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鉢植えの土のリサイクル♺

はじめに

1年以上ベランダ園芸をしていると必ず突き当たる問題が、残土の再利用です。庭さえあれば残土は庭に戻して、新しい庭土に堆肥でも混ぜて鉢に取れば済むだけの話なのですが…
今どきはホームセンターで毎回、園芸用と銘打たれた培養土を購入しては、古い土を捨てている人も多いことと思いますが、そもそも不経済ですし、残土がゴミとして大量発生するわけで、運ぶのも大変ですよね。
一度植物を育てた残土をフルイにかけて再利用して、腐葉土や赤玉土を少し足すことで、自分でブレンドして回してゆくことが望ましい姿ですが、ハードルが高い、どうやったらいいのか分からないというガーデナーが多いと思います。この記事はそのためのガイドです。
それではいつものように系統的に説明してゆきます。


0. 基本的な心構えについて

何でこんな大袈裟なことを申し上げるかというと、園芸書
もとより、ウェブ上に書かれていることも含めて、従来の盆栽主体の園芸に縛られすぎているからです
余談になりますが先日の当方居住のマンションの大規模修繕で、住民のすべての手持ちの鉢植えが一同に会して分かったのですが、百戸以上あるそれなりの規模の分譲マンション全体で、盆栽をやっている方はわずか1戸、バラをやっている方が我が家を含めて2戸でした。このことから分かるように、もはや盆栽までやっている方は園芸をやっている方の中で圧倒的に少数派です。おそらく団塊の世代の方なのだと思います。ところが「サザエさん」のアニメを思い出していただければお分かりのように、以前の日本では定年退職した相当数のご老人が老後の楽しみとして盆栽を始めていました。したがった今でも、さまざまな園芸知識がセミプロの盆栽愛好家向けに書かれたままになっていますが、それらはもはや時代に合わなくなっているのですこれをいちいち真に受けていると、大変なことになります
代表的な盆栽園芸知識の弊害を挙げれば、
① 鹿沼土の偏重
② 微塵(ミジン)は捨てるという観念
などがあります。①の鹿沼土は火山灰で酸性ですので、中性〜アルカリ性を好む(つまり植え付け時に石灰をまぜなければならない)多くの外来の植物(その中にはネギを始め、日本に定着しているものも数多く当てはまります)には合わないどころか有害です。ところがホームセンター等では、依然として大量の鹿沼土が売られています。代表的な盆栽の品目であるツツジが在来種で、酸性土を好むことから、このようなことになったのです。たしかに鹿沼土は安いのですが、売る方も買う方も、これまでの惰性でやっているからいつまでもこのようなことになっているのです
②のミジンの扱いについては後述しますが、同様です。不自然な人工栽培で、容積のごくごく限られた盆栽用の鉢の中の土の扱いの知識で、他のすべてが語られてしまっていることは大きな問題であるといえます。細目で振るった残土をすべて捨てていては、廃棄物が多くなりすぎます

1. 用意するもの

①篩(フルイ)と②敷物、③フルった後の土を入れるポリ袋
が必要です。袋は再利用で何でも結構です。こぼれた土の片付けを容易にするための敷物も、何でも結構です。本格的にやる方はブルーシートでしょうけれども、私は最初は新聞紙を広げて使っていましたが、少し小さいので現在は模造紙を何度も繰り返し使用するようにしています。
というわけで肝心なのはフルイだけですが、

ネットショップでもホームセンターでも、通常はこの3点セットが売られています。これを試行錯誤しながら使ってゆくわけです。
これより大きな37cm径というのも、同じ網目のセットであって、もちろんその方が作業の効率は高いのですが、女性には大きすぎますし、これに合う受けの袋が限られてしまうので、私はお勧めしません。

2. 実際の作業

さて道具が揃いました。愛用の園芸作業用のイスに座って始めます。
前シーズンの途中で枯れた植物の鉢を敷物に載せます。土は乾いてカチカチに締まっています。これをスコップに3-4杯取って(最初は枯れた植物ごと取る形になります)、ポリ袋の上で一心に振るうわけですが、土埃が舞い立ちますのでマスクが欠かせません。それから周りにも土埃が舞いますので、ポリ袋の開いた口の端でフルイを覆うような形で(私の場合、右手でフルいながら左手でポリ袋の端で顔の前を覆っています)作業すると不快感も少ないかと思います
理想は3つあるフィルターの目の大中小(荒目→中目→細目)の順に、古い根を主体とするゴミを取り除きながら土を分類してゆくことが望ましいのですが、正直もの凄い手間がかかります。盆栽用に少量の鹿沼土をたまに振るうというような方は別にして、お勧めしません。全体で2回振るうだけの手間に抑えるべきです。
それでは実際にどうやるかですが、最初から中目で振るってゆきます。荒目で除外できる石などは少量ですから、荒目で始めるのは手間の無駄ですからお勧めしません。

フルイにかけたキレイな土

3. 廃棄するミジンを減らすために

「2.」の作業の後で、さらに仕上げで細目で振るってもいいですが、その場合には最後に残った残土をどうするのかという話になります。捨てるにしては多すぎます。かといってそのままでは微塵(ミジン)が混じっているので、鉢土の一番上に敷いて水やりするとミジンで目詰まりして水が滞留してしまいます。なかなか引かないので不快でもあり、引くのを待っている時間も無駄です。これに目をつぶれる場合には、これ以上の作業は必要ありません。
廃棄する残土を減らしつつ、灌水(かんすい)時のミジンの目詰まりを避けるためには、以下のフィルターの追加が必要になります

下の画像は、3個セットの細目(3mm)の網目です。

3mmの「細目」

これで振るったものが、次の画像です(一部に、網の周りからこぼれた大きめの赤玉土が混じってしまっています)。

3mm目で振るった土

次は上でご紹介した、さらに細かい極小目(1mm)になります。

1mmの「極小目」

これで再度振るったものが、次の画像です。

1mm目で振るった、最終的なミジン

こちらを廃棄します。体積比でいうと、以下のような感じで、

3mm目の残土(上)と1mm目の残土(下)の対比

3:1ぐらいに分離したことになります。
ミジンを振るう方法として、3個セットの中目と細目を重ねて振るうというワザもウェブでは紹介されていますが、実際にやってみると重ねてもかなり荒いので、廃棄する残土が増えてしまいます。極小目の使用をお勧めします。

4. 次の植え付けでの再利用

残った中・大粒の赤玉土は、次の植え替えの時に鉢底に敷きます。専用の鉢底石も市販されていますが、リサイクルした中・大粒の赤玉で済むので、私は使っていません。鉢底石を使ったとすれば、最初に振るって残った土から、わさわざ鉢底石だけを除外するひと手間が増えてしまいます。
鉢底に敷いた中・大粒の赤玉土の上に、振るった土を5、中・大粒の赤玉土(足りなくなれば市販の赤玉土を足す)2、腐葉土3ぐらいの比でブレンドして植え付けの培土とし、表土に有機物を入れるとコバエやコガネムシの親を誘引するだけですから、ウォータースペースの下は振るった土を入れて均します
この比率には様々な考え方がありますので、ご自身で加減してください。一般には「赤玉土7 : 腐葉土3」といわれますが、振るった土ばかりが余って溜まっていっても困るので、私は上記のようにしています。振るった土には小玉の赤玉土も含まれていますので。
草花の場合には根が細いので、新規に赤玉土を足す必要はありません
このメインとなる培土に、以下のくん炭を1つかみ、ニームを規定量入れることで、さらに土質が改良され、コガネムシの親を忌避できます

ニームは伝統的に、オイルを絞った粕(カス)を粉末にした「ニームケーキ」が、土への配合用に用いられてきましたが、ニームケーキは酸素や紫外線により劣化しやすいので、私は管理しやすいペレットにしています(ペレットも劣化しますので密封して日陰に置いてください)。

さらにバラなどの高価な花木に使用される時は、コストはかさみますが下記のカニガラを入れると土中の菌類のバランスが改善され、病気にかかりにくくなります

まとめ

大変そうと思われた方もいるかもしれませんが、一度やって慣れるとそれほどでもありません。廃棄物が少ないのは、気分のよいものです。
くわえて再利用した土を元にさまざまな配合を試みることで、市販の園芸土よりもはるかに品質の良い土をお安く作ることができることは、皆さまのガーデニングに深みを増してくれるでしょう


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