私は画面の向こうに恋をする。

私は画面の向こうの誰かに恋をしている。
ファンタジーの世界観のMMORPGで右も左も分からない時に声をかけてくれた人である。
私は画面の向こうのこの人が男性なのか女性なのか分からないが、そんな些細なことは関係ないと思っている。
今日私はこの人と画面の向こうで結婚する。
ゲームのシステムであっても嬉しいものだ。この世界で出会い仲良くなったフレンドの方々に祝福されながら粛々と式が進む。
画面の向こうのあの人とあらかじめ打合せしていた文章をチャットに書き込んでいくが、それよりも私たちを祝福するチャットが埋め尽くしていく。
素直にうれしい。誰もかれもが私たちの結婚を祝ってくれている。
あの人も嬉しいのか「ありがとう」とチャットに打ち込んでいる。私も「ありがとうございます!!」と感謝の気持ちを込めてチャットに打ち込んだ。
私は女性のアバターを使っているのでウェディングドレスを、あの人も女性アバターなのでウェディングドレス姿だ。とても綺麗。
ある程度式が進行してみんなでスクリーンショットをとる段階になった。
みんなクラッカーアイテムや花びらが舞うアイテムを使ってその中央に私たちを囲んでいた。
パシャリと撮って本当に私は結婚したんだと浸る。あぁ、うれしい。この時間が続けばいいのに…。
そう考えながら、私は、
やっぱりこの人に実際に逢いたい。逢ってみたい。現実の世界で…。
だけど、あともう少しだけ勇気が欲しいと思ってしまうのも本当。
結婚式も終わり、今日はたくさんのフレンドの人たちに祝福され、本当に幸せだった。
あの人ともゲーム内の個人チャットで楽しかった、嬉しかった、と言い合っていた。
少しだけ間が開いて、あの人が「あのさ」と書いてくる。
私は「なに??」と打とうとした時に「今度はリアルで会ってみない?」と書いてきた。
私はおどろいた。が、震える手で「うん、あってみたい」と打ち込んでいく。
私は今日ゲームで結婚した画面の向こうの人に恋をしている。
もちろん、こんなチャンスを逃すつもりは、毛頭無い。
男性だろうが女性だろうが関係ない。必ず、私はこの現実でもこの人を射止めて見せる。
そう決意を決め、私はあの人との話を再開するのであった。