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詩 『抱えきれない物』

週末の終わりの二日前
ぼろぼろに破れたリュックを降ろす

それは心のリュックだ
あれやこれや詰め込んで
たいそうな重さになってしまった

重たいから引き摺って歩く
ズルズルぼろぼろズタズタ
傷だらけで草臥れてしまった心

ほら ほら 明日から休日
やれ やれ 一日が終わる

何にもしないでいいんだよ
時間はたっぷりあるんだよ

そうだ呑もう
冷蔵庫に赤いワインが冷えている
私の熱い血のような色
フルーティーな葡萄の香り

ごくりと喉を通るとき
甘いアルコールが沁みてくる

身体中の緊張が弛緩して
ふわふわゆらゆら
クラゲのようだ

クラゲは酔っぱらって
海を漂うのか?
生きるのが辛いのか?
そんなことはない
透き通るからだで
全てをさらけ出している

ああ、酔いがまわり
裸の心がゆれる
わたしは生きている
誰もわたしの自由を奪えない

抱えきれないリュックは
一先ず置き去りにしよう
月曜の朝まで

─ 林 花埜 ─

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