
M4. 踏切
M5. 鼓動

仕切り

「僕はここにいる」群青の世界

タイトル未定のライブの後は4人組アイドル・群青の世界のパフォーマンスです(台風で決勝は中止)。
10月開催だった去年のTIFの、メインステージ争奪戦の決勝戦にまで進んだグループです。
激情型のパフォーマンスでは両者近しいところがあると思うのですが、意外にも対バンで被ることも少なく、ファン層も重ならないようです。
前列ブロックから捌けていく方々の流れに逆らい、難なく前の方にいけました。

若かった6年前の自分でもモッシュなどに巻き込まれるのが怖くてなかなか前に行けなかったSMILE GARDENも、平和な今は他のライブハウス同様空いていればなにも考えずに前に行けます。
初めての前方から見る景色は綺麗でした。
ステージはことのほか高く、見通しが良いです。
間に挟まれるは、青空。
今一度、このステージが夏の風物詩として注目されている理由が分かりました。
規制が緩まって生まれるのは楽しみの幅が広がるという良い面だけではありません。
それにより窮屈な思いをする人も出てきます。
楽しみ方が平行線をたどるくらいなら、正直ずっとこの状態が続けばいいのにななんて思ってしまいました。

一日に複数ステージ出演するというのは、セットリストに柔軟さを生むように思います。
通常の1ステのみの対バンライブであれば、一つのセットリストのなかで多彩な曲を取り入れてグループの魅力を様々な角度から語るところを、複数ステ出演であればステージごとにカラーを変えることでそれが実現できるということです。
複数ステージにわたって手札を出していくようなイメージで、昼間のステージは明るめの曲で、逆に夜は少し落ち着いて沈むような曲で統一するという風に、トータルで観ればバランスよく披露したけれども一つのステージだけを切り取ると結構偏っているというような、面白いセットリストが生まれます。
昼間、野外のステージに立った群青の世界は、まさにそんな複数ステを活かしたセットリストで攻めてきました。
今置かれている状況に合った、夏曲のみのステージです。
比喩的な表現も、情緒深い表情も、SMILE GARDENでは一旦傍らに置かれました。

◆群青の世界 SMILE GARDEN セットリスト
M1. 青い光
M2. シンデレラエモーション
M3. コイントス
M4. 僕等のスーパーノヴァ

髪を切り、カラーを入れた村崎ゆうなさんの髪色が若干の色落ちをしてアッシュっぽくなっていました。
本人をして今自分の色がグレーなのかアッシュなのかよくわからないそうです。
角度によって色の変わるこの髪色が、野外にベストマッチでした。
カッコつけたくなるという村崎さんは、細かい所作がいいです。

一曲目「青い光」の終わり、半身をうしろに残し、こちらの方を観たときのメンバーの表情は4人それぞれで、口を開けて笑っている村崎さんに対し一宮ゆいさんは口を閉じて意味あり気にフロアの先を見つめています。
漂う雰囲気は神秘的。

この日の一宮さんの歌声は、お腹の方から響いてくる鳴り方をしていました。
PAとの相性が抜群で、伴奏と共鳴しています。

ラストの「僕等のスーパーノヴァ」、この曲で終わると収まりが良いです。
一番の歌いだし、工藤みかさんの歌い方がこれまで聴いた中で最も真に迫っていました。
「手の届く天井をただ見上げてる 自分でもわかってた 立ち止まってる」
終わりではなく始まりの爆発。
消えていく寸前にとてつもない輝きを放つ超新星になぞらえた、前向きでスケールの大きな歌詞の曲ですが、その導入はすごく卑近で泥臭いです。
工藤さんの歌い方に触れ、改めて歌詞の真意を考えました。

僕はここにいる」2番で叫ぶような歌詞を放った水野まゆさん、曲の途中でまるでライブが終わったかのような開放されきった表情を見せていたのがやけに頭に残りました。

次は特典会があったので早々にSMILE GARDENを後にしたため、結果として自分がSMILE GARDENにいたのはこの2組だけの40分弱でした。
聞けば別日では禁止されているのに声出ししたりサークルが発生したりとコロナ以前の光景も一部見られていたらしいのですが、平和そのものだったこの2組によってSMILE GARDENをあるべき姿で楽しませてもらいました。

背丈の低い草が織りなす緑のカーペットが広がるSMILE GARDENは、それがお台場という人工物の塊みたいな土地に存在するという違和感も手伝い、普通の屋外ステージ以上の非日常感を生みます。
非日常に振れ過ぎるとおかしな群集心理を引き起こしてしまいますが、ほどほどのところで抑えれば、こんなに素敵なロケーションもそうそうありません。
わずかな時間でも、行けたことはラッキーでした。

この先特典会でしばらく時間が空きます。
再度DOLL FACTORYに戻り、3組のブロックを続けて観ました。
時刻は15時。

ここのブロックは、「TIF×TOKYO GIRLS GIRLSステージ」となっていて、ここに選ばれたグループは「TOKYO GIRLS GIRLS(ガルガル、TGG)」という都内開催の定期的な対バンライブに出演したことがあり、TIF初出場となるグループのなかで選ばれたグループということなのでしょう。
冠にこうついてはいますが、ライブの内容として特別な企画があるわけではありません。

ここの3組のうち、目的としていたのは最後にでてくる「タートルリリー」でした。
ただ、その前の2組も含めこのブロックのパフォーマンスには終始心打たれるところがあったので少し書いてみます。
どのグループも、単枠15分しかないなかでどう魅せるかという方向がしっかりとしていました。
あまり伝わりにくいかもしれませんが、この日のベストアクトといってもいいかもしれません。

仕切り

alma

まず出てきたのは「alma」。

見るからに個性あふれる5人による、腹の底からひねり出したような魂の歌声が見どころなのかなと、ライブを観ていて感じました。
音程のみならず気迫がこもっています。
TIF仕様のノンストップメドレーとして5~6曲(正確には覚えていません)をワンコーラスでつなげ、わずかな時間に次々とカードを切ってきました。
どの曲か忘れてしまったのですが、印象的だったのが花沢真里乃さんの歌声でした。
飯島桃子さんらとの二声ハモリで歌った低音パートがまるで男性の声かのように低かったのでした。
かといって低音域に特化したというわけでもないようで、ハモリが終わるとオクターブ戻って歌っていたのですが、アイドルでここまで低い声を久々に聴きました。

東京女子流に「Liar」という曲があります。
元メンバー・小西綾乃さんのハモリが途轍もなく低く、男の人がコーラスを当ててるとしばらく勘違いしていたことがあったのですが、それ以来かもしれません。
Liarとの出会いは2011年でしたから、10年以上ぶりの衝撃でした。

仕切り

elsy

初期からTIF出場を目標に掲げていて、皆さんのおかげで私たちはTIFのステージに立つことができています...
登場前、リーダー・愛森ちえさんがこのセリフを口にしながら声を震わせています。
2019年10月にデビュー、結成3周年を迎える今年、ようやくTIFにこぎつけました。

「emotional × sympathyを結合した儚くエモい感情を多くの人と共感する」
この文句だけで、一曲も知らなくとも自分好みなんだろうなと思わせるに十分でした。
周りからの評価も高かったですが、生で観てもやはりいいです。
透き通るようなステージでした。
この清涼感を出せるのも、丁寧に振りを動作に落とし込み、控えめながらも確実な音程を取れるからこそでしょう。
新曲「ハレルヤ!」は一転してブラス調の明るい曲で、これまでのことを全く知らない自分でも今までにない曲調の曲なんだろうなと思っていたのですが、これもこれで良いです。
3年目にして念願の初シングルの表題曲だとのことで、この曲が新体制となったelsyを方向づける曲になるのかもしれません。
不思議なことに、中毒性があるのか「ハレルヤ!」は1週間以上たった今でも結構聞いています。

◆elsy DOLL FACTORY セットリスト
M1. 終わらない約束
M2. 流れ星
M3. ハレルヤ!

仕切り

そしていよいよ、この日の大本命ともいえるグループが登場しました。
Pimm’sや群青の世界、あるいは透色ドロップなどといったここまでのお目当ては、対バンでもしょっちゅう顔を合わせており、TIFでなくとも一緒になる機会が多いグループです。
TIFの3日程のうち8/5を選んだのは、目当てとするこれらのグループが一番集中した日だったからというのはあるのですが、それなら正直いつもの対バンと変わりません。
8/5には出ていないけれども以降の2日間で出場するグループで好きなものも多く、少し組み合わせを変えて8/6や7にする選択肢だってありました。
ただ、8/5にどうしてもこだわりたかった。
なぜならば、決定打となったグループが存在したからです。

それが、今から出てくる「タートルリリー」でした。
2019年結成、現在は5人組で活動しています。
先の二組と同じく「TGG」枠での出演です。
単日一枠でしたが、タートルリリーの出演が自分にとって8/5のTIFを特別たらしめました。
初出場に至るまでの話をここで少し書きたいと思います。
かめリリもまた、TIFには特段の思いがありました。

「この先のこと」タートルリリー

とはいえ、自分が「かめリリ」のグループのライブに行くようになったのはつい最近です。
4月24日、TIF出演のきっかけとなった「TOKYO GIRLS GIRLS」にグループが初めて出たときでした。
全20組以上の大規模対バンライブにも関わらず顔ぶれが固定化されているきらいがあったのですが、いつもとは違う界隈にかめリリが飛び込んだということになります。

TGGの少し前からフォローはしていたものの、その他大勢のグループという意識でなくなったのはライブを観てメンバーと喋ってからでした。
ツイートを見てみると、こんなハッシュタグが目に留まりました。 
「#かめリリTIFに出たい」
5人がたびたびこのハッシュタグをツイートの最後につけているのです。
自撮りやツイート内容がTIFと全くもって関連がなくともついている一方で、タグ付きのこのツイートを特に拡散してほしいという風でもなさそうです。
しごく日常的に、メンバーのツイートに「#かめリリTIFに出たい」が溶け込んでいました。

元をたどるとこのハッシュタグは3月の頭、TIFの5カ月前のきよりんさんのこのツイートが最初のようでした。
きよりんさんはさらにこう続けています。
「何呟いてもこれつけましょう!」
どうやらこれをきっかけに他のメンバー、そしてファンの方へとタグの流れが出来たようです。

有川奏絵さんがこう書くように、とにかく数が多いライブアイドルの世界で、TIFへ出場するというのはなかなか高いハードルではあるはずです。
実力以外の部分や目に見えない力も関わってくるでしょうし、目に見える戦いとしては出場権を賭けた課金レースなどもありますが、こちらもこちらで楽な戦いではありません。

望みの薄い夢を語るより、もう少し現実的にものごとを見ないといけないという思いから、TIFに出たいという願いを語らず胸にしまいこむアイドルも多いのではないでしょうか。
自らのあずかり知らぬところで話が進んでしまうフェスイベントではなく、CDシングルや単独公演など、比較的コントロールのしやすいところに力を入れ、その延長線上にようやく大型アイドルフェスが見えてくるというベクトルのもと走っているグループだっているかもしれません。

そこにあってきよりんさんから始まったこのタグは、大きな壁に向かった果敢な意思表示でした。
出るのが難しかろうがTIFは特別であり、絶対に出てやるというグループの総意です。
実際のところ、ハッシュタグが直接TIF出場と結びついたのかは分かりません。
ツイッターを検索していた関係者の目に留まり会議に名前が挙がる..ということがもしあったのなら凄い話ですが、恐らくそうではないでしょう。
しかし、グループ内部でみれば、タグをきっかけに潮目が変わったはずです。
メンバーもファンもTIFという大きな目標を、「 #かめリリTIFに出たい 」で共有し、時期が近づいてくるにつれてもしかしたらという期待感が高まってくる。
漠然と「売れたい」ではなく、TIF2022という明確な目標が、3月からのかめリリチームにはあったようでした。
強調しますが、ハッシュタグたった一つです。
しかしその効果は絶大です。
グループを知ったばかりの自分であっても多用されるハッシュタグを見て「何とか出てほしいな」という思いが不思議と湧き上がってきていました。

さて、ハッシュタグが生まれてからのかめリリの活動ですが、言霊に引っ張られてか順調そのもののように見えます。
4月の有川奏絵さん生誕祭で持ち曲12曲目の「アプデ」を解禁し、翌24日には初めての「ガルガル」出演。
自分が初めてかめリリを見たライブです。
動員がかなり重要で、その数次第で今後も呼ばれるかどうかが決まる可能性があるイベントでしたが、メンバー必死の告知もありかなりの入りで、スタッフの方がワンオペで回していたとはいえ特典会は長蛇の列が出来上がっていました。
初めての自分としては、まさかこんなに人気だとは...という感想でした。
ガルガル出演はここで終わらず、5,6月には番外編としてですが一回ずつ、そして9月にはKT Zepp Yokohama開催分に出演予定です。
こちらは番外編ではありません。
また一つ、かめリリが違う界隈に定着しつつあります。

6月には結成3周年ライブを成功裏に終え、そこでは新衣装とともに「Fun Time」を初お披露目しました。
13曲目です。
秋に事務所移籍、そして同時期に新メンバーオーディションの開催がなされることも発表、そういえばライブそのものとは無関係ですが周年ライブにはテレビカメラも入りました。

3周年ではまた、ライブから1週間明けた6/20に配信ライブで5人からお知らせがあるという発表もありました。
お知らせがあるならこの場でまとめてしてしまえばいいはずなのにどうして引き延ばすのだろう...と思いましたが、後になってこの理由が分かります。
メンバーですらもこの時点では内容は知らされていませんでした。
解禁まで内々で隠し通さないといけないほどの、重大なお知らせです。

そのお知らせこそ、TIFへの出場決定の報でした。
さらには14曲目の新曲をそこで披露するという宣言までありました。

イベントのみならず、曲までもかなりのハイペースで増えてきています。

3周年の場ではTIF出場を知らされていなかったメンバーも、配信の数日前に前もって耳にしていたようで、有川さんのツイートにはこうあります。

全てを知った今からしてみれば、最大のほのめかしでした。
しかし「 #かめリリTIFに出たい 」タグがあまりに日常に溶け込みすぎたため、当時はそんなことは頭に全くありませんでした。
地方の遠征にでも行くのだろうかという程度です。
予想は、最も嬉しい形で裏切られました。

今年、メインステージ争奪戦でタイトル未定が勝ち上がった理由に、ストーリー性が挙げられていました。
オタクは、というか誰もが結果のみならずそこに至るまでのストーリーを求めています。
自分が見ていたのはたった数カ月ですが、かめリリにはその数カ月でも感動に値するだけのストーリーがありました。
ライブのセットリストが毎回固定で、正直停滞していた感があったという時期から見ている方からすればより分厚い物語だったことでしょう。

念願だった大型対バンライブへの出演が叶い、グループの周年ライブや曲リリースなども着実にこなし、念願だったTIFにその大型対バンライブから道をつなげた。
誰が見てもはっきりとわかる結果の数々をこれだけの短期間で残したグループを、自分はいままで見たことがありません。
ライブアイドルでは高名になったグループも、かつてはこのような成長曲線を描いたのでしょうか。
今後どうなっていくのかは分からないので適当なことは言えませんが、グループが大きくなっていくのを実感とともに追いかけているというワクワク感が、今のかめリリにはあります。
確かな成長に立ち会えていることに嬉しさを感じつつ、TIFのライブレポに入っていこうと思います。

1曲目は「真夏の空とキミ」で始まりました。
外食制限だったり、最新の注意を払いながらこの日に誰一人欠けることなくたどりついたことに、まずは一安心です。
「初めまして、タートルリリーです!かめリリの夏、TIF行くぞー!」
辻菜月さんのイントロでの絶叫に始まり、曲中もメンバーが次々と煽りの言葉を発しています。
「かめリリ知らない人も手上げて」「後ろのほうもー!」
他のグループだったら煽り過多に感じてしまったかもしれませんが、ぱっと見ではおとなしそうなメンバーが揃うかめリリでは多すぎとは思いません。
勢いをつけるにはちょうどいいくらいです。

「真夏の空とキミ」の1番が終わった後、いつもなら2番に流れていくところを、この日は違う音が流れていました。
始まったのはCメロ。
2番をまるまるカットし、いつものようなフルコーラスではなくワンハーフの構成にしたのでした。

フルコーラスだと、15分の持ち時間では3曲しか披露できません。
新曲を披露するとなると、フルコーラスのままでは既存曲が2曲しか出せないということになります。
まだ音源も出ていない新曲ですから、どうしたっていきなり盛り上がるのは難しく、様子見の雰囲気が流れてしまうのは確実です。
それでもフルで3曲のみを披露するのか。あるいは...
前から限られた15分をどうやって使うのかはずっと気になっていました。

やはり、と言いましょうか。
一曲目からカットして、曲数を増やすという作戦に出てきました。
知らない人も多いであろう会場で、繰り返しになる2番の冗長性を省くという効果もここにはあります。
かつてのTPDでよく見られたやり方で、この日のalmaはワンコーラスほどのメドレーでした。

Cメロからラスサビに入る前、センターにいた有川さんのソロでのターンがとても綺麗でした。
まわる速さもしかりですが、正面で止まれるところがすごい。
ステージから足にかけて回転軸が埋め込まれているかのようです。

ワンハーフで体感としてはあっという間に「イチコイ」へと移りました。
こちらも「真夏」同様、ライブで披露されることが多く対バンにも強い曲です。

メンバーはなおも煽りを続けます。
ライブを観るのは6回目くらいですが、ここまで勢いで押すことができるグループだったのかと初めて知りました。
初めて曲に触れたのが「ダイヤの翼」という高貴な匂いのする曲で、メンバーのビジュアルもありずっとそのイメージがグループのカラーとしてへばりついていたのですが、この日のステージを見て見方がまた変わりました。
初期の頃のような大人っぽい路線や「ダイヤ」のような雰囲気だったり、いくつも引き出しを持ち合わせつつ、今回選択的に取り出したのが「客席を煽りに煽って火をつける」というスタイルなのでしょう。

「真夏」と同じくワンハーフで終わった「イチコイ」までの空気は、これまで(とはいっても6回くらいですが)観た中でも一番の盛り上がりだった気がします。
やはり煽りが上手いことハマりました。

メンバーと特典会で喋ったら、何人かは緊張したといっていました。
ただ、全員というわけではありませんでした。
佐伯鈴さんなど、特に緊張がどうこうとは言っていなかった一人です。
後で配信のアーカイブを見返してみるとよく分かるのですが、佐伯さんは表情や仕草からして泰然自若というか非常に落ち着いていました。
ライブを観ているとだんだん分かってくることがあります。
佐伯さんは乱れません。
恐らく、メンバーの中で一番緊張からはかけ離れている人なのかなと思っています。

以前、ライブ中どういったことを心がけているのかを聞いたとき、辻菜月さんはこう答えてくれました。
「落ち着くことと、周りをよく見ること」
緊張やテンションの昂ぶりで周りがよく見られなくなってしまうので、意識的に抑えているとのことです。
辻さんを観ていると目立つのが、必死にパフォーマンスをしている様子です。
3年前の結成時からいるオリジナルメンバーであり最年長ですが、ルーキーの心を忘れていません。
恐らくこういう心持ちで居続けられているのが辻さんの良いところなのでしょう(違っていたらすみません)。
それでも、以前に書いた、マイクを持った手をクルっとさせる動作は配信にもしっかり残っていました。
パフォーマンスそのものとは直接の関係がないかもしれませんが、このリストの柔らかさが良いです。

そして3曲目は宣言していた新曲。
「シ・ゲ・キ・チュ・ウ♡」
これこそどこかで聴いたような気がして、配信で何度も聴くと好きになるタイプの曲です。
感想戦で懐かしいというコメントが出てきたのも分かる気がします。
清藤恵さんの歌声は本当に頼もしい。
印象的なのがサビの「頭の中ではもう両想い(表記合っているか分かりません)」のフレーズで清藤さんがソロを歌うとき、他のメンバーがその後ろに縦一列で重なり千手観音のように腕を伸ばしたところ。
初披露とは思えないほど綺麗に揃っていました。

4曲目は「Say Hello!!
1,2曲目を短くしたから最後に入れることができました。
清藤さんが上手からセンターに移動しながら最初のソロを歌います。

15分の濃いライブを終えて思うのが、初舞台のTIFに新曲初披露を合わせてきたことの意味です。
かなり勇気のいるであろうこの選択は、多少の話題性はあったかもしれませんが目的はそこではなかったはずです。
自分は「TIFを通過点にする」という意図があったのだろうなと思っています。
何カ月も前からハッシュタグをつけて気持ちを一つにするくらいTIFは一大目標だったわけですが、達成されたらそこで終わりではなく、また新たな目標が出てきているはずです。
来年もこの舞台に、だとか「ガルガル」のような知名度高めのイベントに出るだとか、あるいはグループの在り方への夢もあるでしょう。
普通なら、一つ夢を叶えたあとしばらく余韻に浸ってまた次へ、となっていいはずです。
TIF出演レベルならどれだけ浸っても足りないでしょう。
しかしかめリリチームは、一つの夢に到達した時点からその先を見つめていました。
地に足をつけています。

これからを引っ張っていくかもしれない新曲披露をTIFのタイミングに合わせたのは、そうした意図の表れだと受け取りました。

◆タートルリリー DOLL FACTORY セットリスト
M1. 真夏の空とキミ
M2. イチコイ
M3. シ・ゲ・キ・チュ・ウ♡
M4. Say Hello!!

仕切り

続いては再び野外に戻り、「DREAM STAGE」にてこちらのグループです。

「名人戦」Ringwanerung

2019年11月結成、現在は5人組です。
メインステージ争奪戦の予選を勝ち上がり、タイトル未定らと決勝戦を戦いました。
時刻は16時15分。
決勝戦が始まる18時45分まであとわずかです。

個人的には見るのが半年以上空いてしまいました。
何があったとかではないのですが、興味と関心が増えると平気でブランクが空いてしまいます。

観ていない間に続々と曲が増えていますが、ここで披露された曲で初めて聴いたのは1曲だけでした。

ステージを観るたびに貫禄をつけていっている印象のある「リンワン」、争奪戦直前のこのステージは名人芸のような余裕すら感じさせました。
音出しやウォームアップをして各人がコンディションを確かめつつ、本番の決勝に向かうためのチューニングをしてるかのようです。
これは手を抜いていたり流しているのとは全く別の次元です。
目の前のステージに心が向いておらず決勝のことで頭がいっぱいというわけではなく、そうした状況すらも俯瞰で観ているような感じでした。
正直自分はリンワンが争奪戦に勝つのではないかと、密かな期待も込めて思っていました。
昼のSMILE GARDEN、タイトル未定で傾きかけた気持ちは、夕方のこのステージでまたもや分からなくなっていました。

5人の余裕を感じさせた象徴的な場面が、序盤2曲でした。
夜彩」と「嘘と君と」です。
目は血走り、髪をくしゃくしゃにさせたメンバーが歌詞の感情を転写させるというのが、自分が今までリンワンに対してイメージしていたパフォーマンススタイルでした。
例えば「ササル」「ハローハロー」は当初から志向している鍵盤ロックをまさに体現した曲で、すべるように動いていく鍵盤に乗ったアップテンポなメロディーなのですが、にも関わらずメンバーの歌声が入ると歌詞がすんなり入ってきます。
逆にストリングスなどが伴奏に加わった「fall into sky」はそれらと比較するとテンポをかなり抑えており、こちらはとにかく荘厳さがあります。
他の曲もしかりですが、どの曲をみてもフロアを押し込むようなパフォーマンスが目立っていた。
そこに我々は共感し、心を通じ合わせるわけです。
そういうグループなのだと、これまでは思っていました。

ただ意外にも、序盤2曲ではすかしているかのように引きのパフォーマンスです。
もっとも「夜彩」は前からあった曲ですが、収録の1stアルバム「synchronism」が出た時点では他とちょっと性質を異にするように感じていて、それが新しめの「嘘と君と」と連続したことで単なるアクセントでなくなったという感覚です。
どちらも他の曲よりファルセットが極端に多用されているのが、引きの感じを与えているのかもしれません。
前半はおしゃれなステージ、対して後半はかき混ぜてきました。

いつのまにか、みょんさんが上着をはだけています。
久々だったので忘れていましたが、みょんさんはライブが続くと暑さに耐えかねて脱ぎだします。
夏の野外、長そででいることのほうが大変でしょう。
他のメンバーはよく長袖のままパフォーマンスできているなと思います。

カケラ」は生で聴くのは2周年ライブ以来でした。
アニメの主題歌っぽいなという第一印象そのままに今も聴き続けています。
寺尾音々さんの少年のような歌声がこの曲でキーとなっている感じを受けました。
サビ前の長めのソロが良いです。

気が付けば、吹いてくる風が先ほどよりも強くなってきているような気がします。
空が荒れてきました。
Pimm’sの時からなんとなく思っていたのですが、ダークな印象のグループが出てくると途端に空模様が怪しくなってくる気がします。
雨を吹き飛ばすパフォーマンスとかいいますがその逆で、雨雲を呼び不穏な空気を作り出すのがそうしたグループの特性のようです。
空はやや心配ですが、怪しくなっていく空こそこのグループに合います。

◆Ringwanderung DREAM STAGE セットリスト
M1. 夜彩
M2. 嘘と君と
M3. River
M4. カケラ
M5. La La

仕切り

「上ずる音」MyDearDarlin’

この日はおおむね当初の予定通りライブを回れたのですが、唯一の誤算がリンワン終わりの特典会で想定以上に時間を食ったことでした。
余裕だろうと思っていたマイディアの2回目のステージは、特典会が押しに押した結果一曲目「青の君」の途中から観ることになったのですが、とはいえそれくらいで済んだのですから贅沢を言うべきではありません。

マイディアはこの日2回目、先ほどリンワンが立った「DREAM STAGE」です。
2回目なので簡潔に書きます。

たしか「青の君」だったかと思うのですが、水城梓さんが言い聞かせるような歌い方をしていました。
葉山かえでさんはこの日欠席の篠崎麗さんの歌割のカバーを多めにしていたようですが、場面ごとに変わる歌声は見事でした。

Symphony #5」の一旦しゃがむサビの振り付けにメンバーがステージから消えた錯覚を覚え「七転八起ドリーマー」で響くバスドラの音を聴き、最後は「Flower」。

「一つになりましょう!」

この曲でメンバーがよく言うセリフです。
この日も言ったかどうかは分かりませんが、後ろのほうから観るとステージとアシンメトリーなフリコピの波はまさに一つになっていました。
こう宣言するだけあります。
注目したいのがサビの「繋いだ手は離れたりしないよ」というフレーズ。
最後の「よ」の音は高めの「シ」の音になろうかと思うのですが、女性アイドルでは最高音に近いこの音をユニゾンで出す(この日は)6人の歌声は勢いあまって語尾にかけて何度か上がり、それがエモーショナルさをより出しています。
リテイクを重ねたであろう音源だと「シ」の音に留まっていますが、生だと少し上ずります。
ライブ空間だからという単純な理由ではなく、ここのパートでは上ずりによるエモさがあるので、聴こえ方として圧倒的に生のほうが良いです。

◆MyDearDarlin’ DREAM STAGEセットリスト
M1. 青の君
M2. Symphony #5
M3. 七転八起ドリーマー
M4. FLOWER

仕切り

「対旋律」透色ドロップ

昼前のDOLL FACTORYでは初お披露目の可愛さあふれる新衣装で登場し、衣装に違わぬファンシーな曲を終えた透色ドロップ。
夜の「ENJOY STADIUM」でのライブは20組超のアイドルによる対抗戦「アイドル総選挙」の投票対象であり、グループとしてはセットリスト予想企画を組んでいたライブでもありました。

自分が思う透色ドロップとは、二面性のグループです。
すなわち、曲が多彩なので見た目から受けるイメージそのままの可愛らしさはもちろんのこと、人の心の脆さやアイドル特有の儚さを語れるという面までも持ち合わせているということです。
先に、複数ステの魅力はステージごとで全く違う雰囲気のセットリストを出して印象をがらりと変えることが出来るという、1ステのみで完結し、その中で起伏を魅せる通常のライブからすれば少し特殊な曲の固め方ができるということを書きました。

豊富な持ち曲があり、恐らくDOLL FACTORYでやった曲はもう出てこないでしょう。
昼を終えた時点で、2ステの利を活かし夜のステージでは真逆に振ってくるのだろうという気がしていました。
可愛い面を出した昼に対し、夜はシリアスに決めてくるのではないのかと思っていたわけです。
前もって送った自分の予想が、たまたまですがそうしたセットリストだったからというのもあります。
予想していたのは「孤独とタイヨウ」「衝動」「アンサー」。
笑顔の数が極端に少なくなる曲たちです。
両極端な面をもった透色ドロップのこと、もしや当たるのではないか。
少しばかりの期待があったのですが、実際のところは...

◆透色ドロップ ENJOY STADIUM セットリスト
M1. だけど夏なんて嫌いで
M2. 夜明けカンパネラ
M3. ネバーランドじゃない

大外れでした。
暗めの雰囲気はなく、あくまで衣装に即した曲という感じです。
外れはしましたが、これらの曲がチョイスされたことには大いに納得です。
自分が予想した3曲は単純に好きな曲を上から並べたみたいなところもあるのですが、披露された曲たちも文句なしに良い曲たちです。
やはり透色ドロップは良い曲が多い。
被りなく6曲聴けて満足です。
マイナスがあるとすれば、外したときに1回目と2回目の間の特典会で花咲さんにやや確信めいて「この曲やると思ってるんだけど」と予想を伝えたのを思い出して少し恥ずかしくなったことくらいでした。

「夜明けカンパネラ」で、伴奏の弦楽器の音が大きく聴こえました。
これまで何度も聴いているはずなのですが、初めて聴いたような感覚です。
ライブで後で意識して音源を聴いてみるとはっきりと聴こえたので、ライブでチャンネルが開かれたということなのでしょう。
ちゃんと聴いているつもりでも、実際はかなり取りこぼしていることに気付きました。
「ブリキのおもちゃも踊っている」
ここのストリングスの対旋律に、この曲に切なさを感じる理由が詰まっている気がします。

橘花みなみさんが歌うとき、浸るように目を閉じていました。
上手を観れば佐倉なぎさんが顔を膨らませています。
夜に向かっていく空と光度を増していく照明。
特別ではあるけれどいつも通りの、見ていて安心する透色ドロップのライブでした。

仕切り

透色ドロップのライブが終わったのは19時前。
そろそろ一日も終わりに向かいつつあります。

ここまですっかりスルーしていたステージがありました。
Zepp Divercity TokyoにあるHot Stageです。
昔は「Heat Garage」とかいう名前で、かつてあった夢大陸のステージや船の科学館のステージなどと同じくらいの規模感のイメージだったのですが、天空アイドルが多く出演するようになり同レベルのステージが分割や消滅してからはここが単独のメインステージとなりました。

この日のラストには実質上のヘッドライナー・Juice=Juiceが出演します。
さすがにメインステージに行かないのもどうかと思い、J=Jくらいは行こうと思っていたのですが、Hot Stageの客入りを侮っていました。
入場規制です。
Juiceの前の前の虹コンあたりから会場外の待機列が出てきたようです。
ただこの日はまだマシで、土曜日ということで人が増えた6日など何時間も待たされた挙句ライブを観ることができなかったという天空アイドルのファンの方のツイートが話題になっていました。
アイドルを見に来たのにただ日焼けをして帰るだけというのは不本意どころの話ではありませんし、TIFの洗礼というには厳しすぎます。
椅子アリにしてキャパが半減したこと自体もどうかと思いますが、そもそもTIFは地下アイドルの祭典みたいなところがあると自分としては思っているので、天空アイドルのステージは配信で観るものだと割り切ったほうがいいのかもしれません。

横道に逸れましたが、入場規制がかかっているなか夜で涼しくなってきているとはいえ外で待つのも...と思い、別のステージへと向かうことにしました。
もう一つ、スルーしていたステージがありました。
SKY STAGE」。
湾岸スタジオの屋上にあるステージです。

こちらはキャパによる入場制限もさることながら、それ以上の枷があります。
屋上手前の階段に繋がるエレベーターの稼働台数が少なく、混んでいるときはまず移動時間が読めないのです。
SKY STAGE出演で観たいグループはありましたが、予定が崩れるのが嫌だったので日中のタイムテーブルからは完全に外していました。
しかし今こそ行く時かもしれません。
入場規制さえかかっていなければ観たかったグループが、夜のSKY STAGEに一組ありました。

九州から来たこの5人組(現在は4人で活動中)です。

「空に突き立てる指」九州女子翼

エレベーターで7階まで上がり、3フロア分(体感それ以上あります)の塔屋階段を登った先に、SKY STAGEがあります。
並ばず、思いのほかすんなりと入ることが出来ました。
最高部は60m越え。
空に手が届きそうです。

日中の天気の悪さから、星降る夜ではなく空には雲がかかっています。
吹く風は強く、背景の旗がバタバタと揺れていました。
グレーの空に、真っ赤な衣装を着た4人が現れました。
20時、「I Am Love」から開幕です。

今まで観てきた屋内のライブでもうっすらと思っていましたが、女子翼メンバーの体幹のぶれなさたるや、です。
吹き飛ばされてしまいそうな風が吹いても、乱れるのは髪だけでダンスはびくともしません。
アオリ担当の山本愛理さんが現在不在のため、4人で分担しながら煽るような格好となっていました。
それぞれの言葉で語っていきます。

そしてラスト「空への咆哮」。

鍵盤の音が聴こえたとき、満たされる感覚でした。
これを聴きたいがためにSKY STAGEに来たようなものでした。
「wow oh oh wow…」
空に向かって勢いよく指を突き立てるのがこんなに気持ちがいいとは。
「この景色を見せてくれてありがとう!」
下手から一人ずつメッセージを伝えていきます。
全てが終わった後、退場するまでの間に流れていた「I Am Love」がエンドロールかのように綺麗に全てをまとめていました。

◆九州女子翼 SKY STAGE セットリスト
M1. I Am Love
M2. Welcome To The Music
M3. 空への咆哮

SKY STAGEからエレベーターを降り、SMILE GARDENから流れてくる「まっさらブルージーンズ」を聴きながら、自分のTIF2022は終わりました。

仕切り

6年前は気持ちが切れかかっていて、これが最後のTIFなのかなと本気で思いながら行っていたのですが、6年も空けて再び行くことになろうとは思いもしませんでした。
しかもライブレポを書こうというモチベーションのもとじっくり観るようになるとは。
声を出しても多動してもよかった当時は、声を枯らさずにどれほど耐えられるかだけを考えていましたし、ステージなんて推しのソロだとかレスをくれるパートくらいでしか集中して見ていなかったのに、今は身体では乗りつつもレポのために神経を張り巡らせながら観るようになりました。
消費を早めるからという理由で、推しメンという概念も自分からはなくなりました。

業界としても時代の主役は変わり、顔ぶれが一新されました。
恐ろしいスピードで変わっていく時代にあり、TIFはどんな立ち位置になったのだろうとはじめは思っていたのですが、もちろん良い面悪い面で変化はありつつも「ライブアイドルの祭典」という根幹は一切揺らいでいませんでした。

連れてきてくれたアイドルさんに感謝です。


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