みんなで考えよう！5-11歳子どものコロナワクチン接種 -パパとして考えること-

呼吸器内科医の田中希宇人（たなかきゅうと）と申します。

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普段は地域の病院で肺がんや喘息など呼吸器診療を行いつつ、多くの時間をコロナ診療に費やしています。おうちでは「4児のパパ」として日々奮闘しています。2022年3月から5-11歳の子どもに対する新型コロナワクチン接種が開始されました。うちの子ども達もココに該当します。自分は臨床の現場でコロナ診療を行いコロナワクチン接種を推進する立場におります。おそらく多くのパパママが自分の子ども達のコロナワクチン接種については疑問や不安をお持ちのことと思います。わたくしも自分の子ども達のことになりますので、子どもの新型コロナウイルス感染症（COVID-19）のことや新型コロナワクチンのことについても大変関心があります。このnoteでは自身が調べたことや感じることの一部を紹介していきます。

 ０．はじめに

■5-11歳の子どものコロナワクチン接種が始まりました

 日本でも2022年3月から5-11歳の子どもに対する新型コロナワクチン接種が開始されました。今回開始された接種対象は5歳から11歳の子どもで、特に「慢性呼吸器疾患、先天性心疾患など重症化リスクの高い基礎疾患を有するお子様」に接種が勧められています。実際には市町村から「接種券」と「新型コロナワクチン接種のお知らせ」が届いてから接種会場を探すことになります。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_for_children.html

接種するワクチンは「ファイザー社製の5-11歳用のワクチン」で、mRNAの量が12歳以上のワクチンの1/3量となっている子ども用のワクチンを使います。接種間隔は大人と同じで3週間の間隔をあけて2回接種することとなっています。

厚生労働省からも「国民の皆さまに受けていただくようお勧めしていますが、接種を受けることは強制ではありません。予防接種の効果と副反応のリスクの双方についてしっかり情報提供が行われた上で、接種を受ける方の同意がある場合に限り、自らの意思で接種を受けていただいています」としっかり明記されています。

 

厚生労働省のホームページに分かりやすいお知らせが掲載されていますので、ぜひご一読頂ければと思います。

 ▶『新型コロナワクチン接種についてのお知らせ（5-11歳のお子様と保護者の方へ）』https://www.mhlw.go.jp/content/000896558.pdf

［5歳から11歳のお子様と保護者の方へ 新型コロナワクチン接種についてのお知らせ（厚生労働省ホームページより）］

接種ができる会場は、原則として「住民票所在地の市町村（住所地）の医療機関や接種会場」になります。各市町村のホームページや広報、接種総合案内サイト「コロナワクチンナビ」などをご確認ください。

▶『コロナワクチンナビ』https://v-sys.mhlw.go.jp/

■ワクチンってそもそもナニ？

ワクチンとは、「最近やウイルスによる感染症予防のための医薬品」のことです。

［ワクチンとは（筆者のインスタグラムより）］

もう少し簡単に言いますと「細菌やウイルスに感染した時と同じ状況を作り出すことで体の中に抵抗力（免疫）を作ること」です。

▶インスタグラム『ワクチンってナニ？』https://www.instagram.com/p/CLK0mwuFfuW/?utm_source=ig_web_copy_link

今回使用する子ども用のコロナワクチンは大人に使用しているワクチンと同じ「メッセンジャーRNA（mRNA）ワクチン」であり、新型コロナウイルスがヒトの細胞へ入り込むために必要なタンパク質（スパイクタンパク）の設計図となるmRNA を脂肪の膜に包んだ製剤になります。ワクチン接種によりmRNAが身体に取り込まれるとmRNA を基に体の中でウイルスのスパイクタンパク質が作られます。スパイクタンパク質に対する中和抗体産生及び細胞性免疫応答が誘導されることで、SARS-CoV-2 による感染症の予防ができるとされています。

［mRNAワクチンの仕組み（『新型コロナワクチンQ&A100』 コロワくんサポーターズ著 より）］

▶『日米で診療にあたる医師ら10人が総力回答 新型コロナワクチンQ&A100』https://amzn.to/3hNxxeZ

子どもへのコロナワクチン接種をめぐり、日本でも世界でも多くの議論がなされております。そもそも子どもの新型コロナウイルス感染症は比較的軽症であり、多くの場合は治療を必要としません。大人でよく言われているコロナの重症化リスクである心臓や肺の病気、糖尿病や肥満などの加齢に伴う変化も大人に比べて子どもでは少ないことや、コロナウイルスの重症化の引き金となる血管（内皮細胞）がキレイなため、コロナウイルスが感染することによる異常な血栓が作られにくいことなどが子どもで重症化が少ない理由と考えられています（Arch Dis Child 2021;106:429）。ただ頻度は大人よりだいぶ低いとされていますが、重症化のリスクがゼロではなく、死亡例も報告されていることには注意が必要です。そして重症化や死亡までには至らないにしても、酸素投与が必要な「中等症Ⅱ」の状態になる子どもの報告が散発的にあがっています（J Pediatric Infect Dis Soc 2021;10:1097）。

 特に2歳未満の子どもや基礎疾患がある子どもの場合は重症化リスクが健康な子どもに比べて高いことが分かっています。またコロナ感染による小児多系統炎症性症候群（MIS-C）と呼ばれる心臓を含めた多臓器に炎症を起こす重篤な病態が日本でも報告されています。

［小児多系統炎症性症候群（MIS-C）とは（『新型コロナウイルス感染症診療の手引き 第7.0版』より）］

そして日本でも大きな問題になっておりますが、子どもから大人・高齢者にコロナウイルスを拡散させる家庭内感染の危険性があります。子どもは大人と同じように基本的な感染対策ができるわけではありません。ただ一部の大人よりは子どもの方がちゃんと手洗いやマスクをしている場合ももちろんありますが…。飛沫防止策や接触感染が不十分になる可能性がある以上、ワクチンで感染拡大防止を図る対策はやはり重要と考えます。

 もちろん接種後の発熱や接種部位の痛みなどもありますので、子どもと言えどワクチンの必要性をある程度お話しして理解した上で接種することが大事ですし、もちろん周囲の大人はしっかり接種していることが重要になります。いまのコロナが蔓延している現状やご家庭の状況をよく考えて、お子様とパパママ含めてご家族内でもよく相談し、子どものコロナワクチン接種を納得の上で接種して頂ければと思っています。

 それでは

１．重症化が少ないってホント？-子どもの新型コロナウイルス感染症-
２．子どものコロナワクチンって効くの？-5-11歳の子どもに対するコロナワクチンの効果-
３．子どものコロナワクチンって安全なの？-5-11歳の子どものコロナワクチンの副反応-
４．4児のパパとして思うこと

と項目を分けて、実際のデータを示しながらお話ししていきたいと思います。医学的な内容で一部難しい言葉や表現が含まれますが、なるべく誰にでも分かりやすく説明していきます。