見出し画像

詩 無常の哀しみを抱いて…

未明に ふとめざめた わたしに
ちいさく コトりと
戸をたたく音がきこえた

誰もきづかない ときに…
わたしは そっと 戸をあけ

その人にあい よろこぶのだ
よく来たと 泣いているように
抱きしめて しずかに そっと…

その人は なにもいわず
たちつくし ちからなく 
わたしを抱きしめる

よくぞ ここまで尋ねてくれた
身にひき寄せ 泣きじゃくり
ひとしきり 泣きじゃくり

やがて ただ 安堵するのだった
未明の哀しみに 訪れたその人を

だきしめ ああ いきているのだと
安堵するのだった…

しらじらと あける 夜に
その人をかえし 
無常の哀しみに惑いながら
その人は しろく しろく 過ぎ去る

─ 林 花埜 ─

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?