4 メール

俺は試合後、この【キンタマルール】導入のきっかけとなった先輩キャッチャー湯川さんに簡単なお礼のメールをした。

湯川さんは、もう引退されているが、野球好きで知らない人はいない名捕手である。日本シリーズの第1戦ももちろん観ていたはずである。キンタマルールの立役者にお礼を言わないわけにはいかない。

湯川さんのキンタマに5試合連続でボールが当たった時、やっと世論が後押しした。

【キンタマ痛いのに、一点も入らない汚れた野球界!!】
【湯川捕手、本誌に独白!“キンタマに当たらなければあと五年は現役できた!”】
【デッドボールは塁に出れるのに、その何倍も痛い“キンタマ衝突”に策なし!呆れた野球界!】

ワイドショーでは、連日そのニュースで持ちきり。

よくあることだが、テレビでこういう話題で盛り上がっている時に重要法案が裏ではドサクサで通されていたりする。

湯川さんの“キンタマ騒動”の時もそうだった。

政府与党は、“国民の了承を得ず、総理の判断のみで、総理があまりにも汚いと判断した家を、持ち主の同意なく公衆トイレにしてしまう法案”を強行採決したのだ。

以来、町にはトイレが増えた。

俺のメールは次のようなものだった。

【湯川さん、今日は湯川さんの5試合連続キンタマーのおかげで勝てました。明日以降も頑張ります】

湯川さんのメールは短くてイキなものだった。

【いや、5試合連続ホーマーみたいに言わんでええねん(笑)】

明日も頑張ろう!そう思える温かい返信だった。


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