PickUp…ことばを拾う4。
「でも、そのソカンとかいう名前が重要なことなの?」
銀河には宮廷流の格式ばった話法はどうしても身につかなかった。気を抜くとすぐにいつもの調子になる。
「当たり前ではないか。名前がなければ国の名分というものが立たぬ」
真野は渋い顔で言った。
「わたしは生まれて初めて聞いたけど、これまで困ったことなんかないわ」
「お前のような卑賤の身には、国家の名分など必要ない。お前が困るの困らないのと言った問題ではないのだ。天子とこの国土にとって必要なものだからな」
「なんだ、それなら、なおのことわたしには重要じゃないじゃない。やっぱり、知っても知らなくても一緒だわ」
そう言って、大きなあくびをした。真野の面はさらに渋くなった。
「後宮小説」酒見賢一著より。
架空の中国の王朝の後宮の宮女
になる銀河の初々しさは、時代
が経てもいまだに、みずみずし
い……………………。
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