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「美味しんぼ」を介した父との思い出 ♯私のコレクション

口数の少ない父と娘。
洗濯機で一緒に下着を洗われても問題ないが、会話は2分と持たない、ごく普通の親子。そんな親子のコレクションが、今も実家に保管されている「美味しんぼ全巻

父娘共通の趣味が読書
高尚なものではなく、西村京太郎、上田秀人、司馬遼太郎、杉浦日向子、そして美味しんぼ

小さい頃から、新刊が追加される本棚の横で、何度も読んだ美味しんぼ。
ロクに料理もしないのに、生涯使う機会が無いだろう「鮟鱇は吊るして、水で膨らませてから捌く」は知っている。
料理上手な旦那を得たら、この知識も日の目を見るかもしれないが、そんな予定は無い。


高校に合格し、晴れて「下校時に古本屋で古本を買いまくる生物部の女子高生」となった私。

購入した大量の古本を、文化祭の古本市で売り捌き、売上金に万札が数枚入るほど荒稼ぎしていたが、美味しんぼは売らず、欠けた巻をお互い探して補充し合った。


大学に合格し、都会で一人暮らし。
ちょっと地下鉄に乗れば、大きな書店が山ほど行ける。バイト代が入れど生活費がカツカツで、なかなか本を衝動買いできなかったが、充実した生活。

地元は過疎化が進み、雑誌以外の本を買うために電車に乗らねばならない。
私は、美味しんぼの新刊や欠巻を見つけて、父の好きなコーヒー豆と共に実家に送った。
地元の自家焙煎のコーヒー豆屋さんが高齢で閉店されたからだ。

サイフォンも持っていたコーヒー好きの父。
コーヒー好きの父の姿を守りたい私のエゴでコーヒー豆を送っていた気がする。
スーパーでコーヒー豆を買うが、実家のコーヒーは今も美味しい。

順調に揃う美味しんぼ。
タイミングが悪いと、父も購入しており、同じ巻が実家の本棚に2冊並ぶ時もあった。


就職し、さらに実家から離れて暮らす私。
帰省するのは、盆正月とGW。
それなりにもらえる給料を手に、帰省するたびに「何か美味しいものを、どこか温泉にでも」と財布の口を開けるが、父が許さない。
私が支払っても、帰省最終日にお金を手に押し込められてしまう。
娘は何歳になっても娘であり、自分が娘に美味しいものを食べさせ、娘の笑顔を見るのが父の楽しみらしい。

すでに揃っている美味しんぼ111巻

私は父からの小遣いを受け取る代わりに「色々詰めた」と言いながら、もう美味しんぼが入っていない段ボールを実家に送る。


追伸
両親が「終活だ」と言いながら、余分な物は置きたくないようで、最近はもっぱら通販から美味しいものを贈ります。
それでも美味しんぼは実家の本棚に並んでおり、「必要な物」と認識されているのが地味に嬉しいです。

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