6 ヒーローインタビュー


「放送席、放送席!今日のヒーローインタビューは、もちろんこの人です!!木村投手を見事にリードし、そして最後は自らのキンタマで一点をとりました!!!中西選手に来ていただいてます!!」

俺は、帽子をとり、ファンの大声援に答えた。

ワアアッとキンタマドームが揺れる。

「中西選手、第二戦目、見事なサヨナラキンタマでした!!手応えのほうは?」

「そうですね。やはり、木村投手の球が今日もキレてたんで、リードに困ることは全くありませんでした!!」

ワアアッと歓声が飛ぶ。

「ええぞ!ええぞ!中西!よくやった!ワシは家が汚いからって、公衆トイレにされたんや!今のワシにはキンタマジャイアンツしか生きがいがないんやーっ!!」

俺はこの声援のほうに、帽子を向けた。

大歓声の中、なぜか聞こえたのである。

「中西選手、明日も、キンタマドームです!!!やはり、ホームでの優勝を観たいというファンもいると思いますが、この勢いだと、どうですか?もう、4連勝もあり得るんではないですか?」

日本シリーズは、第3戦目まではキンタマジャイアンツの本拠地【キンタマドーム】で行われ、そのあとは移動日をはさみ、第4戦、第5戦、第6戦とキンタマファイターズの本拠地【キャンタマドーム】で行われ、そして、第7戦は再び【キンタマドーム】に帰ってくるのだ。

俺は、インタビュアーの問いかけに、自分の気持ちを引き締める意味でも、こう答えた。

「いや、キンタマファイターズも今日はたまたまバットを一回も振らなかっただけで、明日は多分振ると思いますので、引き続きみなさんの応援が必要です!よろしくお願いしまーす!!!」

キンタマドームが大声援で揺れる。

「中西ーっ!!明日もリード頼むぞーっ!」

「ワシの家は公衆トイレにされたんじゃ!もう野球しかないんじゃ!勝ってくれ!頼むぞーっ!」

「中西選手ーっ!かっこいいーっ!」

日本シリーズは、いくら本拠地と言えども、自分のチームのファンばかりではない。罵声も飛ぶ。

「こんな両チームのユニフォームがまったく汚れてない日本シリーズは初めてだぞーっ!」

「キンタマ野郎ーっ!キンタマ以外の点の取り方を知らねえのか!この馬鹿野郎!」

俺は、勝利のドーパミンで、なんとか2日連続キンタマーの痛みを忘れることができていた。

明日も勝つ!!


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