詩 朗々の花
年老いたわたくしが見た花
朗々の花
翳りゆく花
死に向かって咲く花
かつて若かったわたくしの花
老老の花を一本くださいな
いとしいあの人へ
持たせてあげたいのです
あの人には
もう 歯がありません
あの人には
もう 何も見えないのです
この悲惨なニュースも
もう 何も聞こえません
一日さえも儚げで
明日のことも分かりません
老老の花をわたくしに一本下さいな
一本だけでよいのです
それだけでわたくしは幸せです
あの人の喜ぶ顔が見たいのです
そうして 涙をながし
一緒に泣いてみたいのです
─ 林 花埜 ─
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