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⑥推しが世界に1人しかいないように、2号も世界に1人しかいない存在しない「替えのきかない人間」になってしまった


2号と推しはまったく違う人間だし、推しみたいに格好よくて才能にあふれていて愛情深い最高の男は世界に1人しかいない。ファンに怒られても仕方ない。客観的に見たら全然似ていない。

別れてから3カ月目に推しのVlogがYoutubeにアップされていた。それを見て「あぁ似ているな」と思った。今までは「2号が推しに似ているな」だったのに、「推しが2号に似ているな」に反転していた。


人と目を合わせるのが苦手なところ。カメラの前で知識を披露するところ。職人気質なところ。

今までは愛おしかった推しの仕草、性格が今では苦い別れをした人間に重なりしんどくなる。

途中から苦しくなってVlogを見るのを止めてしまった。

自分の熱量と同じように、2号はわたしのことを好きではなかった。

別れの3カ月目の朝に「あぁそういうことだったんだ」と腹の底から理解する感覚があった。

2号にとってわたしは取り換えのきく存在だったし、特別な存在ではなかった。だって2号は誰かをわたしに重ねていない。


だから退会すると言っていたマッチングアプリは退会していなかったし、別れてすぐにマッチングアプリを再開できるし、LINEも即ブロックして、付き合っていたこと自体をなかったことみたいにできるのだろう。


グループが解散の危機に陥った時に、推しが書いたという曲の一部がとても刺さった。

「ただとても怖かった/俺がお前を愛したことが/最初からなかったことみたいで」

わたしがこうやって2日かけて自分語りの文章を書いたり、人に愚痴って嫌がられたり、謎の占い師にぼったくられたりしている時に、2号はわたしと関わった痕跡をさっさと消去して元の生活に戻っていけている。今までわたしが未練なく恋人と別れてきたように。

■未練


これほど2号のことを短期間で深くわかってあげられる女はわたしくらいしかいないよ、わたしに戻ってきなよ、と思う。

でも上手くいくカップルはたいてい男性の方が女性を溺愛しているし、女性側の愛が激重で上手くいっている例は見たことがない。女性側の愛が重くなればたいがい破滅している。

だからこれは、わたしの気持ちが終わっていくのを待つ作業である。

たった1カ月でよかった。
たった1カ月の関わりなのに、今でもしつこく思い出してしまう。

もっと長く関わっていたら昔わたしがコンプレックスを持っていた「恋人と別れて傷ついて4ぬ人間」そのものになっていたかもしれない。

■恋愛感情をインストールされて苦しい


韓国アイドルが好きだから韓国人と付き合いたい!という考えは全くなかった。

なんとなくノリで関わった人間が推しに似ていて引きずる羽目になった、というシンプルな話なのだが着地点がこんなしんどい場所になるとは思わなかった。

Vlogを見て苦しくなり視聴を止めてしまったように、推しのことを純粋に好きなだけで見れなくなった。

恋愛感情をインストールしたものの誰かと恋愛する気も起らず無気力な日々が続いている。
口を開いたら「1カ月しか関わっていない人間のことを引きずっているんだよね」と話しだしてしまう。

でも、こうやって改めて文章にしてよかった。
なぜ1カ月しか関わっていない人間のことを永遠に脳内上映してしまうのか、その理由が言語化できたからだ。


「推しに似ている」「2号」とさんざん書いてきたけれど、わたしにとっては全然2号じゃなかった。2号と書くたびに違和感があった。

推しを飛び越えて、替えのきかない存在として、とても好きだった。特別な存在だった。決して推しのかわりではなかった。なぜなら「2号は消えたけど推しがいるから大丈夫♡」とは全く思えないからだ。


推しが世界に1人しかいないように、2号も世界に1人しかいない存在しない「替えのきかない人間」になってしまった。

どちらも1位で、それぞれが別枠の特別枠だった。

それが誰かを好きになることなのだ、とようやくわかった。


■私たち解散しちゃったので……

LINEは苦痛だし、会話を弾ませるのに気を遣うし、別れた後2年もひどいダメージを負うし、わたしは2号の好きな旅行なんかちっとも好きじゃなかったけれど、2号との思い出を脳内再生するたびに「好きだったな」と思う。これからも良かった部分だけが脳内再生されるだろう。

過去のコンテンツを擦り切れるほど再生するだけで、新しいコンテンツが加わらないのがオタクとしてはとても残念だ。

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