共同体による共有資源の管理

経済評論家の話を聞いていて、おかしなことを話されると、思うことがしばしばある。例えば、「共有地(コモンズ)の悲劇」であり、「トリクルダウン効果」である。ここでは、共有地(コモンズ)の悲劇を考えてみたい。
イングランド銀行著、村井章子訳、経済がよくわかる10章, P86、P116には、おおむね以下の通りあった。
====<以下引用要約>===
共有資源が存在し、それをできるだけたくさん取ろうとする人が大勢いると、どの人も過剰に消費しがちになり、結果的に意図せずその資源を傷つけたり、使い尽くしたり、破壊したりすることになる。
1960年代に経済学者でもあったアメリカの生態学者ギャレット・ハーディンがこの 現象に「共有地(コモンズ)の悲劇」と名づけた。 ハーディンは、村人全員で共有する牧草地を例にとる。村人は自分の羊を牧草地で放牧 して育て、大きくなったら売るので、放牧する羊の数を増やして利益を増やしたいと考え る。だが全員が同じことをしたら、牧草地は荒れ果てて草が生えなくなってしまう。 ハー ディンの言うとおり「資源は有限だというのに、村人一人ひとりは自分の羊を無限に増や したいという考えに取り憑かれていた」。コモンズの悲劇のようなことが起きるとすれば、ときに市場はうまくいかない、市場には限界がある。経済学者はこうしたケースを「市場の失敗 (market failure)」と呼ぶ。
2009年にノーベル経済学賞 を受賞した故エリノア・オストロムは、コモンズについて深く研究し、必ずしもハーディンが結論づけたような悲劇にはならないことに注目してその理由を分析した。彼女はインド、アメリカ、ケニア、 トルコなど世界各地の共同体を調査し、さまざまな学問分野の手法を取り入れて分析して、次のような結論を導き出す。
「共同体による共有資源の管理が行き届いている場合には、枯渇や破壊に至ることはない。むしろ多くの場合に資源を持続可能に維持している。」
オストロムは、ハーディンがつねにまちがいだと主張したわけではない。ハーディンの 理論が成り立つのはある種の条件下に限られるとし、資源維持の決め手は枯渇によって影響を受ける人々が意思決定において発言権を持つことだと主張した。
オストロムの研究や、これに触発された他の研究によって、「コモンズの悲劇」にとら われていた世界に新たな政策の処方箋が提示された。すなわち、共同体への権限委譲と協調を通じてコモンズの悲劇を避けることができる。
ここでのポイントは政府が介入するのではなく、あくまで共同体に権限を委譲することだ。オストロムのこの処方箋が実行されたら、市場を失敗から救えたかもしれない。
===<引用要約は以上>===


===<以下引用、エリノア・オストロム - Wikipedia>===
オストロムは公共財および共有資源(CPR、Common-pool resource)を研究した。公共財やCPRの管理について、それまでの政府か市場が対処するという主張に異議を唱え、資源を管理する効率性は市場でも政府でもなく、コミュニティが補完的役割を果たしたときに最も効果的になることを示した。
オストロムは公共財およびCPRの自主管理(セルフガバナンス)において、長期間持続する制度には、次のような設計原理があると論じた。

  1. 境界:CPRから資源を引き出す個人もしくはその家計とCPRの境界が明確である。

  2. 地域的条件との調和:専有ルールが供給ルールと調和している。

  3. 集合的選択の取り決め:運用ルールの影響を受ける個人の大多数は、運用ルールの修正に参加できる。

  4. 監視:CPR条件と専有者を検査する監視者は、専有者に対して責任がある。

  5. 段階的制裁:運用ルールを侵害する専有者は制裁を受ける。

  6. 紛争解決:専有者間もしくは専有者と当局者の紛争を解決するために、安価な費用の地方領域に接する。

  7. 組織化する権利の承認:制度を構築する専有者の権利は、外部の政府当局によって異議を申し立てられない。

  8. 組み込まれた事業:より大きな体系の一部であるCPRsに関しては、専有、供給、監視、強制、紛争解決ルールは多層の事業で組織化される。

===<引用おわり>===

アジア・アフリカなどの発展途上国では、地域外・国外からの資源争奪型の石油採取や森林伐採が課題である。その解決に政府の介入でなく、共同体でというのは、間を埋める作業が必要に思う。住民を無視し、すでに新自由主義に傾いている政府は、あてにならないとの主張もあろうが、
日本の河川管理を例にとると、地先の権利の主張が、上下流・左右岸の紛争を生むので、水系一貫の思想が生まれ、国管理になってきている。一方では、それが進みすぎると、地元共同体での自主管理の思想が希薄になる。大規模災害時には、政府の出動が必要であるが、日常的には、自主防災・管理が重要である。過疎化や人口減の地方ではそれが困難になってきおり、東京などの都市近郊でも、勤労者の目は職場に向いていて、自治会の地域協力は希薄になってきているのを耳にする。

参考:
茨城県桜川村長 飯田稔 「結(ゆい)」
結(ゆい) - 全国町村会( https://www.zck.or.jp/site/essay/5365.html )
現代に残る茅場の伝統的管理システムと茅葺民家集落についての研究https://www.jstage.jst.go.jp/article/jusokenronbun/41/0/41_1214/_pdf/-char/ja


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