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黄泉がえりの季節


都会で核家族の子供として育った私は、お盆の行事の原体験が無い。
そもそも守っているお墓もなく、先祖との接点は仏壇代わりの棚に
あった祖父と祖母の遺影のみだった。8月のお盆もどこか別の世界
の出来事のように感じていた。
そんな少年にとって黄泉の世界から死者を取り戻すお話に原体験的
なイメージをくれたのは映画「黒いオルフェ」だった。後になって
とてもヴィヴィッドなカラー映画であったことを知ったが、当時、
白黒テレビの名画座で見たので、モノクロのイメージである。
モノクロのリオのカーニバルの喧騒と土着の匂いは、遠い少年時代
の夏の日と重なって記憶されている。
「決して振り返っていけない」、亡き妻を黄泉の国から連れ戻す
オルフェに課される試練は少年の胸にも重くのしかかった。
「何故、だめなんだろう」この問いは大人になっても胸の中で
くすぶっていたが、この歳になり多くの故人を黄泉の国へ送ること
になると腑に落ちるものだ。

カバー写真は、モノクロ化した写真画像を背景にオルフェと
ユリディスを描き加えた写真画(そんなジャンルある?)です。

この投稿にあわせて、「黒いオルフェ」をギターにあわせて
ハミングしてみましたので、こちらもよろしくお願いいたします。


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