バイオレットフィズ
バイオレットフィズ
か~え~る~の~歌が~聞こえてくるよ♪の六月
レイナは、私立の音大四年生。音楽の世界に憧れて音楽の先生を目指している。
しかし…。
ここは、場末のBAR M&N。
「今日は、楽しかったわ、ありがとう~。」
レイナは、彼氏らしい人と飲みに来ていたが、帰り際、彼女は何故か男からお金をもらっていた。
男が去った後でねねが
「ちょっとちょっと、レイナにゃん、そのお金、どうしたにょ?まさか…。」
レイナは、キョトンとした表情を浮かべ、すらりとスレンダーかつ女らしいふんわりした身体を見せつけながら
「あぁ、このお金?出会い系で知り合ったセフレからもらったお金よん♪一回遊ぶにつき、一万円はオイシイわよね♪これで好きなブランドの服や、気になっていたコスメも買えるわよん♪」
責任感も緊張感もない発言にねねは、
「なにさ、なにさ、そんな汚いお金でよく買い物ができるわね!」
ぷうっとむくれたレイナが、
「だから、すぐにパッと使っちゃうのよ!お金は好きな時すぐ回ってくるし♪」
呆れたねねが、
「お金をにゃんだと思ってんにょさ全く…。それにしても、毎回きちんと避妊はしてるわよね?」
「ヒニン?何それ?」
「だ~か~ら~、性病予防や、赤にゃんができないようにする方法にゃんよ。それくらい、今のガッコじゃ教えてくれてるはずにゃんよ。」
「あ~、ガッコではその時間、かったるくて、エスケープしてたし、そんなの知らなくても、男の方に任せてるからいいし。」
「あのねぇ、赤にゃんができることって、あにゃたにも相手にも大きな責任ができるにょよ!一人の人間の命がかかってるにゃんよ!!」
「うっさいなぁ!!そんなことくらい知ってるわよこのBBA猫が!!」
バターン!!
…チリンチリン♪
わからずやのレイナは去っていきました。
それから二か月余り経ったある日、レイナは生理が遅れていることに気づきました。
「あれっ?おかしいなぁ?…まだ来ない。何だか身体がだるいし…もしかしてアイツと…?」
レイナは、心当たりのある男性たちに妊娠したかもしれないと告げても、皆口をそろえて『俺は知らない、他の奴の子だろう?』と無責任な発言をしたり、レイナの連絡先はブロックされていた。
「何でこうなるの!?アイツらのせいなのに!!でも、どうしよう…。」
レイナはどうすることもできなく、誰にも相談出来ずに、トボトボとBAR MITSUまで来た。
チリンチリン♪
「いらっしゃいませ~何にいたしましょう?」と笑顔のみつ。
「あにゃっ?レイナにゃん久しぶり、どうしたにょ?元気ないにゃんね?」とねね。
「わ~ん!!私、妊娠しちゃったかも~!!」号泣するレイナ。
「言わんこっちゃない!!」とねね
「それじゃ、私が元々生理不順で通っていた産婦人科に行ってみましょ?案外生理不順かもよ?私もストレスやなんかで二か月くらいは普通になかったから。」
産婦人科に行くと、診察後お医者さんが、
「おめでとうございます、妊娠四か月目ですね赤ちゃんも順調ですね。」と。
「え~っ!?四か月って!?」
「身長16㎝になっていますね。手足もちゃんとできていますよ。ママは感じていませんが、羊水の中で手足を活発に動かしていますよ。」
「もうそんなに育っているんですか?」
「はい、もちろん…。これから生まれてくるので、だんだん大ききなってきますよ。」
「そんなぁ~!!私、まだママになりたくない!!」
「それなら、処置は早めにした方がいいですよ。ママさんとよく話して下さい。」
淡々と話をするお医者さんに苛立ちを覚えながらもレイナは、
「ママかぁ…。」とつぶやいた。
「レイナちゃんのママさんってどういう人なの?」とみつは、公園のベンチで水分を取りながらレイナに聞いた。
「私の両親はね、パパは会社の後輩と出張と偽って浮気をしているの。でも、それは自然とママの耳に入ってね…ママはヒステリーを起こして私に当たっているの。だから、私は男に抱かれている時しか幸せを感じなかった。世の中、偽りの愛とお金しか信じられなかった…でも、こうなった以上どうしよう…。」
その後、みつは何とかレイナを家に連れて行き、レイナのママにレイナの口から妊娠を告げると…。
バチーン!!レイナの頬を平手打ちする音!
「…ッ!!この子はなんてことをしたの!!父親も父親なら、この子もこの子だわ!!」
「あの…お言葉ですが、少し冷静になって下さい、レイナさんのお父様の事とレイナさんの事は別のこととは考えられませんか?」
「あぁ…、取り乱してしまってすみません。分かりました、この子は音楽の先生になる道を選んでいて、人の先に立つ仕事をしなければいけません。お金を出しますから、堕ろさせます。」
「グスッ…グスッ…ママ…ごめんなさい…。」泣きながらレイナ。
「私も悪かったわ、これからは何でも相談し合って強力していきましょう。」とレイナのママ。
…こうしてレイナは、堕胎手術を受けた。
残暑も続く九月、レイナはBAR M&Nに足を運んだ。
「パパとママね、結局離婚しちゃった。でも、私が大学を出るまでの学費と、就職が軌道に乗るまでのお金はパパが出してくれるんだって。世の中やっぱお金なのかなぁ?でも、ママのヒステリーもだんだん治まってきて、私とママは、今までよりも仲良しよ。自立に向けて、お料理とか一緒に作ったりもするようになったわ。でも…赤ちゃん残念だったなぁ…、大事にしたかった…。」
「にゃら、一番はレイナにゃんを大事にしてくれる人と一緒ににゃると良いにゃんね。」とねね。
「それでは、『私を覚えていて』と名のついたバイオレットフィズをお作りしましょうね。」とみつ。
材料…バイオレットリキュール…45㎖
レモンジュース…20㎖
ソーダ…適量
ミントチェリー
作り方…ソーダ以外の材料をシェイカーでシェイクして、氷を入れたグラスに注ぎ、冷えたソーダで満たして軽くステアする。好みでミントチェリーを飾る。
バイオレットフィズ8度中口の出来あがり。
「どうぞ」みつは、レイナの前にカクテルを置いた。
「いただきます、こくん」
バイオレットリキュールとレモンの香りが合わさり、ソーダの爽やかさがあふれる。
短い間だったけども、ママだったレイナちゃんのこと、虹の橋を渡って天国に行った赤ちゃん、覚えていてね…。
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