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優しい世界の水泳コンクール

 明日は水泳コンクールがあるから、私たちはプールの底に沈んでいる。  全身を覆う、ひんやりとした冷たい感触。  緩やかにはためくセーラ服のスカート。  ゆらゆらと揺れている屈折した光。  時折息を吐くと、空気の泡がふわふわと水の中を昇っていって、とても幻想的だ。  水は優しいから、人が溺れないように空気をくれる。  でも、人を浮かべてくれるほど優しくはないから、クラス投票で選ばれた私たちがプールに入って、水の中に私たちの優しさを染み込ませている。  私たち——五人。  25メ

    • O・D

      「一番指名の多い女はね、イク演技が上手い女なの。だからあんたもすぐ指名入ると思うよ」  同棲している彼女の言葉が不意に思い浮かんだのは、丁度私が逝っていたからだろう。  いや、いた。というのはおかしいか。  私の意識はまだある。ということはつまり、逝っている最中だということだ。現在進行系で。  「くそ、くそ、くそ」  「よくも、このヤロウ」  「ざけやがって」  汚い言葉と共に降ってくる足の裏。鉄製の厚い靴底。  それが私の顔を踏みつけている。  ひしゃげた鼻。  

    優しい世界の水泳コンクール