5-11歳 子どものコロナワクチン接種について考えよう!(スペース文字起こし・前半)
キュート先生(以下「キュ」):
皆さまこんばんは。
時間となりましたので、スペース対談
「5-11歳 子どものコロナワクチン接種について考えよう」
を始めたいと思います。
呼吸器内科医のキュート先生こと田中希宇人と申します。
宜しくお願い致します。
神奈川県の病院で呼吸器内科医として肺がんや喘息の診療にあたっておりましたが、この2年間はコロナに追われている日々を過ごしております。
そしてSNS上では「キュート先生」の名前で分かりやすい医療情報が多くの方に届くように、ツイッター・インスタグラム・Facebook・ブログなどで日々発信を行っております。
病院から離れて、おうちでは4児のパパとして日々奮闘しています。
本日の本題であります子どものワクチンですが、今年の3月から5-11歳の子どもに対する新型コロナワクチン接種が開始されました。うちの子ども達もココに該当します。
自分は呼吸器内科医として臨床の現場でコロナ診療を行い、本来はコロナワクチン接種を推進する立場におります。ただ子どもの診療には全く携わっておりませんので子どものコロナワクチンについて分からないことがいっぱいあります。わたくしも自分の子ども達のことにも関係しますので、子どもの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)やコロナワクチンのことについては大変関心があります。
このスペースでは自分が調べたことや感じることの一部を紹介しながらお話しを進めていきます。本日はスペシャルゲストといいますか専門家をお呼びしております。小児科医のほむほむ先生です!拍手でお迎えください!!
ほむほむ先生(以下「ほむ」):
拍手って…スペースじゃ、拍手って聞こえていないですよねえ(笑)。
こんばんは。堀向(ほりむかい)と申します。宜しくお願い致します。
ちなみに私はコロナの専門家ではないです。ですので、あくまで一小児科医としてお話しさせて頂きます。そのうえで皆さまの考えの補強になったり
助けになったりすればいいなあと思っています。ワクチンやコロナについて悩まれていることと思いますが、私たち小児科医も悩んでいます。
いろいろな話をキュート先生がお話してくださると思っていますが、その中で本日は、みんなで一緒に考えていければいいなと思っています。宜しくお願いします。
5-11歳 子どものコロナワクチン 始まりました
キュ:
はい。宜しくお願い致します。
それでは今回話題になっている子どものコロナワクチンですが、今年の3月から全国で5-11歳のコロナワクチン接種が始まっております。
12歳以上の有効成分が1/3量のファイザーワクチンを「子ども用ワクチン」として接種しますが、3週間隔で2回接種という接種方法になります。
厚生労働省から
『5-11歳のお子様と保護者の方へ 新型コロナワクチン接種についてのお知らせ』
という冊子が出ていますので、ぜひ見て頂ければと思います。
接種の対象者は5歳から11歳、特に慢性呼吸器疾患、肺の病気ですね、そして先天性心疾患など重症化リスクの高い基礎疾患のある子ども達は接種を勧めています、と書かれています。
この冊子ではコロナワクチンの効果や安全性なども書かれています。
接種の注意事項としては
-子どもの接種には保護者の同意と立ち合いが必要
-ワクチン接種歴確認のため母子健康手帳を持っていくこと
-疑問や不安がある時にはかかりつけ医などにご相談すること
-接種費用は公費でまかなわれて「無料」
-現時点では「2022年9月末まで行われる予定」
ということです。この冊子は厚生労働省のホームページhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_for_children.html
からも見られますし、わたくしの先日書いたnote「みんなで考えよう!5-11歳 子どものコロナワクチン接種 -パパとして考えること-」
の中にもリンクを張っておきましたのでご覧頂ければ幸いです。
それでは本日のスペースでは
-子どもの新型コロナの特徴や現在の状況
-5-11歳 子どものコロナワクチンの効果
-5-11歳 子どものコロナワクチンの副反応
などについてわたくしが簡単に概要をお話しして、そのあとにほむほむ先生にその都度コメントを頂こうと思っています。宜しくお願い致します。
ほむ:
宜しくお願いします。
子どもの新型コロナ 特徴や現在の状況
キュ:
まずは『新型コロナウイルス感染症 診療の手引き』に載っている、子どもの新型コロナの特徴や状況から紹介していきます。
国内からの報告のまとめですが2020年1月~2021年2月までの約1年間に18歳未満の子どもで入院した1038例をまとめた調査では、
-約30%が無症状
-頻度の高い症状は、咳が37%。38度以上の熱が10%
-約2%、約50人に1人くらいの子どもが酸素投与を必要とした
-重症化の指標になっている人工呼吸器や人工心肺(ECMO)を要した子どもはゼロ
という報告です。これは子どものコロナの現場の感覚でも同じような状況でしたか?
ほむ:
子どもに関しては基本的には軽症が多いというイメージで間違いないでしょう。
一般的な感染症に関してですと子どもは重症化することが多いのですが、コロナに関しては大人の方がより重症化する方が多く、子どもは比較的重症化することがなかったのは確かです。
ただ一部重症化する子がいらっしゃるということは頭にとどめておいた方がいいのではないでしょうか。
キュ:
ありがとうございます。
ただし、いまお話ししたデータは2021年2月までのデータで、デルタ株やオミクロン株が登場する前の時期のことです。次にこの1年くらいの話に移っていきます。2021年8月以降は日本でも変異ウイルスであるデルタ株が流行し状況が変わってきました。
次に紹介するのは日本で登録されたコロナのデータ「COVIREGI-JP」からの報告になります。
2020年10月~2021年5月(デルタ株以前)と2021年8月~10月(デルタ株流行期)に登録された子どもの入院例を見ますと、ICU(集中治療室)に入院した子どもが0.1%から1.4%に増えた、とのことです。ただ人工呼吸器管理になってしまった子どもや亡くなってしまった子どもはいませんでした。
デルタ株の流行期でもほとんどは軽症になりますがが、酸素投与を必要とするような、大人で言ういわゆる「中等症Ⅱ」以上の子どものコロナが報告されていることには注意が必要です。
そして今年2022年に入りますと、変異ウイルスであるオミクロン株が台頭してきました。厚生労働省の報告を見ますと本日現在までで約550万人が感染し、大人も含めてですが2.5万人が日本で亡くなっている状況です。
今まで大人に比べて少なかった子どものコロナ感染の割合が明らかに増えてきており、2022年1月の時点では全年齢中10歳未満の子どもが5.5%、10代の子どもが10%の割合を占めてきております。10歳未満での死亡例の報告は上がっていないないものの、残念ながら10代では日本でも7人の方が亡くなっていますし、アメリカでも昨年秋までの報告では5-11歳の子どもで約160人の亡くなってしまった報告があります。
これは当たり前のことですがコロナ感染者が増えてくると、中には重症化とか、重症例が増加することも懸念されますので、今後の動向をしっかり見ていく必要があるとわたくしも思います。『診療の手引き』内でも注意喚起されております。
ここまでで子どものコロナの特徴についてお話ししてきましたが、それでは現在の子どものコロナの現場の状況はどんな感じか教えてもらうことできますか?
ほむ:
そうですね。オミクロン株の流行にともない、子どもでも発熱患者さんは非常に増えてきていると感じます。デルタ株以前の状況に比べますと、外来も普通に発熱患者さんも検査の回数も増加しています。
ただし重篤化している子どもの比率が増えているわけではありません。
一方で、先ほどもお話しにありましたが、米国でも約160人の方が亡くなっているというお話でした。
考えて欲しいことは、多くの方々のご協力で日本はいまところ、子どもに対する医療は崩壊しているわけではないことと、お金を持っているいないに関わらず平等に医療を受けることができるということです。標準医療が受けられるという前提があります。
悪化した時にカバーするような医療が残っているということが、まだ日本では亡くなっている子どもが少ないことに繋がっているのでは、と個人的には考えています。
そして米国のデータを見てみると、アフリカ系やヒスパニック系の方が、より多く重症化したり亡くなったりしていることが分かっています。「MIS-C」と言われる小児多系統炎症性症候群、いわゆる川崎病に似たような症状があって1%くらい亡くなっているわけですが、日本でもMIS-Cと思われるような症例報告が出てきています[1]。
日本でも川崎病は何となく増えたような気がしていますし、我々も新型コロナの後に川崎病様症状やMIS-Cかもしれないと思うような症例を経験しています。ですので、いま日本ではまだ標準医療が受けられるという前提に基づき、話を進めなければいけないと思っています。
患者さん自身も皆さまの感染症に対する予防策も頑張っています。米国では今シーズンにインフルエンザが流行ったようです。一方で日本ではインフルエンザが流行していないことを考えると基本的な感染対策を皆さまが頑張っていることの証左だと思われます。
こういった皆さまの頑張りなどからも、米国に比べて亡くなっている方が少ないのではと考えています。お答えになっていないかもしれませんが、ここは前提条件として考えておくべきです。
[1]Bibbins-Domingo K. This time must be different: disparities during the COVID-19 pandemic. Ann Intern Med 2020;173:233-4.
キュ:
ありがとうございます。
そして大人では高齢者や肺の病気や心臓の病気、肥満などがコロナの重症化因子として知られていますが、子どもの重症化因子で分かっているものはありますか?
ほむ:
やはり肥満や基礎疾患として悪性疾患があったり、免疫抑制剤を使っていたり免疫不全の状況があると悪化することが分かっています[2] [3]。
[2]Shekerdemian LS, Mahmood NR, Wolfe KK, Riggs BJ, Ross CE, McKiernan CA, et al. Characteristics and Outcomes of Children With Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Infection Admitted to US and Canadian Pediatric Intensive Care Units. JAMA Pediatr 2020; 174:868-73.
[3]Choi JH, Choi SH, Yun KW. Risk Factors for Severe COVID-19 in Children: A Systematic Review and Meta-Analysis. J Korean Med Sci 2022; 37:e35.
キュ:
ありがとうございます。
そしてもう一つ聞きたいのは、なぜ子どものコロナは軽症なのか、ということも知りたいです。わたくしの理解では、コロナは血管にダメージを与えて血栓を作ったり、酸素化が悪くなったり重症化したり、ということで大人は重症化しやすいと考えていて、子どもは血管がキレイでダメージが少なく血栓ができにくいとか、あるいは糖尿病とか肺・心臓の病気などの基礎疾患をもっている割合が少ないとか、そういったところで軽症が多いんじゃないかなと。子どもでなぜ軽症なのかという原因で考えられているものはありますか?
ほむ:
十分に分かっていない部分も多いと思います。
まずひとつめに、大人になって年齢を重ねていくと血管内皮障害と言って血管にダメージが出てくることや凝固異常と言って血液が固まりやすい状況になりやすいことが挙げられます。
もう一つはコロナウイルスの感染に関係している侵入門戸となるACE2受容体の数が大人よりも少なく、感染しにくいことも考えられます。
また子どもはよくカゼをよくひくわけなのですが、新型コロナウイルス以外にもかぜの原因となるコロナウイルスにかかることも多くあります。そしてインフルエンザや他のウイルスに繰り返し感染すること、そういった状況が子どもの重症化が少ない理由と考えられています[4]。
あ、ぼくは専門家じゃないので、あくまでざっくりの話です。
[4]Zimmermann P, Curtis N. Why is COVID-19 less severe in children? A review of the proposed mechanisms underlying the age-related difference in severity of SARS-CoV-2 infections. Arch Dis Child 2020.
子どものコロナワクチンの効果
キュ:
それでは今までのお話しで子どものコロナの特徴や現場の状況について触れていきました。
ここからは本題であります子どものコロナワクチンの効果や副反応について話していきます。まずはそもそもワクチンってナニ?ってところからです。
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