綺麗で甘酸っぱくて、透明な恋が眩しい

今日たまたま帰りが一緒になった友人にはとても仲のいい恋人がいる。付き合ってからまあまあ長いらしい。
わたしはその友人と出会うまで、恋人の事をあそこまで手放しで褒め続ける人と出会ったことがなかった。
多分わたしと違って、頭のてっぺんから足の先までいいやつなんだと思う。そしてその友人を選んだ恋人の方も果てしなくセンスがいいし、何より人を見る目がある。
どうしよう、最高のカップル過ぎて直視できない。

駅まで歩きながらこの前のデートではどこに行ってあれをして、と嬉しそうに話す姿を見るだけで、何だかこちらまで幸せのおすそ分けを頂いた気分になる。いつも心から楽しそうに大好きな人のことを話すから、恋がただ純粋に透き通って美しい結晶だと錯覚してしまう。

実際の恋というものは決して綺麗なだけで終わらない。ぶつかり合って、嫌になって、騙して、泣いて、許しを乞うて、追い縋って、そういうぬるっとした一面が確かに存在する。
恋愛関係は、人間が育む関係の中でもとりわけ維持しづらいもののひとつだと思う。大抵の場合恋愛は友愛よりもっと濃密な感情を孕み、尚且つ通常は容易に踏み込めない心の奥を探り合う。
恋人だって友人と同じ、所詮他人に過ぎないのに。

きっとわたしの友人も恋人と喧嘩したり、ちょっと気まずくなったり、そういう小さな問題を沢山乗り越えてきたんだろう。もしかしたらふたりの関係が揺らぐ瞬間だってあったかもしれない。
でもそんなことおくびにも出さず、今日も友人は頬を緩ませて恋人の話をする。

わたしが今分けてもらっているのは、恋愛のうちいちばん上澄みのキラキラした場所。多分舐めたらカルピスの味がする。
あなたの話を聞いている間だけ、わたしはひたすらにまっしろな、恋に恋する女の子に変身する。

2022/08/20

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